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Aerodynamik - 航空力学

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Perfumeの進む方向性、そして自分達で道を決めていくということ@音楽と人 2010年5月号

Perfume

http://www.usen-magazine.jp/oh/

の:色々言われるんですよ。人に会って話してると、Perfumeはもっと、アイドルとかJ-POPじゃない、本格的な方に振り切ったらもっとカッコいいのに、って。


−うん。


の:すごく言ってくれるんですよね、意見を。だけど基本は、3人の考えてるPerfume像だから。振り切ったほうのことをやっても、ちゃんと頭の中にはPerfumeがあるんで。そこに向かっていってると、自然とあっていく。

の:すごいテレビ的な売り方をしたらとか、もっとクラブ寄りに行った方がいいよとか、そういうのあるけど、やっぱりPerfumeはそのどっちかじゃなくて、真ん中なんだな、って。


か:うん、そうだね。


の:そのバランス感覚。

ファンがあまりに多様化してしまった現在では推し量る事もできないが、少なくとも2006年頃のPerfumeファンは、粗悪なアイドル歌謡が乱造され、「アイドル歌謡」というものにほんの一握りのオタクしか価値を見出さなくなってしまった時代において、「アイドルというフォーマット上『なのに』、しっかりしたエレクトロサウンドが鳴っている」という、ある種の「化学反応」を楽しんでいた人が多勢であったと思う。だから、「Perfumeはアイドルかアーティストか」などといった今でも繰り返される無意味な論争は、比較的新しいファン層だけのものなのだろう。化学反応を楽しむためには、触媒たるPerfumeは「アイドル」でなければならないし、アイドルという立ち位置を保ちながら、どこまで面白いことをできるのか、それこそが重要だった。だから、大本さんが言われたような、「本格的な方に振り切ったらもっとカッコいい」などというのは、「なら普通にエレクトロ聴きなよ、La Rouxとか」で終わる話だ。今でこそ少なくなってしまったが、Perfumeが新曲を出すたびに、ニコニコ動画では「本格的な方に振り切った」クオリティの高いリミックスをファンが沢山アップしていた。それによって、こういった要望は完璧に補完できていたし、Perfume自身も、「Perfumeの掟」「代々木Disco Mix」などで実験的にその片鱗を見せてくれていた。その実験が面白いから、もっと見たいから、僕はそれを望むけれど、全てがそうなってしまえば、それはもはやPerfumeではないし、何がPerfumeなのか、という部分は3人に明確なヴィジョンがあるという。


もちろんそのヴィジョンは21歳の女の子の考えるヴィジョンであって、それが正しいのか、それがカッコいいのか、とはまったく別の話だ。もっと大衆向きの曲を作ってテレビに沢山出ればファン層は薄く広がるかもしれないし、クラブ寄りになればファンの総数は減るかもしれないがもっと熱狂的なファンを増やす事も出来るかもしれない。
このブログではそのヴィジョンを捉える材料として、3人が好きだと言及した音楽をひたすらアーカイヴしてきた。これらを見る限りでは、少なくとも西脇さんに周りの言うような「いわゆるカッコいい音楽」を見出すセンスは期待できない(というよりベクトルが異なりすぎている)し、その事が、大本さんや樫野さんの志向するある一定の方向性にブレーキをかけることで、独特の揺らぎや曖昧さを確保し、何を歌っても「ベタな」クラブサウンドに集約しない可能性を作っているのも確かだ。ここに中田ヤスタカが、あくまでも先鋭化せずにポップフィールドで勝負しようとしている事との相乗効果がある。



あ:変なこだわりみたいなのは3人とも凄いあるよね。だから話が来ても、必ずメンバーに最初に話が来て、OKかOKじゃないか。こっちはありだと思うけどこっちは無しですよね。ポーズも、こっちはPerfumeっぽいけどこれはちょっと違うね、とか。いろんな人が周りに一杯増えてきて、いろんなことももちろん言ってくれるけど、それがあるからブレないんだと思います。

以前徳間ジャパン篠木氏のインタビューの時に自分が書いた文章をまた引っ張り出す。

はっきりいって、日本のアイドル歌謡の中で、Perfumeほどマイノリティとポピュラリティのコントロールの難しいユニットは他に無いだろう。
アイドルファンとクラブミュージックファン、一般的なJ-POPファン、すべてを抱え込むPerfume。どっちに倒れても飽きられる、その微妙な綱渡りの舵取りは、篠木氏や白石氏に委ねられている。

「微妙な綱渡りの舵取り」の、最終的な権限はもちろん「偉い人」にあるのだろうが、何か話が上がった時に、その判断を3人が最初に下す、あるいは意見する、そこまでの権限がPerfumeには与えられているという。
2007年の、「事務所の方針に、ちゃんとあったことを、作曲も作詞もしないで、出されたものをぱっとやるのがアイドル」*1という割り切ったような発言とは全く感触が異なる。どの時期からなのかは分からないが、少なくとも今はある程度Perfumeの進む方向をPerfume自身がコントロールすることが出来ているということだ。正直この3人に任せていいのかと思うことは沢山あるけれども、誰がどう見てもPerfumeは西脇さんを中心に回っているし、そこに軸を置く事によって芯はブレないから色々遊べる、というのならその言葉を信じるしかない。



か:今のPerfumeの現状とかも考えた上で、自分達もセルフ・プロデュースみたいな部分がちょっとあるんだと思います。もちろんいろんな人と作り上げてるものでもあるけど、自分達もPerfumeを作ってる部分があるから、軸がブレないでいられるのかな。

中田ヤスタカ関和亮MIKIKO、内沢研。中核スタッフが変わらないことが、Perfumeに一定の軸を作る要素となってきたのは周知の事実だが、多分これからはよりPerfumeの三人のセルフ・プロデュースによる部分が大きくなっていくのだろう。
ヤスタカは「ナチュラルに恋して」製作時に、BPMの速いバージョンと遅いバージョンのどちらがいいかの判断を3人に委ねたという。両方を聴く事が出来ない以上、どちらがよい判断だったのかを考える事は出来ないが、少なくとも、3人は「Perfumeっぽい」という方を捨て、これまでに無い新しい可能性を選んだ。その結果があの曲なのだから、その時の嗅覚は大いに評価したいし、これからよりその判断がPerfumeの活動に反映されるのであれば、まだ「21歳の女の子」が、これからどんなものを選び取って、どのようにそのセンスを変化させていくのかを、よく観察していきたいとも思う。




音楽と人 2010年 05月号 [雑誌]

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