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Aerodynamik - 航空力学

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近未来的なのに懐かしくもある、それがPerfumeの魅力@週刊文春2010年5月6日号「考えるヒット」

Perfume

近田春夫の考えるヒット652。「不自然なガールナチュラルに恋して」。
毎回扱っていただき有難うございます、と言いたくなるな。まあ「ジェニー」の生みの親であるからして足を向けては寝られない、とまでいうと大袈裟か。

近未来的なのに懐かしくもある それがPerfumeの魅力だ!!


TVで受け答えするPerfumeを見ていて、本当にキャラクターとサウンドに接点がねぇなって思ったのだけれど、逆にだからこそ!こんなに人気が出たのだとも思う。これが−DJをやったりとか−バリバリのテクノ少女だったりしたら、もう少しマニアックな層にファンも限定されてここまでの一般的支持は得られなかったろう。
Perfumeに変な自意識は感じられず、むしろただただ与えられた課題に最善を尽くすのみという印象だ。考えようではかなり古臭いアイドル的信条で生きている。一方”音響的”にはおそらく我が国屈指の新しさを誇っているわけで、この「保守と革新の二律背反(?)を成立させる」バランスはちょっと他には見られないものである。


そんな彼女達の最新シングルが「不自然なガールナチュラルに恋して」という両A面なのは何か象徴的な気もするし、こう対照的なタイトルを並べられると、なんだか比べて聴いてみたくなる。
M1は突然例の声から始まるが、そのチューニングはまさに塩梅というかさすがだった。もうそろそろこの声に飽きたかなと思わせない何かがあるのだ。以前と同じようで実は微妙に−心地よさも−進化しているのだろう。
二律背反といえば、この曲に限らず、彼女達の声には近未来感とともに必ず−一種物悲しさにも似た−懐かしい響きがあるのは何故なのか。理由は分からねど聴いているうちに、そこがPerfumeの持つ大きな魅力に違いないと思った。主観的に申せば、他の中田ヤスタカ関連作品には、こういった気分をそれほど感じないのである。


とか何とか言いつつM2に進むと、こちらは四つ打ちではない少し遅めな曲調だった。ひとくちにテクノ、エレクトロといっても、いわゆるDJの作るものというよりはミュージシャン寄りの音になっているといったらいいか。このプロデューサーの強みはトラックメーカーでありながら、きちんと音楽家らしいメロディも書けるところだろう。こういう人材はまだまだこの国では稀有なのである。
ところでこのM2をパッと聴いた時にスクリッティ・ポリッティの音を思い出した。あの辺りのやたらと緻密な”打ち込みもの”ってひょっとしたら、これからまた意味を変えて脚光を浴びるのかもしれないな、とそんな事も考えたのだった。

「DJをやったり」「バリバリのテクノ少女」、それはどこのAira Mitsukiですか?


ワンルーム・ディスコ」の回では、「サウンド総体としての冒険が少なくなった」「トラック的面白さは薄まった」「ついこの間まで強気にリスナーを振り向かせていた存在が、今はマーケット側に歩み寄りを見せている」と、遠まわしな表現で「つまらない」と評価を下していた近田氏だが、今回は「”音響的”にはおそらく我が国屈指の新しさ」と、挑戦を大いに評価。Perfumeにおいてはさほど斬新でもない「不自然」のトラックはさておき、「不自然」のPVと「ナチュラル」のトラック/PVの挑戦は、久しぶりにファンを興奮させるだけの創造性に満ちている。


楽曲とキャラクターの対比、対照的なタイトルあたりはまあよくある話として、声のチューニングが進化している、というところの感覚。「実は微妙に−心地よさも−進化している」。ネット上の評を見て回ると、「より生声に近い」といった評ばかりが目に付いたのだが、どうにも自分にはそう聴こえない、むしろエフェクターの種類が変わっただけのような感触でいたのだが、多分こういうことなのだろう。
Sound & Recording Magazineのヤスタカインタビューによると、この変化(進化)は、AutoTuneよりもよりナチュラルな表現となるCubese 5のプラグインPitch Correctの比重が高まったものと推測されるだろう。以前から近田氏も「アーティフィシャルな歌声には早晩みんな飽きてくるだろう」と指摘していたが、今回も先手を打ったヤスタカの勝ちか。


「近未来感とともに必ず−一種物悲しさにも似た−懐かしい響き」、みんな分かってはいるけれどそれを言葉で説明するのは難しい。三人ともに極端に声質が異なるがゆえに重なった時の効果は大きいが、西脇さんの1/fゆらぎが現れている声、そういった広がりと安定感のあるベースとなる要素の上に、樫野さんの強い倍音が重なる事で、それがプラスティックかつ物悲しいという感触を生むのだろう。「プラスティックかつ物悲しい倍音」といえば、上の世代ではYMOにおける高橋幸宏と言えばピンと来るだろうか。一度その道に詳しい方の解析を聞いてみたいものだ。


ナチュラルに恋して」はやはりScritti Polittiの名前が出るよな。FM音源、ホワイトファンク的リズム、インテリジェントな空気感。「Cupid & Psyche 85」はそろそろちゃんとしたリマスタリング音源が欲しい。





参考:
考えるヒット「ワンルーム・ディスコ
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20090410/p1
考えるヒット「Dream Fighter
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20081211/p1
考えるヒット「Love The World
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20080825/p1
考えるヒット「ポリリズム
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20071116/p1
Perfume×近田春夫対談@TV Bros.
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20071219/p1




Cupid & Psyche 85

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いいのかこれで―考えるヒット〈6〉

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不自然なガール/ナチュラルに恋して(通常盤)

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