Aerodynamik - 航空力学

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中田ヤスタカ「Perfume3人の合わさった時の声が今凄くいい」@Marquee Vol.83

http://www.marquee-mag.com/


新作「Killer Wave」に合わせて、Marqueeにて中田ヤスタカ特集。特集後半、外部ワークスについてのインタビューから、Perfumeについての言及部分。

−どうですか?Perfumeは長いから、中田くんとしてもいろんなことをやってきてるだろうし。彼女達も成長してきてるでしょ。環境やスタイルが変わってきたりしてる?


中田:「歌詞を書きたい」とは言われましたね。


−それは意外と難しいのかな。Perfumeの在り方ってもう固定されてると思うんだよ。中田くんのPerfumeに対するアプローチの仕方というか。


中田:どうなんでしょうね。僕は曲を作ってるだけなんで。曲に関しては、そんなに決めてしまってるつもりは無いですけどね。何でも出来ると思うんですけど。やっぱりPerfumeに関しては、熱心に音楽的に細かいところまで聴いてる人達だけじゃないレベルの数の人が聴いてるんで。何か音的に変わったとしても、変わった感じは多くの人はしないかもしれないですよね。振付が可愛い、スタイリングがいい、今回もいい曲だよねっていう感じになっちゃうと思うんで(笑)。だから好きな曲を作ればいいと思うんですけどね。
ただ、僕は最近特に「3人合わさった時の声が面白いな」と思ってるんで。Perfumeであんまりソロのパートを作らなくなったんですよ、最近。3人合わさった時の声が凄くいいから、今。昔より良くなってきてると思う、合体した時の声が。


−それは前も言ってたよね。上手くなったってこと?


中田:張り合わなくなったんじゃないかな。「私の声が一番使われたら嬉しい」「あんまり使われて無かったら泣いちゃう」みたいなのが中学生くらいまではあったと思うんですけど。今はそういうのが無いと思うんですよね。「ねぇ」とか聴いても、ほんとに一体感が出てきてると思いますね、ヴォーカルに関して。


−ユニットの成長とともに作曲の流れも変わってくものだよね。

ほぼ安定して10万枚前後の売り上げ規模のプロジェクトともなると、流石に熱心に音楽的な部分を聴くファンも相対的に少なくなってくるのは当然の事で、中田ヤスタカPerfumeの関係、アプローチの仕方に変化があったとしても、ファンは気付かないかもしれない。そんな当たり前のことだけれど、楽曲制作を担当する当人の口から言われると、それはそれで寂しくなるような話だ。態々言及するということは、毎度毎度「振付が可愛い、スタイリングがいい、今回もいい曲だよね」を自動書記のように繰り返す信者に対して思うところもあるのだろう。まあ実際のところ2010年のPerfume楽曲は、(「不自然なガール」という半ば自己模倣的な楽曲を除いて)手を変え品を変え、毎回変化を持って面白く聴かせてくれたので、今年も本人の言うとおり、ファンのレベルに合わせることなく、好きなアプローチで好きな曲を作り続けてくれることだろう。


そしてもう一点、最近のPerfume楽曲に顕著である、ナチュラルなユニゾン志向について。ヤスタカが3人の声質の違いについて語ることは以前もあって、インディーズ期におけるプラスティックなイメージとしての倍音樫野ヴォイス、近未来三部作からGAMEまでのパンチのあるエレクトロとの相性のいい、アタックが強く前に出る大本ヴォイス、「トライアングル」期におけるスイートチューンでの柔らかな西脇ヴォイス、それぞれを明確に使い分けているのはリスナーにも聴いて取れるところだが、今はユニゾンが面白いという。ユニゾンのコーラスが印象的な過去の楽曲といえば、個人的には「Wonder2」を筆頭に挙げたいが、今聴き直してみると少女らしい生々しさすら感じさせ、現在の楽曲における、ある種の非現実的なまでの「スーパーナチュラル」なコーラスとは全く別物だ。当時のAutoTuneのかけ方が現在と比べてかなり硬質なこともあるが、やはりPerfumeの3人も成長して、声質が相当変化している。特に、樫野さんの変化が顕著で、彼女の幼さを感じさせるやや舌っ足らずで鼻に掛かった発声が無くなっている。また、西脇さんの持つ、それこそアクターズスクール時代からの、独特の(Perfumeサウンドにはやや過剰な)コブシ回しも殆ど前に出ることが無くなった。素材として余分な部分が削ぎ落とされ、シンプルにコーラス音源としての美しさが立ち上がってきたことと、ヤスタカ自身も、硬質で鋭角的なAutoTuneから、Pitch Correctなどのナチュラルなエフェクトへとピッチ補正ツールを変化させてきたこと、これらの相互作用により、生身の声とはかけ離れているという意味で本来のナチュラルさとは程遠いにもかかわらず、寧ろ単なるナチュラルのシミュレートを超えた超自然的コーラスが生まれることとなった。(個人的には「ラファエル前派的コーラス」という例えを気に入っているのだけれど) ヤスタカは「ねぇ」を例えに挙げているけれども、最近の楽曲でこのユニゾンの美しさを堪能できるのは、やはり「VOICE」だろう。恐らくCapsuleのアルバム制作が終わると同時に既に制作に入っているであろう、次のPerfumeのアルバムが既に待ち遠しい。




MARQUEE Vol.83 マーキー83号

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