Aerodynamik - 航空力学

はてなダイアリーからはてなブログへ移行中

Perfume、紅白三年連続出場を決める。そして僕は途方に暮れる。

http://www9.nhk.or.jp/kouhaku/artists/index.html


Perfume、そしてPerfumeに関わる製作陣の皆さん、紅白三年連続出場おめでとうございます。


三年連続出演だ。ほんの数年前まで、この状況を予測できていた人がいるだろうか。アイドル/音楽界に於いて、「女子高生テクノポップアイドル」という異端の存在がブレイクする事自体が途轍もなく大変な事件であったが、その変化球的な存在が、一発屋とならずにその後三年もその人気を少しずつ拡大させ、国民的番組に出演し続けていることは、実に感慨深い。あの日アイドルなんて全く興味の無かった自分ですらその勢いに引き込まれてインストアイベントで握手までした子達が、もしかしたらそのうちLiquidroomを一杯にするかも程度までは思い描くこともできなくは無かったが、まさか東京ドームを隙間無く埋めるまで成長するなんて、夢にも思わなかった。




確かに、「紅白出演」は、ある種の芸能活動をする人にとっては頂点のようなものだ。しかし残念ながら、90年代半ばから急速に進んだ趣向の多様化/細分化により、大晦日には家族揃って紅白、という、皆がみな同じ事をする時代ではなくなった。かつて紅白には、その年に誰もが耳にしたであろうヒット曲が並んでいたが、今ではそもそも90年代までは存在していた「誰もが知っているヒット曲」というもの自体が無くなってしまった。大衆的ヒット曲がなくなった代わりに、CD購買力は特定のアーティストに入れ込む人達に集中し、結果、今年のシングルCD売上ランキングのトップ10は、嵐とAKB48だけで埋まってしまう、そんな異様な事態になった。


趣向の多様化/細分化の時代、もうCDを購買する層が熱心に紅白を観る事はほとんど無くなった。貪欲に音楽に金を落とす人達は、年末のカウントダウン系フェス/ライブ会場に足を運んでいる。何となくメディアに乗せられてたまにCDを買うライト層は、知らない曲ばかりが並ぶ紅白など観ないだろうし、そういう人達は、大晦日と言えば「お笑い」か「格闘技」を観るだろう。そして局所的に異様な購買力を見せるアニオタは、アニソン紅白に夢中だ。音楽にお金を音がしたくても落とせない若年層は、興味のある出演者だけザッピングして観るだろう。


それでも、紅白は平均40%もの視聴率を叩き出す。この数字にどれだけの価値があるのかをみてみれば、いまだに紅白を最初から最後まで観ているのは、能動的に情報を取得する習慣のない、年寄りや団塊世代ばかりが中心だ。この層がCDを買う事など殆ど考えられない。


結局、名誉ある紅白出場だが、それで購買力のあるファンを増やす事は難しい時代になってしまった。購買力のない若年層が、出場曲単曲を着うたで購入する位だろう。それでも、「伝統」としての紅白にはまだ権威がある。紅白出場というステータスが、大衆的ヒット曲を出した、という意味合いから、単にNHKに気に入られた、というレベルまで落ち込んでしまったとしても。出演陣に、所属事務所の力が透けて見えたり、NHK貢献度の比重がますます高まったとしてもだ。




平均40%の視聴率のなか、昨年のPerfume出演時は瞬間で43%を記録した。しかし、その3%が購買力として今年に繋がっているかを振り返って観てみると、2010年のPerfumeのCD売上は、初動の自己記録を更新し続けたと言っても、ほんの数百枚の僅かなレベルに留まり、初動型に移行した分、数週間の累計で見れば、2009年に落としたその数字を2008年レベルに戻した、という様に見える。大きく見れば横這いだ。がっちりとした固定ファンに支えられる一方で、新規ファン、あるいは浮遊層をCD購入層として掴む事は難しかった。
ファンにしてみれば、まさに「攻めの年」という言葉が相応しい一年で、刺激的なシングルを三枚も出し、その都度複数のゴールデン枠の音楽番組に出演し、あれ程しつこい位に流れたCMタイアップがあり、遂には東京ドーム公演を敢行し、公演がメディアに取り上げられ、ジャニーズ冠番組にも複数出演して曲を披露、もうこれ以上メディア展開として何ができるのかのか分からない位であったにも関わらずだ。もう、今の時点でまだPerfumeに食いついていないような層は、この先もPerfumeに興味を示す事は無いのだろう、そう思わせるほどの年だった。


勿論、CDの売上自体が急速に冷え込んでいる時代に、ほぼ10万のラインで現状維持できた事は大いに賞賛すべきことだ。だからと言って固定ファン向けの戦略に特化して現状維持を意図的に狙っても、得られるものは緩やかな衰退でしか無く、やはり少しずつでも外へのアピールをし続けなければならない。そういう意味で、紅白も含め、各種メディア露出は維持していかなければならないのだろう。ここまでしても食いつかない、潜在的購買力を持つファン予備軍を掴むには、一体何処へ訴えればいいのだろうか。全く持って難しいことだ。マーケティングも宣伝広告にもまるで縁の無い自分には、これ以上考えても、途方に暮れるばかりだ。





と、ここまで思ったことをつらつらと書いておいてなんだが、あくまで一個人のファンである自分の立場に返ってみれば、いい曲を聴き続けることができればそれで充分満足なので、Perfumeの活動が継続できるレベルでそこそこ売れてくれれば、売上やランキングなんでどうでもいいし、それこそファン層の拡大なんて、微塵も興味は無い。「同じクラスにPerfumeファンがいて嬉しい」という年齢でもない。東京ドームよりももっと小さい箱で、いい音とダンスを観客皆が堪能できる公演を打ってほしい。あまりに売れ過ぎても、届く物がつまらなくなるジレンマがある。全くもってアンビバレントだ。ファンなんて勝手なものだ。複雑なファン心理を抱えながら、今年も格闘技を見たがる田舎の家族の横で、CMの度に紅白をザッピングしながら、手を伸ばしてももう届かないその姿を、蜜柑でも食べながらのんびり観ることになるのだろう。