Aerodynamik - 航空力学

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中田ヤスタカ楽曲大賞2011に投票するよ

http://ystkma.blog.shinobi.jp/


少し遅れて開催、中田ヤスタカ楽曲大賞。一年があまりに早い年だった。


対象楽曲数は、07年/64曲、08年/73曲、09年/34曲、10年/59曲、11年/31曲。近年で最も少ないが、震災で各種の年間リリース予定が大幅に狂ったこと、制作に取り組む環境が物理的にも精神的にも作りづらかったであろうことは想像に難くない。一方で、きゃりーぱみゅぱみゅとのコラボは、ヤスタカが思い付いたアイディアを即座に形にするスピード感と軽さを楽しんでいるようで、その部分が、今年の素のヤスタカらしい一面を一番分かり易い形で見せていたのだろう。



楽曲部門(持ち点10pts、最大6曲)

楽曲   配点  
Perfume /
スパイス
スパイス(通常盤) 3 時代遅れのテクノリスナーたる自分の本音をいえば、クラブのフロアで鳴るような音と、アイドルポップスが高度に融合して、全く新しい音楽を形成する、その「止揚」こそがPerfumeサウンドの魅力である、いや、そうであったと思っていた。故に、所謂「バキバキ」という言葉でファンが語るところのニューエレクトロは、既にそのピークを過ぎてしまった訳で、同じ所でPerfumeが足踏みをしていることには意味が無い。2011年の「JPN」に、そういったベクトルでの「バキバキ」が無いのは正解だと思う。同時に、「Seventh Heaven」のような「乙女ハウス」系ピアノハウスなどもってのほかだ。では、今のPerfumeに注ぎ込むべき現在形のエッセンスは何なのか、と言ったところで、まさかそれはダブステップでもあるまい、今やJ-POP界の中堅どころとなったPerfumeに何を期待しているのだ、そう考えていた所に、「スパイス」はドロップされた。コズミック系Nu DiscoやChillwave/Glo-Fiの肌触りが、再びPerfumeというアイドルポップスに投入されていた。この方向性の楽曲が来るなんて、完全に予想外の衝撃だった。かつての「フレンチエレクトロ」とはベクトルは違えど、再び現在進行形の音とアイドルポップスの掛け合せの面白さがPerfumeに戻ってきた。この刺激を、3年間待ったんだ。最高だ。
COLTEMONIKHA /
嘘つきジングルベル
COLTEMONIKHA BEST 2 COLTEMONIKHAは、中田ヤスタカワークスの中でも、酒井景都の色が強く出ている、「まず酒井景都の世界観ありき」のユニットだ。「ポリリズム」でPerfumeがブレイクしたのとほぼ同時期の2作目のアルバムリリースから活動もなく、全ての制作を自分の手によるものにしたいであろうヤスタカの中では「もう終わったユニット」なのだろうとも思っていた。昨年、二度目の体調不良と東京を離れての療養の為に、自らのアイデンティティである「Made in COLKINIKHA」の中目黒路面店をたたみ、遂にブランド自体もクローズした酒井景都。それから少しして、COLTEMONIKHAの久し振りの新譜制作の情報が漏れ聞こえてきた。多分この2曲の新曲制作は、中田ヤスタカから持ちかけたものではないかと思う。おそらく彼はそういうロマンチックな男だ。そしてこの楽曲も、素晴らしくロマンチックでファンタジック、「酒井景都の世界観」そのもの。そして、酒井景都が書いた、今の彼女の切実な状況と心境がそのまま反映された歌詞は、単なる感情移入以上のものを呼び起こす。
Perfume /
Have a Stroll
JPN(通常盤) 2 80年代前半、おニャン子クラブに業態が塗り替えられる前の、歌謡アイドルポップス黄金期、シティーポップスの職人達が創り上げた、巧妙でかつ洗練された都会的でいて、そしてワクワクする高揚感と、少し刹那的な憂いを含んだメロディーとアレンジ。そのある種の頂点が、資生堂のCMソング群。そのEPO矢野顕子「春咲小紅」のような、職人ポップスの心踊る巧妙なポップスのエッセンスを取り込んだ新曲群を見せてくれた「JPN」は、歌謡アイドルポップスとして、全体を明るいカラーでまとめた、素敵なアルバムになった。「心のスポーツ」と並ぶ、このアルバムのハイライト。
Perfume /
心のスポーツ
JPN(通常盤) 2 aikoによるカバーが容易に脳内に描ける、歌謡曲を昇華したキュートなポップセンス。aikoにライブでカバーしていただいて、西脇さんを号泣させたい。
JUJU /
さよならの代わりに (Yasutaka Nakata Remix)
さよならの代わりに/願い 1 2008年の中田ヤスタカに求められたようなリミックスワーク感で目新しさも何もなく、仕事自体も地味なのだが、何故かその地味さが好きで結構聴いている。


Perfumeについては、前作「トライアングル」における、「圧倒的な超ポップ」の喪失と、アルバムの流れにおけるシングル曲群の絶望的な収まりの悪さを経験しているため、いくら昨年のシングル楽曲が良くても、今回も統一感の無い「シングルまとめ」的なアルバムになってしまうのではないかと危惧させられたが、開けてみれば、実に素晴らしいアルバムになっていた。今の日本を覆っている閉塞感と不安を吹き飛ばすような、明るくキュートなポップに彩られた全体のカラー。既発のシングル曲も、随分とその魅力を増して聴こえる。「レーザービーム」のアルバムミックスのエディットは「ちょっと今それは無いかなー」という感触ではあるが、このドタバタ感も、このアホっぽい曲の魅力に寄与しているのだろう。
世界進出を意識したタイトルは、楽曲制作に先行して付けられていたが、このアルバムにはその気負いの重さを感じさせない軽やかさがある。80年代前半の歌謡アイドルポップス黄金期の心踊る巧妙な職人ポップスを現代に甦らせた、素敵なアルバムだ。それを踏まえて一つ言うとすれば、少しずつ手を入れられた既存曲のなかでも、「ねぇ」だけはすでに音が古く、また、軽やかな空気を纏っていない。タイアップ曲ではあるが、アルバムとしての完成度を考えるなら、「ねぇ」は落として、軽やかな職人ポップスのベクトルの新曲をもう一曲入れれば、トータルでよりいい物に仕上がったとも思う。


Capsuleのアルバムは…、今の自分の気分ではなかった。「今」はこういう音を求めていないのだろう。





ミュージックビデオ部門(持ち点5pts、最大2曲)

楽曲   配点  
きゃりーぱみゅぱみゅ /
PONPONPON
もしもし原宿(通常盤) 3 彼女のキャラクターとその背景にある文化を、素晴らしい形でパッケージングしたPV。Youtube経由での世界への波及も、映像の訴求力をダイレクトに感じることができて非常に面白かった。


Perfume楽曲については、関作品は今回はあまり引っかからなかった。「GLITTER」はシンプルにダンスを見せる作りなのだけれど、ダンスコンテストまでやった割には本家のダンスに面白みが無く、寧ろ「スパイス」のダンスの方が素晴らしすぎた、という事もある。「レーザービーム」に関しては、単にあのオチの付け方が好きではないだけ。


「スパイス」は挑戦的な試みだったと思うが、PVとして好きかと言えば微妙なところ。この意見が多分感覚的に近い。ファンだけがわかる細かいネタを大量に仕込んであるのは分かるのだけれど。


@washin1968
スパイスPV何かと似ていると思ったら、近年出て評判の悪かったYMOの写真(写真そのものは凄く良い)集だ。対象に対して敬愛が薄い感じで、結果的に自分の作品を出そうとしてしまっている感じが共通していると思った。#prfm link





一年を振り返ると、地震の直後にはとても音楽など聴ける心境でもなく、その後もシリアスな音楽はあまり聴かなくなっていた。思考を停止させる没入感の強いダンスミュージックと、多幸感の強いアイドルポップスを、不安の逃げ場として機能させていた。あれほど期待されていた砂原良徳の10年振りのアルバム「liminal」が、年末の各種音楽メディアの2011年ベスト選出から悉く見放されていたのは、アルバムの出来云々よりも、選者たちの「こんなにも不穏でシリアスな音楽を今は聴きたくない」という心情に負う所が大きかったと思う。震災前に作られていたにもかかわらず、発売時期も含めて、震災/原発事故と音像や世界観がシンクロし過ぎていた。(実際彼は今年のライブで放射線防護服を着て演奏したのだ。) だから、2011年にヤスタカがPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅを通して提示した、等身大の軽やかな空気には、自分は随分と救われたと思う。彼女達の楽曲が、辛気臭いというよりも重すぎる「絆」や「家族」、「復興」といったメッセージにも向かわず、肩の力を抜いて楽しめる良質なポップスとして提供されたことに感謝しています。