Aerodynamik - 航空力学

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デビュー前のPerfume、Sync⇔Sync「冷蔵庫に納豆」を聴いて「全然歌が入ってこない」@RKBラジオ「チャートバスターズr」 110606

http://rkbr.jp/cbr/index.html


テクノポップ」に対する拒否感エピソードは何度も語られた話だが、新事実も。

−「これからPerfumeがやる音楽はテクノポップになる」って聞いた時、どんな心境だった?


の:いや、テクノポップを知らなかったので・・・。


あ:なんか、ピコピコ、ゲームみたいな・・・。なんかちょっと・・・ちゃちい音だなーって思ってました。やっぱり、「デビューするから、お金とかかけてもらうのはこれからなんだ」・・・。こういう音を知らなかったんで。


−バンドでやるんじゃなくて、ちょっとこう、経費削減じゃないけど、そんなイメージもあったんだ、打ち込みに対して。


あ:そうです。これはもう頑張れって事だと思って、受け止めて頑張ってましたけど。こういう種類があるって事すらも・・・


か:全く知らない。「テクノ」っていうジャンル自体知らなくって。「ゲームっぽい音」っていう意識しかなかったんですよ。


あ:聴いたことが無かったからね・・・。声もなんか「大分遠くに聴こえるな」みたいな。「篭って聴こえるな」みたいな。そういう印象でしたね。


の:上京する前に、ジューシィ・フルーツさんの「ジェニーはご機嫌ななめ」っていう曲をカバーさせてもらってて、なんかそのイメージの流れで、前の、当時のマネージャーさんが、「こんな音楽やってる人いるんだけど」って、MDに録音してくれたのを聴かせてもらったりとかして。 でもやっぱなんか、可愛らしいとか、そういう印象だけで、今みたいなかっこいいと思えるような、そんな音楽知識は全く無くて。


か:アクターズスクールって、こう、「歌い上げる」とか、「気持ちを前に出す」っていうのがメインなんですよ。如何に自分の気持ちを歌に乗せて出すか、表現するか、っていうのを中心にして、それができてる人のほうがより前に出れる、みたいなところがあったんで、その曲を聴いたときに、全然歌が入って来なかったんですよ。何回聴いても、何回聴いても、歌が入ってこなくって。


の:「れいぞーこになっとー」みたいな曲が一杯入ってて。(笑)


か:「れいぞうこになっとー」、右からひだりーみたいな(笑)


あ:本当にそうだった。


の:分からなかった。


か:最初は良さが分からなかった。


あ:若かったしね。14歳だから。


か:そりゃなるよ。


あ:だし、今みたいにこう、テクノが沢山・・・、今はもうヴォコーダーで声を加工している音楽が沢山今出てるけど、この当時は、そういうのは、もちろんその、YMOさんとか、そういう、こう、前の世代の方が知ってるっていう位で、私達は勿論SPEEDさんとか安室さんとかで来た世代なんで、まあ全然知らなくて、受け止めるのに結構時間掛かりましたね。理解するのにも凄い時間掛かったね。

「当時のマネージャー」というと、故 中村新一氏だろうか。当時氏から三人が聴かせてもらっていた楽曲の中に、まあ当然といえば当然なのだが、「Sync⇔Sync」の楽曲が入っていた。公式発言としては初めてではないだろうか。中田ヤスタカPerfumeの三人の最初の出会いは、このMDだった。
ここで大本さんと樫野さんが歌っているのは、Sync⇔Sync「冷蔵庫に納豆」。作曲/編曲は中田ヤスタカ、作詞は「えみきのこ」、初期のCapsuleや最近のPerfumeで多用される中華風メロディ、ペンタトニックスケールを多用した疾走感溢れるテクノポップ。音色こそ古いものの、素晴らしいポップセンスを聴かせる名曲で、フルサイズの音源が公開されていないのが残念でならないのだが、基本的にR&Bの歌い上げるヴォーカルとヒップホップダンスで徹底的にトレーニングされ、それ以外の価値観を知らない少女達には、打ち込みポップも、「えみきのこ」のフランジャーのきついヴォーカルも、全く理解できなかったようだ。


このブログを見に来る様な方には説明不要だとは思うが、「Sync⇔Sync」とは、中田ヤスタカが専門学校生時代に「えみきのこ」こと「木の子」さんと結成したユニットだ。広島から上京してきたPerfumeの楽曲制作には、このSync⇔Syncコンビが起用された。木の子さんは初期Perfume楽曲の全ての作詞を担当し、ネガティブとポジティブ、メンヘルとメルヘンを彷徨う、そのあまりに独特の世界観に、今でも強烈なファンが多い。「言葉の暴力 いつか消えるのかな」「人を信じれず 怖さ覚えるでしょう」といった、全くアイドル楽曲らしくない精神世界、さらにはアイドルに「笑顔で嘘つき お遊戯を踊る」とまで歌わせる木の子詞を、元気一杯の女子中高学生が歌う、その強烈なギャップもまた、当時のPerfumeの大きな個性の一つでもあった。
デビュー前にPerfumeが聴いた「冷蔵庫に納豆」。「冷蔵庫に納豆 賞味期限の切れてしまった恋」と歌うサビは、普通の中学生の理解を超えていたかもしれないが、木の子詞は、恋愛感情を食べ物などに例える事が多く、Perfumeにもデビューシングルから「スウィートドーナッツ カロリー高い恋には注意」「おいしい恋のレシピ 心のヤケド注意」と歌わせている。


Perfumeがデビュー前にSync⇔Syncを聴いていたということ、それともう一つ、「チープな打ち込みサウンドは経費削減のためで、頑張れば『ちゃんとした音』が付けてもらえる」と当時の西脇さんは考えていた、ということも、このインタビューの聴きどころ。テクノポップアイデンティティを全否定するような感想を抱かれてしまった訳だが、まあ当時の彼女達の年齢と、当時のJ-POPシーンの音を考えれば仕方の無い話でもある。そもそも、テクノポップチップチューンのような、ロービットのチープな電子音を好む人たちの存在など、Perfumeがブレイクした今ですら、世間一般には知られていないのではないだろうか。