読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Aerodynamik - 航空力学

はてなダイアリーからはてなブログへ移行中

観覧記録 Perfume LIVE@東京ドーム「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」

Perfume

http://www.perfume-web.jp/1234567891011/



  • 101103 Perfume LIVE@東京ドーム 「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」


色々情報を整理したいのだけれど、忘れないうちにざっくりと印象だけを書いておく。



はじめに

東京ドームはあまりにも巨大な会場なので、座席位置によって、視覚、音響、ともに非常に大きな差が生まれ、均質なレポートなど生まれるわけが無い、ということを念頭に置いてほしい。
ちなみに、今回の自分の席は、一階バックネット裏、つまりステージ真正面ではあるが、すぐ後ろに記者席を控えるかなりの後方に位置していた。残念ながらバックネットは外されておらず、更には丁度太く結わえられている部分が正面を遮り、非常に見難い事この上なかった。また、アリーナセンターに組上げられた四面スクリーンの柱が邪魔となり、メインステージの演出もとても見難い状況であった。そういう場所からの感想である。念のため。




※追記


何度も書くが、会場があまりに巨大なので、座席によって印象は全く変わる、という事を理解した上で読んで欲しい。
参考までに、画像を貼る。センターステージに立つ3人が見えるだろうか。距離については、このムービングカメラ位置の更に1.5倍以上はあった。ダンスが見えないとか以前に、花道最前に誰かが来てもそれが誰なのか分からないレベル。更に前には網と柱がある状態、そういう場所からの感想である。



※追記終わり



客席

見事に全てが埋まっているように見えた。それは壮観な光景だった。細かい空きは当然あるのだろうけれど、兎に角埋まっていた。09年横アリ1日目、2日目は、チケットは完売しているにも関わらず、転売業者が捌ききれなかったのか、二割ほどの空きが出ていた。今回は、公演自体がたった一日限りということもあって、当初の予想を覆し、転売されているチケットはぎりぎりまで定価を割ることなく、どうしても欲しい人は高値で購入することになったようだ。


客層の話をすると、09年には多く見られた30代以上のおっさんが、今回は極端に減っていた様に見受けられた。そして増えたのが、特にこれといった個性の無い大学生位の若者だ。06年頃のPerfume現場を知っている人にとっては随分と不思議に映ることだろう。30代以上のおっさんは、年季の入ったアイドルオタかテクノポップリスナーであり、PerfumeのCDの主たる購買層でもあった。そして、そこにアイドルオタやらテクノリスナーなどがごっちゃになった、見るも奇妙な、ある種尖がった人間達の集団、それがPerfumeのライブの客層だった。そして今、現場にいるのは、無個性の若者達ばかりだ。そして最初から最後まで一貫して超絶手拍子。薄く浅く広がっていったPerfumeの人気は今、こういう層に支えられている。これが何を指し示すのか、よく考えるべきだ。



選曲

結成10周年記念ライブということで、「過去10年間の活動を総括する」、ということは全く無く、定番の曲ばかりを並べて構成し、インディーズ時代の数々の楽曲や、メジャーデビューのタイミングでCD化されなかった人気曲「イミテーション」「カウンター」はもちろん、そもそものメジャーデビュー曲「リニアモーターガール」ですらセットに組み入れられることは無かった。東京ドームに集まる5万人という膨大な数のファンの中で、その9割以上を占めるであろう、ブレイク以降の新参達を満足させるべく、「結成10周年」という意義を捨て去り、「新参ウケの最大公約数」を取った。これは「TV Bros.」誌連載にも語られていた通りだ。そしてその結果、このようなセットリストになった。ここには、音楽的な挑戦は存在しない。過去の曲をリミックスにより再構成し、ステージに蘇らせた「代々木DiscoMix」のような試みすら行われなかった。「リニアモーターガール」など、絶好のリミックスタイミングであると思っていたのだが。CD音源をそのまま聴いて喜ぶには、幾らなんでもまだ早すぎるのではないだろうか。松任谷由実だったか、デビュー曲のPVの衣装まで完全再現した回顧ステージをやったことがあったが、今回のセットリストには、そういう意図すらない。これは、単なる「新参ウケの最大公約数」に過ぎない。


平坦で盛り上がりに欠けるセットリストの中で、唯一盛り上がったとすれば、「コンピューターシティ」「エレクトロ・ワールド」だっただろう。2010年にもなって、初期の3部作を超えるライブ向けのアッパーなキラーチューンがいまだに追加されない(今回外された「Edge」を除き)という事実を改めて実感させられる。「Perfumeの掟」は中田ヤスタカの新作。これが無かったらと思うとぞっとする。


今回は物販の説明がなく、また客弄りもやや少なめということで、MCにかける時間は通常よりも短かった。公演時間は丁度三時間。なんとなく今回もMCなどの時間を計測していたので、参考までに記しておく。



  1. GISHIKI
  2. シークレットシークレット
  3. 不自然なガール
  4. GAME
  5. ワンルーム・ディスコ
  6. ナチュラルに恋して
  7. love the world
  8. I still love U
  9. 575
    • 着替え (4分)
  10. Perfumeの掟」 (8分)(中田ヤスタカによる新曲)
  11. VOICE
  12. コンピューターシティ
  13. エレクトロ・ワールド
    • MC (19分)
  14. パーフェクトスター・パーフェクトスタイル
  15. Dream Fighter
  16. P.T.A.」のコーナー (10分) (「The best thing」「Lovefool」「セラミック・ガール」の断片を含む)
  17. ジェニーはご機嫌ななめ
  18. コンピューター・ドライビング (イントロのみ)
  19. Perfume (ロングバージョン、サインボール投げ)
  20. チョコレイト・ディスコ
  21. Puppy love
  22. wonder2
    • EN (5分)
    • MC (11分)
  23. ねぇ
  24. ポリリズム

音響

自分はクラバー上がりのPerfumeリスナーなので、ダンスフロアの音響に求めるものはシビアだと思っている。音響が最悪なライブは内容の如何以前のレベルで問題外である。Perfumeに求められるサウンドは、ボーカルの旋律だけが聴こえていればそれでよいJ-POPや、ギターの轟音さえ聴こえていればいいロックのそれとは根本的に異なっている。それは、Perfumeがダンスミュージックとアイドルポップスが高次元で融合した音楽だからだ。そして、そもそも、東京ドームは音を鳴らすために作られた施設ではない。単なる野球場だ。はっきり言って、ここで奏でられた音は、まるで鑑賞に耐えられなかった。予想はしていたが、ここまで酷いものだとは思わなかった。これまで酷いと思った横浜アリーナのスタンド席ですら、「あああれも音響施設として設計されているのだな」と思い返す位に。始まってしばらく、自分の足は動かなかった。離脱だなんだとつまらない言葉を投げかける必要はない。自分は真摯なダンスミュージックリスナーとしての感想を書いたまでなのだから。


ファンに「爆音姉さん」と親しまれるMSI JAPAN所属佐々ふみさんの腕を持ってしても、東京ドームの隅々まで音を届けるのは物理的には無理だ。ただそれだけだ。



ダンス

見えない。当然だが、遠すぎる。Perfumeの三人の責任ではない。ただ、これでは、伝わるはずのものも伝わらない。スクリーンでは、主にアップの映像を映すため、三人のシンクロは伝わらない。会場が大きすぎるため、三人が花道に分かれている場面も多く、フォーメーションダンスとしての魅力は下がる一方。彼女達が幾ら頑張っても、これはリカバリできる問題ではない。



インタラクティヴ・メディアアート

パンフレットにあったそのクルー達の名前を見て、大いに興奮していたものの、*1 出来はどうかと聞かれれば、「ああ確かにやってはいた、やってはいたけれどね・・・」と渋い答えを返すしかない。
いや、ステージでは興味深い試みがなされていたのかもしれない。しかし、あまりにステージから遠すぎて、その全てを受け取ることは自分にはできなかった。


Alex Beimが提供したであろう「Zygote Interactive Ball」は、ライブの最初から最後までステージの遥か上に吊り下げられ、全体の照明に合わせてぼんやりと色を変化させていたが、余りに輝度が低く、ほとんど目立たない存在となっていた。オリンピック閉会式で見せたように、観客の頭上に降ってきて、自らの色を変化させることも無かった。音や触覚に反応するインタラクティヴ装置というよりも、照明装置の一つとして機能していたのではないかと思う。


真鍋大度が作成したと思われる、AutechreGantz Graf」PVを思わせる(「Gantz Graf」はインタラクティヴというよりも手書きアニメなのだが)ハードなエレクトロニカとそのサウンドに合わせて形を変える鋭角なCG造形は、明らかにこれまでのPerfumeとは異なる異様な雰囲気を演出し、一瞬で場の空気を変える威力を持っていたにもかかわらず、実際のところ、Perfumeの着替えタイムに追いやられていた。踊る観客もほとんどいないように見えた。この音に合わせて三人が踊ったらどれだけ刺激的だっただろう。


コレオディレクターMIKIKO先生のフル演出によるパフォーマンスコーナー「Perfumeの掟」では、メンバーがスクリーン上の電卓を叩くと数字が動くといった、Zachary Liebermanらしき仕事が見える。しかし、スクリーンが遠すぎるのと、間に柱があるため全容を把握できず。スクリーンの画像処理では、樫野さんの踊るシルエットがリアルタイムに増幅され巨大に描画される、大本さんのポージングシルエットが点描に変換され描画されるなど、真鍋大度の近年の作品が窺えた。また、真鍋大度の筋電センサーによる音声コントロールは、Perfumeのダンスと融合し最大の見せ場になると思われたが、ダンスというよりも「シティ故障状態」において、たったの30秒ほど、効果音を出すために使われたのみであった様に見えた。いや正確に言うと柱で見えなかった。


繰り返すが、何分メインステージから余りに遠く、障害物もあっため、ステージ上、そしてスクリーン上で何が行われているのかを正確には把握できなかったのが正直な所だ。ここは寧ろWOWOWで放送される映像や、恐らくリリースされるであろうDVDで、よく確認したい。これまでの、曲に合わせて踊るだけのPerfumeのパフォーマンスにはなかった、為しえなかった事が展開されていたのは間違いないのだから。ただ、それを見せるには、この会場は大き過ぎたのだ。



CG

関和亮とLAPTHODというチームであり、過去の実績を見ても、様々なテクノ関連の引用を含んだクールでシンプルでかつポップという独特のセンスを見せてくれるはずであったが、どういうわけか今回は、覚えたての素人がツールで作ったようなものばかりのレベルの物ばかりが並べられた。「GAME TOUR」の時のあの卓越したセンスはどこへ行ってしまったのか。唯一、「VOICE」時の、歌詞テキストを画面に並べる映像には、サカナクションアルクアラウンド」PVなどで見せた関氏独特のセンスが感じられた。



照明

確かに今回もレーザーこそは多用していたが、全体的に照明が少なく、やや頼りなさが見えた。空間が広すぎた、とも言えるだろう。09年のツアーで、アリーナクラスがその照明とレーザー演出を最も効果的に見せる空間だと認識させたのは間違っていなかった。迫力で勝る点は、巨大な天井全体に模様を映し出した時くらいか。そういえば、ミラーボールも無かったと思う。
東京ドームでは、安全確保のためか、通路や客席の照明が落とされない。それもあってのことだろう、これまでの大会場で魅せてきたPerfumeのライブにおける圧倒的な照明の力は、今回ばかりはどうにも発揮しきれていないように見えた。



その他

Perfume(楽曲)」をやっている間、三人は別々のゴンドラというか高所作業車のようなものに乗ってアリーナ周縁を回り、サイン入りボールを近くの観客に投げ続けていた。今のPerfumeに、そんな事をさせる必要は無いと思った。君たちはパーフェクトなスターなのに。



総評

10周年の活動を総括する出来のライブだったかと聞かれれば、「NO」とだけ答える。このライブを心の底から楽しめた人は、いい場所に当たったか、過去のPerfumeのライブを知らない人だ。単に、東京ドームはPerfumeのライブの魅力を観客に伝えるには余りに大き過ぎるのだと思う。公演タイトル「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」の「10」までの数字のうちのほんの4つほどだけが掬い取られ、「11」に対する展望も描かれなかった。アリーナ中央の幕に「11」と描いてあった、というのは何も語っていないも同然だ。


西脇さんに一度問いたい。会場の大きさを肥大させ続けること、それが本当に「挑戦し続けること」なのか、と。常にアウェイの環境でステージに上がり、対バンのファンを食い散らかす嵐の様なライブをやってのけてきたPerfumeだからこそ、問いたい。フロアを震わせる中田ヤスタカのダンスサウンドは、ドームの隅々にまでしっかり響いたのか?Perfumeのライブの最大の武器、MIKIKO先生直伝のフォーメーションダンスは、皆がその目で楽しめのたか?Perfumeがライブでその真価を発揮するのは、そしてその三人の一体感を会場全体で共有できる限界は、もっと違うところにあるはずだ。




セットリストは完全に新参向けにカスタマイズされており、10年を振り返る懐かしい曲など一曲も披露されなかった。しかし、近年「wonder2」か「願い」で固定されていたセットリストの最後に、あえて「私達に大きなチャンスをくれた曲」として、「ポリリズム」を移動させ、花火/銀テープと、厳しかったであろう予算の最後を目一杯に特効に突っ込んだ、その気持ちは心に訴えるものがあった。彼女達のブレイクまでを支えてきた、腐れ古参達に幸あれ。