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Aerodynamik - 航空力学

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第一印象だけで速攻レビュー Perfume 3rdアルバム「⊿」

Perfume


あとで読み直して、にやにやするために書いておく。
あくまで個人的感想だから気に入らなくてもほっといてください。


01.Take Off


Capsuleのアルバムによく見られる導入用の短い楽曲。
Kanzleramtレーベルを思わせる超絶クールな雰囲気で始まり、興奮度を一気に高めるが、それはほんの数秒で裏切られる。びっくりするほどダサい。ドラムロールが。それを抜けばまだましになるか。数字カウントの発音を「頑張って」いるようだが、アルバムタイトルに当初ドイツ語的響きをイメージしていた位なので、いっそドイツ語でカウントした方がより硬質で収まりがよかったのでは、という妄想。



02.love the world


既存曲。
単体では神曲なのだが、タイトでコンパクトな印象を持つ楽曲のため、折角の導入曲との噛み合わせが悪い。導入曲を作ったのなら、Capsuleにおける「Go! Go! Fine Day」「Space Station No.9」「Flash Back」「Starry Sky」「More More More」のように、導入曲に畳み掛けるような強烈なグルーヴを持つ曲で次を繋ぐべき。



03.Dream Fighter


既存曲。
単体では凡曲だが、アルバムの1・2曲目にパンチが無いため、ようやくここでパンチが来たか、という印象となり、わりと良曲に聴こえる。前アルバムでの「GAME(楽曲)」後の「BcL」のように、選曲順による勝利。そう思うと、「GAME」の冒頭に強烈な印象を放つ「ポリリズム」があった事は奇跡的。



04.edge(⊿-mix)


既存曲のリミックス。
前作の「GAME(楽曲)」と同様に、アグレッシブさでアルバム前半を引っ張るはずの存在だが、やりたい要素やアイディアの細かい断片が詰め込まれ過ぎていて、過剰すぎる。「盛りすぎ」。よく言えば荒さが効いているが、実際の所とっちらかっているとでも言おうか。


これがライブでのミックスだったら非常に好ましい。フロア受けもいいだろう。しかし、アルバムを支える一曲として残すようなアレンジではない。むしろ、「Extended Mix」よりもこちらの方がシングルのカップリングに相応しかった。正直ダサい。



05.NIGHT FLIGHT


アルバムを代表するポップでドライブ感溢れる一曲。代々木バージョンに、一聴してYMOの特定曲が明確にイメージできるチョッパーベースやアルペジオが追加され、より80年代のリファインという方向性が明確になった。メインリフに遅れて重なる大本さんのケロ声のアレンジが素晴らしい。
敢えて言うなら、前の曲との繋がりが悪い。それを解消するためにあのイントロをつけたのだろうが、それでもまだ違和感が残る。



06.Kiss and Music


これまでに無かった斬新な方向性。こう実験精神こそアルバム曲。黒い。かつて無いほどに黒い。分厚いベースがグルーヴを主導する。アルバムを引き締める良曲。2分半は短い。リズムのシャッフル感を消してスクエアなリズムにし、スネアをもっとタイトにすればより自分好み。
あえて欠点を挙げるなら、Perfumeの3人がこの曲の魅力を活かしていない歌唱法であるということか。普通に歌った物と、ウィスパーボイスとが全面的に重ねられている面白い作りだが、そもそもの声のグルーヴのとり方が全くもってファンキーでない。その違和感がいいのかもしれないが。これは3人がこの手のエレクトロファンクに疎遠であるせいか、それともいつものフラットな歌唱法を意識していたせいか。西脇さんはこの曲では地を出したというが、それはあまり反映されているようには聴こえない。この曲調で西脇さんの地を出しすぎると、甘くなりすぎるからだろうか。



07.Zero Gravity


遂にPerfumeでもこの曲調が来たか。Capsuleでたまに見せる、安定しない浮遊するコード進行だけで持っていく曲。タイトル通りの展開で良曲。なのだが、主旋律の強度が弱いため今一歩な感もある。ところどころのJ-POP臭もちょっと苦手。この手の曲は聴き込んでメロディーが馴染んでいくと良くなっていくタイプだろう。また、ブラジルっぽいクールなハウスと思わせておいて、エレピがいつものヤスタカ節すぎてなんだかなあ。惜しいなあ。


注目の声については、西脇さんの地のクセが前に出ているが、楽曲の雰囲気とは若干違和感があり、なんとなく中途半端感が漂う。完成されていない、まだ実験段階といったところか。



08.I still love U


FM音源の派手でゴージャスでガチガチに硬質な音色を、そのまま下品なほどにベタに鳴らし、メロディーはJ-POPというより歌謡曲の泣きのメロディー。これはまさに80年代末期から90年代初頭のユーロビート歌謡、PWLレーベル、Stock Aitken Watermanワークスのヤスタカなりのリファイン。鈴木亜美のアルバム「Supreme Show」で実践した、Frankie Goes To Hollywoodあたりを現代に置き換えたものよりも、もっと「ベタ」を意識した、WINKでも聴いているかのような既視感。
バブル世代ホイホイという試みは非常に面白いが、逆に元ネタとなる世界観と独特の音色(特にベース)をリスナーが意識していないと、確実に「ダサい」の一言で切り落とされてしまうだろう。Tommy February6のやっていることをネタとして受け取れるかどうか、そのあたりにかかっている。実はPerfumeよりもMEG向きの楽曲じゃないだろうか。


トラックの方はいいとして、このクサ過ぎる主旋律は、これまでのヤスタカ仕事を考えると彼が自発的に出してきたものとはとても思えない。「こういう感じで」という発注があったのだろうか。「こういうのあえてやったら面白いよね」みたいな気持ち悪い会話があったのか。おっさんホイホイを狙ったものか、あるいはこういう俗っぽい歌謡曲を好む層へのアピールか。後者であれば、「Speed of Sound」に対する揺り戻しなのだろう。それにしてもここまでやる必要があったのかなあ。



09.The best thing


ヤスタカ要素が整理されないまま断片的に散りばめられた、なんとなくCapsuleのアルバムのアウトトラックのようなものを連想させる散漫な出来。所々のVirtual Guitarが浮きすぎ。
この曲についても声が注目点だが、アルバム中で最もAutoTuneのかかり具合がきつい。西脇さんの甘ったるい地がかなり出ているような、殺されているような、妙な感触。


10.Speed of Sound


歌がなく本当にWordsだけのハウス。実際聴いてみると、確かに「Perfumeでやる意味があるのか」と流石にちょっと考えさせられてしまう。超名曲Manuel Gottsching「E2-E4」を借用したような循環コードで引っ張るハウスで、気持ちよくトランスさせて当然の良トラック。尺もこのタイプの曲に4分は短い。キーとなるパーカッションの音色がちょっとダサい。サンプルそのまま?もうちょっとフィルターをかけるべき。


しかし、この曲もPerfumeのヴォーカルが曲の雰囲気に対し幼すぎ、また、肝心のグルーヴ感が全く感じられない。「Kiss and Music」と同様に3人のイメージ力の欠如か。それとも意図的な指示なのか。「E2-E4」を30分聴かせるか、せめて「Sueno Latino」を聴かせてトランス状態にした後に音録りすれば、もっとましなものが録れたはず、などと妄想してみる。



11.ワンルーム・ディスコ


既存曲。
前の曲との繋がりが絶望的に悪い。まあこのイントロでは仕方が無いか。そして後半のクールな流れを一気にぶった切る収まりの悪さ。凡曲だしアルバムから外してしまいたい。次の曲との間をかなり長く取ってある事は評価できる。



12.願い (Album-mix)


既存曲のリミックス。当初アルバムに入る予定が無かったが、代々木公演を見たヤスタカが「感動して」当日夜に突如リミックスし、翌日の完パケにぶち込んだといういわく付きの曲。
その出来は、過剰。とにかく音数が多すぎる。エレクトロニカ的なノイズの感触を楽しめた原曲に、あまりにアレンジの安っぽいストリングスやらハープやらドラムロールっぽいものが乗った結果、「盛りすぎ」の状況に。やるならやるで、ハンドクラップやスネアを消して完全アコースティックのほうがよかったのでは。


アレンジのげんなり感は、80年代において、テクノ歌謡楽曲が歌番組に出る際、オリジナルのトラックを使用してもらえずに、ダン池田オーケストラアレンジにされてしまってげんなり、という事態の再現。あるいはThe BeatlesThe Long and Winding Road」のPhil Spectorオーバープロデュース事件みたいな気分。



全体の印象


アルバム新曲の方向性は個人的にはかなり好きなのだが、今作はアルバム新曲のカラーを「大人」「クール」「ダンス」などのキーワードで括った結果、アルバム全体を通して聴くと、既発のシングル曲が酷く浮いてしまい、非常にバランスが悪い。特に「ワンルーム・ディスコ」の収まりの悪さは絶望的。コンセプトアルバムではないので仕方がないけれど。


アルバムの中で動を司る「Edge」、静を司る「願い」、既存曲のリミックス2曲が、アレンジを変える方向ではなく音を重ねる方向に行ってしまっているため、どちらも過剰な装飾ばかりが目に付き、プラスに働いていない事が非常に残念。


ヴォーカルについては、アルバム新曲の持つ雰囲気がこれまでとは大幅に変わったのに、Perfumeの3人の表現力がまるでついていけていない感がある。「好きなように歌うことにした」と言う割には、表現が陳腐すぎる。これを「個性」として受け取るべきなのか。なんとなく3人にはまだこの手の曲調に対する表現力が無いのではないかという気もするし、あるいはこれが全てヤスタカの指示通りなのだとしたら、曲調とヴォーカルの半端なギャップを楽しむべきなのか。


倍音の多い樫野さんの声と、アタック感の強い大本さんの声に隠れがちだった、甘ったるい広がりのある西脇さんの声が、新曲ではこれまでになく多用されている。しかし、西脇さんが地を出してきたという3曲「Zero Gravity」「The best thing」「Kiss and Music」のヴォーカルは、まだまだ実験段階といった感じ。確かにフラットではなくなったが、魅力的というほどのアピールを感じられない。大人っぽい曲調だけに、妙な違和感と甘ったるさだけが耳に残る。曲調は大人になったが、ヴォーカルはもう20歳の素敵な女性だというのにまだ純真でやたら真っ直ぐすぎる少女のようだ。ハウスはね、大人の音楽なんだよ。


もう一点、ダンストラックとしてアルバム新曲を聴いたとき、どれも尺が短すぎる。こればかりは仕方がないのか。


なんにしろ、Perfumeは変わった。「GAME」から大きく変わった。もちろんこれは狙った方向性だ。しかし何にしろ、「GAME」の途轍もないキャッチーさは失われた。Perfume楽曲のバカみたいなキャッチーさが生み出す魔法はここには無い。「チョコレイトディスコ」「セラミックガール」「TSPS」のように、超ポップなメロディーとドライブ感のあるリズムと祝祭的多幸感あふれる楽曲がもっと聴きたかった。そしてそれは好みの問題か。
ポップソングとしては大きな退化だし、ダンスミュージックとしては今ひとつ中途半端。ダンスフロアをいちいち爆発させるパワーに欠ける。まあベクトルが爆発に向いていないだけか。狙ってそういう曲調を持ってきたのだろうから。両立は無理なのか。そしてこれが彼女達の「成長」なのか。
あああああ、Perfume3人のインタビューでなく、中田ヤスタカのインタビューが読みたい。サンレコ辺りで。




まあ第一印象だからなあこれは。聴き込んだらまた全然印象が変わるのだろうな。それにしても、Perfume楽曲はダンスが付いて初めて完成だ。MIKIKO先生がこれらの新曲をどんな演出に持っていくのかが非常に気になる。




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