Aerodynamik - 航空力学

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韓国進出を意識し、日産には嫌われる、Perfume「ねぇ」@Rockin'on JAPAN 2010年12月号

http://www.ro69.jp/publish/japan/index.html


今回は推測多目の記事なので、それなりのリテラシーでよろしく。


ドーム公演直前インタビュー。短いが、幾つかの新事実が語られている。

あ:「VOICE」の時に、”VOICE”、”575”、”ねぇ”があって、どれをA面にするか迷ってて。 で、”VOICE”になったんですけど。直球だし、めちゃのれるし、これはカラオケで女子が歌ったらかわいいと思うっていう曲がまた増えたね。


か:その3曲が上がった時は、”ねぇ”が一番好きでした。


の:私も!


か:何でこの曲をA面にしないの!?って凄い思ってたんですけど。でも”VOICE”も完成すると凄いいい曲だし、聴けば聴くほど深みが出る曲だったんで。って考えると、”ねぇ”はリリースが後になっても大丈夫な曲だったんだなと思いました。

まず、「VOICE」制作時には既に「ねぇ」があったということ。「VOICE」プロモーション時に、散々「音モノを希望したら歌モノが来た」「あいつへし曲がってんな」とまで語ってきたPerfumeだが、単にリリースのタイミングの問題で情報公開できない以上、あのように面白おかしく膨らませていた、ということだ。実はファンは虚実に翻弄されていただけだったのだ。


ここでは何故「VOICE」が採用され、「ねぇ」が先送りになった直接の理由は語られていない。しかし、「ねぇ」の歌詞を聴いてみると、実にストレートに「車を運転して海に向かう風景」が描かれている。

ねぇ 今日はどこへ行こうかな


信号が青に変われば 後はこの先に待ってるのは広い海
海岸を沿うように駆ける いつもの音楽を BGMにして

「車」「海岸をドライブ」。そして日産のCMのオンエア開始日は真夏、2010/08/14だ。ここまで材料があれば、「ねぇ」は日産のCMを想定して作られ、そして広告代理店または日産側の意向と合わずに却下され、ハード過ぎずライトでポップな「VOICE」がCMに採用された、という想像はさして難しくない。


※追記
20120322 TFM「Perfume LOCKS!」にて、「『ねぇ』の制作中仮タイトルは『ミラクルドライブ』だった」との発言が。上記の「想像」を事実として確定たらしめるに十分な情報ではないだろうか。


さらに、それが前提にあることを考えれば、前回「ナチュラルに恋して」という、より明るくポップな曲をCMタイアップに起用し、爽やかなイメージをPerfumeに求めたNatural Beauty Basicにしてみても、流れとしては「ねぇ」のようなハードなサウンドを持つ曲よりも、明るくポップな「VOICE」の方を採用するはずだった、と考えるのが自然だろう。しかし日産の契約規模との比較で「ねぇ」を掴まされた、それが結果的には児玉氏の仕事との相乗効果でいい結果を生むのだが、という所まで来るとこれは単なる妄想だが。




そしてもう一つ、樫野さんと大本さんは、三曲の中で「ねぇ」を一番好きな曲に挙げた。これは間違いなく彼女達二人のダンスサウンド志向によるものだ。
一方、「歌」について拘りを持つ西脇さんは、最近の自身の趣向を絡めて、「歌」についてなかなか興味深い発言をしている。

−サビが<ねぇ>の繰り返しで、極端に言うと、子供から外国の人まで口ずさめるキャッチーさだと思うんです。


あ:その「言葉を繰り返す」っていうのは、今、少女時代がきてて、どの国の人でも聴けば大体耳に入ってくるみたいな言葉を入れてるのは、確かに凄いなって思いますよね西野カナさんの曲とかも、めっちゃメロディがあって、なんか回るみたいな。それと同じ感じで回りそうな、メロディが劇的にいいサビの曲だと思います。

「言葉を繰り返す」曲の代表として、西脇さんは「少女時代」を挙げている。恐らく韓国における「フックソング」ブームの事を念頭に置いているのだろう。
現在のK-POPダンスポップシーンでのブームの一つに「フックソング」という概念がある。その名の通り、単純な言葉とフレーズを何度も繰り返すものだ。最近では少女時代「Gee」「Oh!」、Brown Eyed Girls「オッチョダ」、Wonder Girls「Nobody」、Super Junior「Sorry Sorry」、2PM「Again & Again」、T-ara「Bo Peep Bo Peep」、Sistar「Push Push」、ソン・ダムビ「ミチョッソ」・・・。挙げていったらきりが無い。Perfumeの代表的なフックソングといえば「チョコレイト・ディスコ」だが、現在のブームはよりセンテンスが短い。そこでの「ねぇ」だ。もちろん推測に過ぎないが、中田ヤスタカは韓国のダンスポップブームも頭のどこかにおいているのかもしれない。そして、このタイミングでのPerfume海外進出発表、第一弾は韓国「MAMA」出演だ。*1 一本、道筋が繋がったようには見えないか。







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Perfume楽曲制作における、中田ヤスタカ中央集権体制への回帰@音楽と人 2010年12月号

http://ongakutohito.jp/ongakutohito/


「Fake It」についての語り。「Fake It」は「Edge」のような曲、としきりにインタビュアー、インタビュイー共に話しているが、単調な四つ打ちと抑揚の少ないメロディーを基調とする「Edge」と、捻くれたフレンチエレクトロをベースに癖のあるポップなメロディーを乗せた「Fake It」はまるでベクトルが異なる。「Perfumeの中ではバキバキ」という意味においては似ているのかもしれない。音楽的な面白さで言ったら断然「Fake It」だ。

−あのタイミングで「Edge」を出したからこそ面白かったというか。


あ:そう。で、その後ああいうアプローチをしてる人も沢山いたけど、それ以降、そういうのを(Perfumeは)出してないのが、また先に進んでる感じがするし。バキバキがやりたいって言うよりは、中田さんが考えてくれた『Perfumeが今これをやったら面白いんじゃない?』って楽曲を、そのイメージ通り、完璧にパフォーマンスするのが私達のやるべきことだし、そこに一番力を入れるべきだと思う。だから(「Fake It」は)ライブで強く個性を出すような曲になるけど、これがPerfumeだ!って曲ではないんじゃないかな。

「VOICE」録音前に、Perfumeの三人やスタッフ達は、自分達の要望を中田ヤスタカに伝えるミーティングを初めて開き、彼にあれこれと作って欲しい曲の希望を出していたし、それはとても画期的なことだと言って喜んでいたはずだったが、*1 結局は、中田ヤスタカの完璧な出力機関に徹する事こそに一番力を入れるべきだという方向性に回帰したようだ。夏フェスで映える曲を、というPerfumeの気持ちはよく分かるが、徳間ジャパンスタッフ側に、今のサウンド、これからのサウンドを見る目のあるスタッフがいないのであれば、この回帰は正解なのだろう。少なくとも、今のヤスタカのその辺りの差し引きのセンスは信用できるし、徳間ジャパンのお偉方の意向によってそれが左右されるようなものであってはならないとも思う。



の:やっぱり中田さんがどうか、をより考えますね。自分、っていうのを考えることも前より多くなってきたけど、やっぱりそこが重要で。今回、カップリングを取るためにレコーディングした時、一回、他の曲でレコーディングしたんですよ。でも中田さんが『やっぱもうちょっと明るい曲にしよう』って「Fake It」が出てきた。だから凄く明確なイメージがあったと思うんです。

ここでは「他の曲」が明かされてはいないが、少なくとも「歌入れまでしてある没曲が発生した」ということは分かる。これまで、様々な都合でCDという形でのリリースに至らなかった曲*2はあっても、そもそも没になる曲というものがあったという発言は無かったと思う。録音作業はヤスタカ自前のスタジオのため、没曲のためにスタジオレンタル費用がかさむことは無いが、少なくともヤスタカの稼動とPerfume三人の貴重な稼動時間を浪費することになる。管理する側から見れば、没曲は作らないのがベストだ。しかし、ここで恐らく「初めて」没曲が発生した。「中田さんがどうか、をより考える」という発言とあわせてみると、ここで見えるのは、「中田ヤスタカの発言権の強大化」である。


の:レコーディングの最初はあ〜ちゃんからだったんですけど、凄いんですよ。もっとここはスタッカートで!とか、そこで強く切って!音程はそれじゃ駄目!って。


−厳しかったんだ?


の:今迄で一番厳しかったと思う。ね?


あ:うん。一番厳しかった。大変っていうか、中田さんの注文が凄く多くて、それに応えられなかったんです。できない自分が悔しくて。いつもはちょっと間違ってても、「ここが違うんだな」って自分で気付くまでその曲のオケを流すんですけど、余りに違うから中田さんが唄ってくれたんです、生歌を。


の:ヘッドフォンから聴いたんだ。(笑)


あ:自分がショックでした。もうこの耳元で生歌を聞かされちゃうくらい出来ないってことで・・・。とても申し訳なかったです。


か:私はあ〜ちゃんの歌入れを聴きながら、次に唄うプレッシャーが凄かった。震えとったよ。(笑)

「Fake It」はヤスタカの中に明確なビジョンがあり、「ナチュラルに恋して」のようにメンバーの自主性を尊重するやり方から、ヤスタカの徹底した指示に従わせる形となった。


その方式に対しての三者三様の捉え方。

あ:でも自主性なんだけど自主性じゃないんですよね・・・何て言うのかな・・・自由に歌いすぎると声が使われないから自由には唄わないし、かといって、感情込めないでスーッと唄いすぎちゃうとそれも使われないから、ちょっと癖っぽく私だと分かるような喋り方とか唄い方の発言の仕方を入れる。規制されてる中でどう見せるかが大事だし、逆にこうしてって言われるほうが、それに応えたいって気持ちになるから、私はその方がいいかな

の:やっぱり自由に唄うときは自分なりに『あ、この曲はこんな風に唄おう』とか決める癖が付いてて。ちょっと前は、どんな風に唄ったらいいですかね?って分かんないままやってました。で、今回の「Fake It」は『あ、こういう感じの曲にしたいのか』っていうのが分かって、確かにやりやすかったです

か:私はどっちでもいいと思うんです。(笑) 声がPerfumeであればどういう唄い方で唄おうとPerfumeらしさは出るし、そこで中田さんのイメージに近づけて唄うことだってPerfumeの良さだし。で、自分達に任せられて、そこに中田さんが新しい発見をするのもPerfumeだから出来ることだと思うので。

どちらにしても結果は「Perfume」に違いは無いのだが、普段から「何も考えていない」と自称する大本さんは、少し位管理下に置かれた方がいいタイプなのかもしれない。




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*1:http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20100728/p1

*2:「イミテーション」「カウンター」「ジューシーフレグランス」

Perfumeにとって東京ドームは到達点ではない@音楽と人 2010年12月号

http://ongakutohito.jp/ongakutohito/


そりゃまあ「最高を求めて終わりの無い旅をする」とまで銘打たれたからには、これが終わりな訳が無いですが。いや本当にあの歌詞は聴いていてつらい。

−東京ドームという、今日本でライブやるとしたら一番大きな会場に5万人を集めて、ある目標を達成したわけですよね。もちろんこれをいいライブにすることが大事なんですけど、Perfumeが次に目指す場所というか、チャレンジすることはあると思いますか?


あ:あると思います!


の:あると思います!


か:全然あるよね。


−力強いな、3人とも。


の:なんか、到達点っていうイメージはしてないですね。全く。だから私達、まだまだ途中だなって。そんな気がする。やればやるほどそういう思いは強くなってきます。


あ:人気のあるアイドルの方々を見ても、まだまだやること一杯あるなって思います。だってあの今をときめくアイドルの方たちが、懸命にキラキラ輝いてる姿を見ると、頑張ろう、頑張らんにゃって思うよね!


−君たちも十分輝いてるじゃん。


か:いやいや。


の:まだまだ。


あ:本当にあのキラキラ見せてもらえたら、もう毎日頑張れます!私だってもっと出来るはずっていうか、あんなに頑張ってるのに、こんなんじゃ駄目だ!って。もっとやることってあるはずだって。

また西脇さんが猛烈に自分を追い込んでいてちょっと心配な気分です。そして、「あのアイドル」に刺激を受けている、という発言は2007年ブレイク期の某ライブを思い出させます。



あ:やったことないこと、まだ一杯ある。あと日本だけじゃないとも思いますし。


−おお、大きく出ましたよ。


あ:あ、間違えました!


の:はやっ!(笑)

まあいつもの「言霊」です。しかし2009年以降の「言霊」は、ファンにその言葉が伝わる頃には既に事が動いていたりするものです。