Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 南波志帆 第二回主催ライブ@渋谷O-nest



南波志帆主催ライブ、第一回は昨冬の代官山UNITで行われた。その時のゲストはHALCALI、そして南波志帆にも楽曲提供をしているNona Reeves西寺郷太。音も雰囲気も素晴らしく、テーマであった「冬の文化祭」らしい楽しいイベントだった。集客に関しては、300人程度であったかと思う。ちょっとUNITでやるには動員力が足りなかったとも言える。
そして無事第二回が行われることとなったが、今回の会場は渋谷O-nest。キャパにして250人。まあ現在の南波志帆の集客力としてはこれは妥当な所なのだろう。


会場に入ると、どうもこれまでのアイドルオタやシティポップスリスナーといった年齢層高めのおっさんが中心の客層とは何かが違う。やけに綺麗な女性が多い。



ミドリカワ書房


トップバッターはミドリカワ書房。長髪メガネの奇妙で癖のある緑川伸一が、特定の人物を一曲ごとにシニカルな悲哀を含んだコミカルな歌詞で演じる、まるで演劇のようなスタイルがとても面白い。「相当衝撃的なスクールポップ」というお題に合わせて、ということで、大学の教授と不倫している女子大生の歌「私の恋愛」や、若い男の体だけが生き甲斐の「保健室の先生」などの、確かにスクールポップではあるが、あまりに業の深い人達の独白がポップなフォークサウンドで綴られてゆく。幾つかの曲は知っていたのだが、全部がこういうスタイルだとは知らなかった。普段はあまり歌詞など気にせずにサウンドだけで音楽を聴いているのだが、この詞が全てを支配するスタイルにはかなり衝撃を受けた。これは面白い。シティーポップス経由で南波志帆を聴いているファンにも訴えるものがあったと思う。






Jackson Vibe


二番手には、何故か八人の大所帯、ブラス隊までいる、リア充系超ポジティブパワフルスカバンドが登場。ヴォーカルの肉体派イケ面男が煽りまくる。先ほど異質だと思った綺麗な女性達は、ここで一斉に踊りだし、コール&レスポンスを繰り出す。なんだ、そういうことか。確かに演奏は素晴らしく、ピースでポジティブなバイブスに会場が包まれるほどに熱いパフォーマンスで、先ほどの女性達や、サーフィンなどが好きそうな健康的なアウトドアリア充男性達が踊りまくっていたが、個人的にはこの手の「リア充系超ポジティブ」の歌詞の薄っぺらさに心を動かされることは全く無く、襲ってきた強烈な眠気に耐えるのに必至になっていた。南波志帆主催イベントなのだから、其々の出演者は南波志帆と音楽的に何かしら共感できるような人達を呼べばいいのになあ、と思っていたが、ヴォーカルのMCによると、このヴォーカルが前に所属していたバンドSKA SKA CLUB時代の、バンドを通じた仲間が現在の南波志帆マネージャーで、このマネージャーはLONG SHOT PARTYでベースを弾いていたのだという。ちょっと調べてみたら、そのマネージャー菅原氏は、以前は別の会社でミドリカワ書房のマネージメントをやっていた。つまり、今回は、楽曲やファン層の親和性によって対バン相手が選ばれたのではなく、マネージャーの個人的繋がりだけで対バン相手が選ばれていたのだ。今日は「THE NANBA SHOW」ではなく、「THE SUGAWARA SHOW」であったのだ。この事についてはちょっと残念だった。何故なら、フロアの1/3以上の客はどう見ても肉体派リア充Jackson Vibeのファンで、その次の南波志帆は、主催者なのに寧ろ客層からはアウェイな状態に見えたからだ。(もちろん前方は熱心な南波ファンが埋めていたが、後ろの方で全体を見ていた自分には、そう感じた。途中で帰ってしまう人もちらほらと見受けられた。)3バンドの対バンで、其々のファンが皆満足するような組み合わせなど、そんな簡単なことではない、というのは分かっている。全然違うジャンル同士のほうが、ファン層を広げることになるかもしれない、というのも分かる。しかし、「個人的な思い入れ」としては、「THE NANBA SHOW」は、必ずしも「スクールポップ」である必要はないけれど、「スクールポップ」という言葉の持つ「語感」が似合うバンド達に出演してほしいなあと思う。



南波志帆


最新曲「こどなの階段」PVでは降ろしていたその髪を、いつものトレードマークであるサイドポニーテールにして、赤い花柄のサロペットを纏った南波志帆がステージに登場し、客に向かって深く一礼をする。バンドは、キーボード渡辺シュンスケ、ギターに岩谷啓士郎、ベースは須藤優といつものフルセット面子かと思いきや、ドラムにNona Reeves小松シゲルではなく、プロデューサーであるCymbals矢野博康その人が登場。彼のTシャツには大きく「YANO」と書かれている。これは気合が入っているぞと興奮しながらライブスタート。


しかし、音が小さい。PAのバランスが悪い。南波ちゃんの声があまり聴こえない。何てことだ。通常PAの設定は、ステージ全体を通して調整されるものなので、直前のブラス隊まで付いたゴージャスな大所帯、しかもヴォーカルはめちゃめちゃ声量のあるJackson Vibeが基準になってしまっているようで、南波バンドはパンチが無くスカスカで、さらには細く繊細な南波ちゃんの声はそのバンドの音の中に埋もれてしまっていた。ちょっとこれには参った。UNITやDuo Music Exchangeといった、良質な環境でこれまで南波志帆のステージを見てきたので、この状態はあまりに可哀想に思えた。早くバランスを戻してあげて、と祈ったが、ようやくバランスが戻ったのは、7曲目位だったと思う。ここだけは実に惜しいところだった。もちろんこれは箱側の問題で、南波志帆とそのバックバンドは、これまでよりさらに安定感を増したパフォーマンスを見せてくれた。


  1. ストーリー
    • MC
  2. それでもいえない YOU&I
  3. サンダル (カオシレーター
    • MC
  4. あたらしいくつ
  5. 宇宙の中の二人ぼっち
    • MC
  6. こどなの階段 (新曲)
    • MC
  7. ごめんね、私。
  8. シャイニングスター (カオシレーター
  9. きっとすべては夜のせい
  10. みたことないこと
    • MC
  11. セプテンバー (カオシレーター
    • EN
  12. Bless You, Girls!

前回の「THE NANBA SHOW」は「冬の学園祭」がテーマだったが、今回は春ということで「新入生歓迎会」。今日始めて南波志帆のライブを見た人は「新入生」、そうでない人は「在校生」。「新入生向けにアッパーな曲を用意したので新入生は流れに身を任せてください」「在校生は盛り上がるところはクラップとか入れたりステージに上がったりして(笑)盛り上げること。いつもより盛り上げちゃって盛りボーイ盛りガールになってください」と相変わらずの不思議なMCで温かい笑いを誘う。


インディーズデビューアルバムを録音したのは、まだ福岡に住んでいた14歳の頃。14歳の女の子がどんなことを考えているのかを作家陣が理解する為に、南波ちゃんにはその日観た夢を記録する「夢日記」を付けさせて、それを作家陣が見て楽曲へのインスピレーションを得ていたようだ。学校に遅刻しそうになって走っていたら、靴からロケットブースターが出てきて、それで空を飛んで学校に間に合った、という夢を元に書かれた曲が、「あたらしいくつ」なのだそうだ。


前日にPVが公開解禁となった「こどなの階段」も披露された。PV監督はPerfumeファンにはお馴染み関和亮。そして関和亮を一躍時の人にしたサカナクションアルクアラウンド」繋がりで作曲にはサカナクション山口一郎、作詞は熱心なPerfumeファンとして知られるBase Ball Bear小出祐介、と、まるでPerfumeファンへのアピールを強く意識したかのような新しい布陣で作られたこの曲。「とてもカッコいい」「いや南波ちゃんらしくない」と早速ファンの間でも意見が割れているが、個人的には大好物。この曲をきっかけにして、より多くの人に南波志帆を知ってもらえればと思う。(残念ながらタワーレコード限定シングルなので、タワレコが近くになければこちらでどうぞ。*1


ライブは、毎度のことだが南波ちゃんのやや緊張状態から始まるものの、ゆっくりと安定感とボルテージをあげていく。そして今回も後半からの畳み掛けるようなアッパー曲コーナーのスタート、その一曲目「ごめんね、私。」で一気にその魅力が爆発する。CD音源としては今一ファンに人気のない「シャイニングスター」も、ライブでは完全に化けて、クールで透明な南波ちゃんの魅力を引き出す重要曲となる。この透き通るような清涼感と、凛とした佇まい、なのにマシュマロのように柔らかな空気。まるで心が洗われるようだ。これが17歳の今だからこその魅力なのだとしたら、シンガーとしてより成長していくこの先には、どんな魅力が待っているのだろうかと、気の早い期待感に満たされる。


最後のMCで、早くも「THE NANBA SHOW Vol.3」の開催が告知される。7/22、今度の会場はDuo Music Exchange、規模は大きい。今度は是非3組のファンが3組全てを楽しめるような「NANBA SHOW」らしいゲストを呼んで、そして会場一杯のファンと夏の南波志帆を楽しもう。