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「“アイドル”と“ちゃんとしたトラック”両立に成功したのはPerfumeだけ」@週刊文春2012年5月3・10日号「考えるヒット」


近田春夫の「考えるヒット」750回。毎度お世話になっております。ネタは「Spring of Life」ではあるが、短い中でやたらと脱線している妙な回。

“アイドル”と“ちゃんとしたトラック”両立に成功したのはPerfumeだけ!!


意味のある曲作りかどうか。なぜここはこういうコード進行になったのか……。とか。そういった問答のうんと成立する音楽の方が −考える対象というなら− 断然面白いだろう。良い曲悪い曲といった判断はまた別の話。


私はリスナーでいると「ダンスミュージック以外聴くのもかったるい」と思う事が殆どなのだが“踊らせてナンボ”とハッキリ音響効果的責任のある四つ打ちには述べてきたまさに<意味>だけで出来ているようなところがある。きっとそこが私の性分に合っている(笑)のに違いない。


ダンスミュージックとアイドルポップは似ている時もあるだろうし実際、共通点や接点の無いわけでもない。けれども「極めようとしたとき彼方にあるもの」は別だ。何よりダンスミュージックは真髄として匿名性が強く、人気商売であるアイドルにはそれはあまり有難くないことに決まっているからだ。それぞれを広義でいう所のマクルーハンのクールとかホットなメディア(古い〜!)みたいな感じに二項的な関係でとらえると、特にアイドル熱気が異様な状態の今日の我が国では両立が至難の業であること想像に難くないだろう。おっとアイドル産業自体はきっと“ものすご〜くクール”なのだとは思いますけどネ。


その議論はさておき、結局今のところアイドルと“ちゃんとしたトラック”を両立維持させるのに成功してきたのは「Perfume中田ヤスタカ)のサウンド」だけだ。間違いない。それはこの人たちと他のアイドルでは、自身に課してきた音楽的敷居の高さの桁は違うのではないか、という事でもある。

ダンスミュージックとアイドルポップスの接点についての総論的な話。「極めようとしたとき彼方にあるもの」は別とはいえ、両者が奇跡的なまでに魅力的に融合しているのはPerfumeサウンドだけだ、と言い切ってしまうのもアレだが、近田氏がこの手の話をする時に説得力を持つ背景には、もちろん1989年当時のアイドル/カルチャースターであった小泉今日子にハウスを歌わせた「KOIZUMI IN THE HOUSE」の功績がある。90年代にはダサいだのなんだのと言われたが、もう十分クラシックだろう。


ポップカルチャーの大司祭」様であらせられるマクルーハンを持ち出すあたり、文春読者世代的には説明が不要なのかと思うが、70年代に展開されたマクルーハンのメディア論といえば、「ホットメディア」=高精細、「クールメディア」=低精細という二項論だ。今の時代に解釈し直すとすれば、「ホットメディア」は情報過多のトップダウン、「クールメディア」はユーザ参加型のボトムアップ、になるだろうか。とはいえ、これだけネット上のコミュニケーションサービスと情報発信手段が密になると、どんなに情報過多でもユーザはそれを食い尽くし、さらに二次創作にまで走る。AKBがどれだけテレビやコンビニ雑誌の表紙を埋めても、舞台裏を映画として全部見せたとしても(ホットメディア)、ファンはGoogle+と2chAKB板でのやり取りの中から独自のストーリーを編み出すのだろう。



ところで最近“踊り子”の事を考える。昔一つの人気商売として踊り子というものがあった。その今様がPerfumeだとまでは言わないが、他の誰にしろ昨今の“アイドルさん”たちの踊りの励み様は半端ではない。ひょっとして歌手人気ではなくそちらの部分の方が重要なのかと思うほどだ。さらにひょっとしていまどきそういう物が好きな坊ちゃんたち、声の方は声優ボディはアイドルとか欲情を分けて使って遊んでるのかもとか。


ひょっとしてAKBってSKDとかNDTがヒントだったかも……?今そう気づいた。俺もっとヒップホップな例えばECDみたいなの下敷きにしてたと思ったのよずーっと。おっと話がそれてきました。これから先、歌は別人ってバレバレで“振り”だけで超人気のアイドルなんてのもありうるよねぇ!

70〜80年代のアイドルが歌謡アイドルだったとすれば、現在のアイドル=踊り子ということだが、これの直系の先祖に当たるグループアイドルといえばセイントフォー東京パフォーマンスドールがぎりぎり記憶にある。が、AKBのヒントはもっと遡ってSKD(松竹歌劇団)やNDT(日劇ダンシングチーム)にあるという。これらは戦前から1950年代がピークだろうか。ステージを埋め尽くす大人数の踊り子たち。分からんでもない。



肝心の新曲。その持つ力強さ重さ、すなわち“男性性”なのだが、これを備えるJポップは本当に稀なのである。そういう意味を私はこの曲から感じたのだった。とても挑戦的なスタンスだと思った。

新曲に対するコメントはここだけ。「Spring of Life」をデカいスピーカーで鳴らしてみた時に、これまでとは全く違う音のバランスに驚いた。「男性性」というのは、キックと16分のベースのマスタリングの有り方がこれまでとは全く変わったことに負うものだろう。新ヤスタカスタジオのモニタースピーカーがYAMAHA NS-10MからGENELECに変わった、そしてそれを意識的に作用させたのがその要因だと思っている。



FLOORnet #147

中田:メインのソフトを含め、機材はほぼ変わってないですね。ただモニター・スピーカーをヤマハのテンモニ(YAMAHA NS-10M:エンジニアやDTM楽家界隈で高い評価を受けている)からGENELEC社のものに変えて。その変化は意外と大きいかもしれない。
 スピーカーを変えたからといって作りたい音楽が変わるわけではないんだけど、若干の意識の変化はあったはず。テンモニはフラットな感じで使いやすいんだけど、GENELECは低音が塊でくるというか。より低音を体感として実感できるから、それは少なからず影響を与えたかもしれないなぁ。


http://www.factry.co.jp/floornet/147/h2.htm





考えるヒット「スパイス」
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考えるヒット「ねぇ」
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