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Aerodynamik - 航空力学

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Perfume、東京ドームへの覚悟「今こそ私達は挑戦をするべき」@音楽と人 2010年9月号

Perfume

http://ongakutohito.jp/ongakutohito/


「東京ドーム公演をやりたいと言い始めたのは西脇さん」というのは幾つかのインタビューで既に明らかになっているが、今のところ今回のインタビューがその経緯について最も詳しい。


そもそもの始まりはこのエントリ*1に詳しいが、実際に行動となって出たのは2009年年末だという。


まずは西脇さんの構想から。

あ:最初、さいたまスーパーアリーナさんが思い浮かんだんですよ。でもやるならもっと、徹底的に挑戦しなきゃと思って。そしたらやっぱり東京ドームさんじゃないかなと思って。東京ドームさんのことを思い浮かべてたら、なんとなくライブをやってる風景が浮かんだというか。

そして西脇さんから大本さん、樫野さんへ。

の:まずですね、誰かから言われたとかではなく、去年の年末かな。3人で話してる時にあ〜ちゃんから「東京ドームやろう!」って言われたんです。


か:3人で普通に話してて、着替えながらだったかも。


の:そういう感じ。その時は、手の届かないところだし、どう考えても無理めだな、と思ってたんです。


か:うん。無理め(笑)

当然のように一旦戸惑う二人。

の:だけど、あ〜ちゃんがそう言うって事は、凄く強い意思のもとに言ってるんだなって思ったから。


の:あ〜ちゃんの言葉に奮い立たされて、やるなら今しかない、だからやりたい。行ける所まで行ってみたい、って気持ちがフツフツと湧いてきたんです。


東京ドーム公演に至った西脇さんの「凄く強い意思」の根拠。

あ:最近の私達は、何かを忘れてるな、と薄々思っていたので。


−それは何ですか?


あ:いつクビ切られるか分からない、明日は広島に帰れって言われるかもしれない、この寮にもいつまで居させてもらえるんだろう、って思ってた、あの頃の気持ちです。表には出さなかったけど、心の中で3人がずっと思っていたこと。多分それは、のっちもかしゆかも私もずっと持ってるはずなんだけど、日々やらなきゃいけないことや、考えなきゃいけないことが昔より増えて、そういう気持ちを忘れていたような気がしたんです。だから今こそ、私達は何かに挑戦するべきだし、崖っぷちで震えながら、それでも夢を信じてた、あの頃の感覚を取り戻さないといけない、と思って。

経費削減崖っぷちアイドルだった2006年までのPerfume。あの頃の精神を取り戻すため、西脇さんは決意した。形式的なリーダーはいないけれども、Perfumeを動かすのは常に西脇さんのこの感覚だ。


そして3人からスタッフへ。

あ:3人の意思が一致したから、そこからスタッフさんにお話したんですけど。


あ:偉い人も含めてみんな「おいおいおいおい」「言うねぇ・・・・・・」みたいな反応で。言葉失くしてる人もいたりして。


−また無茶言い出したよ、みたいな。


あ:あんまりいい反応じゃあなかったです(笑)。でも、ぜひやりたいです、挑戦したいんですって言ったら、よしやろう!って言ってくれて。このご時世、こんな大きな夢に投資してくださるのも本当に大変だと思います。

という事で、Perfume側の提案により東京ドーム公演は実現へ向けて動き出すこととなった。


Perfumeの根本は「挑戦し続ける事」にありという西脇さんは、「挑戦」をどう捉えているのか。

あ:お客さん一杯にするのは、凄く大変だろうなと思うし、スタッフさんたちが言葉を失くしたのもよく分かる。でも私達は、自分達の首をもっと絞めるように、そういう夢を全部言ってきたんです。


あ:武道館やりたいとか、紅白さんに出たいとか、そうやって言う事によって、もっとちゃんとやらないと駄目だよって自分の首も絞めるし。それができなかったときに恥ずかしい思いをするのも自分だから。そうやってずっとやってきたんです。でも、絶対夢は叶うと信じてやってきて。言葉にして、それに挑むところがPerfumeっぽいと思います。


崖っぷちの感覚を取り戻し、自らの首を絞める。西脇さんはそう表現した。「最高を求めて終わりの無い旅をする」、あの歌詞のような息苦しさ。
「2位じゃ駄目なんでしょうか?」との言葉が、スパコン開発の意義を離れて、「2位に甘んじようとすれば、1位を狙う者達に蹴落とされ、2位にすらなれない」という文脈で嘲笑されたように、3人も、全力で輝き続けなければならない、そう西脇さんは考えているように見える。そしてそれは時に見ているこちらまで苦しくなるような時もある。昨年の、武道館公演と紅白出場という目標を達成してしまった後の、燃え尽き状態での代々木公演前後など、今思えば酷く無理をしていたし、そして所々で弱音を吐いていた。結果、「去年は仕事の負荷に耐えられず、一旦止まって『歩き』の年にした」*2という。その後、直角二等辺三角形TOURを成功させた事で、彼女達は再び地に足が着いた自信と余裕を取り戻し、今年また再び自らに大きな課題を課した。




そこまでしても、いつまでも輝き続けることは難しい、それは西脇さんも分かっている。こんな事に言及するのは、ブレイク後、初めてかもしれない。

あ:「VOICE」の歌詞じゃないですけど、キュンとする一瞬の恋が輝く宝石みたいに、その輝きが続くなら、って。そう願いたいけれど、それって普通に考えて無理な話で。それをずっと続けてる人って少ないし、そういう存在であり続けることはとても難しいと思う。永遠なんてないし、私達だって終わりはあるし。でもずっと輝いていられるように、それに近づけるように努力はしたいです。3人でいたいもんね。


あ:ずっと輝くことはできないし、人数が減ってしまうかもしれない。その輝きが届く距離はどんどん狭まってしまうかもしれないけれど、3人で一緒にいたいって気持ちをずっと持っていれば、躓いた時も、悲しい時も、いつだって前を向いていられるし、どんな事だって我慢できる。

「現実に打ちのめされ倒れそうになっても きっと前を見て歩く」という歌詞を、まるでそのままなぞったかのように発言する西脇さん。かつて、「Dream Fighter」がリリースされた時に、その歌詞の「ひたすらに夢を追い続ける」という内容に、Perfumeのメンタリティーがそのままこの歌詞をなぞって、この曲を心の支えにしてしまう事を危惧した古参がいた。ファンから見ても、この歌詞はあまりに辛く、苦しい道のりを予想させたからだ。そして多分、西脇さんは、地でその道を歩んでいる。中田ヤスタカは、しばしばPerfumeと自らの関係、あるいはPerfumeの置かれた状況を歌詞に投影する(とファンは解釈している)。どんな意図であれ、ヤスタカがこの道のりを歌に具現化してしまったことの、西脇さんに対する影響は大きいだろう。


西脇さんは、Perfumeといういまや非常に巨大なプロジェクトを一人で抱えようとしているように見えるほどに、責任感が強い。最も三人の身近にいるMIKIKO先生が、「もう少し他の二人に責任を分散させた方がいい」と時々口にするように。冷静な樫野さんや、楽天的な大本さんがもっとバランスを取って上げられれば。しかし、これもまたPerfumeの姿なのだろう。


自分の勝手な心配を他所に、今のPerfumeは、西脇さんの強固な決意を支えにして、一生に一度の大仕事になるかもしれない東京ドーム公演へ向けて、加速を付けて全力で取り組みたいという非常に前向きな状況にある。
泳ぎ続けなければ死んでしまう鮪のように、常に挑戦し続けようとするPerfume。ファンの側に、その決意を受け止めるだけの準備は、できているだろうか。




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*1:http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20090714/p1

*2:Rockin'on JAPAN 2010年9月号