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Aerodynamik - 航空力学

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中田ヤスタカ「1990年代のハード・シンセの音源が欲しい」@Sound & Recording Magazine 11年8月号

music

http://www.rittor-music.co.jp/hp/sr/


中田ヤスタカ×福富幸宏対談から。

中田:僕が今注目しているのは1990年代のハード・シンセの音ですね。アナログ・シンセはさんざんソフト化されているけど、この辺は全然ソフトにならない。僕、PCMとかハイブリッド音源が好きなんですよ。FMとAWMの組み合わせとか…。


福富:YAMAHA SYだね(笑)。


中田:あとLA音源のやつ…。


福富:ROLAND D-70とかD-50だね(笑)。


中田:その辺のものがソフトで立ち上げられたらいいんですけど、メーカー側は誰も憧れを抱いていないと思ってるっぽいですね。僕は凄く欲しいんですけど(笑)。


福富:あの当時はアナログ・リバイバル・バブルで、D-70とか結構安かったよね。


中田:僕、高校の時にD-70をすごく安く買いましたもん。今のソフトシンセって2極化していて、アナログ系のシミュレート系と、ものすごい容量のPCM系のどっちかですけど、両方とも目指しているところがスーパーリアルなんですよね。でも技術が発展途上な感じを僕はかっこいいと思っていて、たとえば電卓の表示って今でも7セグメントで、デジタルであることがわかるじゃないですか。ああいう感覚が今足りないなと思う…。僕は初期のショボいMP3エンコーダーの音質がかっこいいと思っていて、そのうちエンコーダーの種類を選んで音作りする時代が来るんじゃないかなと。


福富:なるほどね(笑)。そのためには技術がもっと進む必要があるだろうね。そこで初めて音質差がわかるようになるのかな。


中田:確かに。FM放送とAM放送の違いみたいな感じですね。(笑)。作り手が昔は必死に改善しようとしていた部分を、未来の人はあえて使うようになると思うんです。たとえばレコードのプチノイズをわざと入れるのが流行った時期とかあるじゃないですか。あんな感じで。

90年代のテクノムーブメント以降、シンセサウンドを浴びるように聴いてきたが、あの当時は本当に凄いヴィンテージシンセブームで、Moogはもちろん、ROLAND Juno-106やROLAND Jupiter-6を誰もが欲しがった。もう少し世代を遡ると、Sequecial Circuits Prophet-5やARP Odyssey辺りが神機扱い。どれも特徴的な音で、好きな人が聞けば大体どのシンセか分かると思うのだが、90年代のデジタルシンセについては、D-70と言われてもどんな音かピンとこない。Youtubeでデモを観て、ようやく「ああこの音か」という。あの当時、FMとかPCM音源はテクノ系の人にはとても嫌われていたと思う。音色の作りづらさから「YAMAHA DX-7がテクノを殺した」のような言葉を度々耳にしたし、PCM音源では「音色はプリセットを選ぶだけ」と揶揄された。。


YAMAHA SY-77は1989年発売、FM音源+PCMのRCM音源。ROLAND D-50/D-70は1987/1989年発売、アナログ波形+倍音とアタック担当PCMのLA音源。完全にPCM化する直前の、所謂ハイブリッドシンセで、音を作るシンセとしては最後の世代。91年にGM規格がスタートし、この頃を境目にして、時代は「音を作る」方向性から、「ものすごい容量のPCM」の中から「音を選ぶ」に変わっていった。そこが、90年代のシンセがテクノ好きに嫌われた理由でもあり、いまだにソフトシンセ化されない理由でもあるのだろう。


D-50デモ。あらためて聴くと美しいシンセだ。


SY-77デモ。




※ついでに
色々なシンセデモ動画を見て涎を垂らしていたんだけれど、テクノ全盛期93年発売のYAMAHA VL1のデモにあらためて驚く。楽器の物理モデルから発音や共鳴をリアルタイムシミュレートするVL音源、リアルな楽器再現だけでなく、パラメータ次第では現実に有り得ない楽器までシミュレートできるという発想が当時衝撃的だったけど、全くと言っていいほど普及しなかった。発売当時、同時発音数2音のVL1で470,000円とあまりに高価すぎた(16音ポリのVP1は2,700,000円、10台しか売れなかった)のと、完全にハイスキルなプレイヤー向けだったためか。そもそも発想が「電子音そのものの持つ快楽性」とはかけ離れていた。時代に合わなかったのだろう。


大ヒットした95年発売のヴァーチャルアナログCLAVIA Nord Leadも、VL音源と同じように発想は「アナログシンセ」のリアルタイムシミュレート。電子音の美学。こういうシンセがある限り、アナログ厨から抜け出せない。