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観劇記録 「サバイバル・オブ・ザ・デッド」(SURVIVAL OF THE DEAD)アメリカ 2009年公開 R18+



ホラーマニアに付き添って、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて鑑賞。


ゾンビといえばこの人、George A. Romero。2005年「ランド・オブ・ザ・デッド」、2008年「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」に続く21世紀ゾンビシリーズ新作。「ダイアリー」の途中に出てきて主人公達から物資を奪っていった脱走州兵のその後を描く形を取っている。


初期ゾンビ三部作でロメロゾンビは伝説となったが、その後多数のリメイク作品が作られ、そのどれもがオリジナルに敬意を示しながらも、「走るゾンビ」「急速に感染するゾンビ菌」など新しい要素を取り込み、よりスピード、パニック、トリック、あらゆる方面で面白さを増していく中、本家はひたすらオリジナル路線を堅持している。
若手がリメイクで街中を走り回る凶悪ゾンビをアグレッシヴに描く一方で、本家は枯れてしまったかのように、のんびりと間延びした、緊迫感も恐怖感もゼロの緩いゾンビ達をバックに、相変わらず人間の醜い争いだけを描き続ける。だがしかし、正直言って今作は、ロメロ信者でなければ最後まで見るのも辛い作品かもしれない。


今作は「ゾンビとの共存」が一つのテーマとなっているが、それは15年も前に「デイ・オブ・ザ・デッド」で描かれたものの繰り返しであり、今更感が否めない。
ロメロのテーマでもある「人間の醜さ」も、「ゾンビに囲まれるという究極の極限状態の中で、人間の本性が暴かれていく」という過去のようなものではなく、単に縄張り争い程度のものになってしまっている。*1
ホラー映画としてみた場合は、全く怖くなく、「サバイバル」もしていない。「ダイアリー」の方がよっぽどサバイバルだ。また、普通の映画として観た場合でも、あちらこちらに伏線らしきものがばら撒かれるのだが、あのキャラはあんな特殊能力を、あのキャラはあんな性癖を、といった数々の伏線は、ただただばら撒かれるだけに終始し、まるで回収されない。とにかくあちこちから駄作、枯れたという声しか聞こえてこない。


唯一の希望としては、今回ラスト間際に、オリジネーターだけに許されるゾンビの「新定義」が出てきた事だ。それは、「ゾンビと人間の垣根」を曖昧にする可能性があり、フィリップ・K・ディック的な展開が次作に望めるのではないか、とほんの少しだけ期待を抱かせてくれた。




全然関係ないけれど、この劇場では丁度同タイミングで「Sex And The City 2」が4スクリーンも使って大々的に上映されていて、それ目当てで来た大勢の女性で館内ロビーやエスカレーターはもう大混雑。しかも、その女性のほとんどが、あきらかにSATCを観に来たと一目で分かるような、ピンクかパールのふわふわてろてろ素材でばっちりドレスアップ状態。香水の匂いもきつい。さすが六本木だなあと笑っていたのだが、さらに「ゾンビ」の方でも、上映前には香水や化粧水のCMが延々と流れたり、上映中でも女性グループが2時間延々と大声で雑談していたりと、いやはや六本木らしい情景だった。




*1:インタビューによると、「OK牧場の決斗」をやりたかったらしい。