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Aerodynamik - 航空力学

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田中裕介監督、Perfume「Spring of Life」PVについて語る@white-screen.jp

http://white-screen.jp/?p=16814


これまでのPerfumeのPVといえば、基本は関和亮監督、CM連動楽曲などは児玉裕一監督というラインでずっと作られてきた。イメージは固定化され、それこそ、Perfume三人の髪形や、一貫したサウンドと振付スタイルなど、変わらない個性こそが彼女達を形作り、イメージ戦略にとって重要な位置を占めていた。


ところが、「スパイス」では突然島田大介氏が監督を手掛け、賛否両論を生んだ。そして、ユニバーサル移籍後第一弾となる「Spring of Life」では、今度は田中裕介氏が監督を務めることになった。映像クリエイター集団「Caviar(キャビア)」に所属するディレクターは四名。児玉裕一、黒川静香、中村剛、そして田中裕介氏だ。そういう意味での継続性は、今回一応見て取れる。


東京ドーム公演を成功させたPerfumeが、固定観念からの脱却により自らの世界観を広めようとした一環で、*1 島田氏にPV監督を変えることでイメージの変化を狙ったが、その路線を継続させるのかと思いきや、移籍先のユニバーサルでは、Perfumeに対して「ミステリアス、未来的、ロボット的、人形のような少女、良質な振り付けとレーザービーム」という、これまでのイメージを崩さないことを主張してきた。*2 この事が重要なファクターとなったのか、PV監督はまた変わったが、目指すところは、Perfumeのパブリックイメージを、あえて究極に突き詰める事になっていった。

田中:僕の中で、テクノポップユニットPerfumeならではの表現をしてみたいと思っていました。ライブなどでもテクノロジーと上手く融合しているイメージがあると思いますが、意外とMVではそこを表現してきていないんじゃないかって思ったんです。


−関係者全員が集まった最初のスタッフ打ち合わせで、スタイリストの三田真一氏による「服、光らせましょう」という提案を受けて、田中監督はアンドロイドという世界観を楽曲「Spring of Life」に当てはめるべくストーリーを構築していった。


田中:「Spring of Life」って青春とも訳せるし、スプリングをバネとも捉えられて、跳ねるという意味合いも考えられます。春だしウジウジしてないで積極的に動いて、恋をしようっていう曲だから、よくある設定だけど、ロボットが意思を持ち始めて恋したいと思って、反逆するというストーリーです。

Perfumeのスタイリストと言えば、メジャーデビュー当初の、hideを手掛けた高橋恵美のサイバーな世界観から一転して、Perfumeに柔らかさと女性らしさを持ち込んだ内沢研氏が、長い間専属のようにPerfumeを手掛けていたが、東京ドーム公演以降は、映画「トロン」のような、蛍光色を多用したポップな未来感溢れる衣装を手掛ける三田真一氏が担当することが多くなった。LEDで光る服も、三田氏の提案。そして、そこから、「お人形さん」を脱却しようとしていたPerfumeに対して、あえてアンドロイド(ガイノイド)構想を構築していった。

−昔のゲーム機やVHSの業務用デッキで構成されている。テーマはギークの部屋。


−マザーコンピュータが並ぶラボのような部屋。ここにアンドロイドが飼われている。どことなく埃っぽさを感じられる機材は「ハイテクすぎない、ちょっと懐かしい機材」をテーマに集められ、Perfume扮するアンドロイドのクリーンで美しい様子との対比が映える。マザーコンピュータに表示される光のドットは、Perfumeのグローバルサイトのティザーで展開されていたデータだ。ハッシュタグ「#perfumeglobalsite」(注:正しくは #prfm_global_site)を付けられたツイートが点になり、その数に応じてPerfumeが形作られていくという内容だった。


田中:「僕たちのつぶやきが形になって出来た!」っていう感じが映像のストーリーともうまくはまって、つぶやきに参加したファンの人たちにも喜んでもらえるかなと。とは言え、出発点は「あ、このデータあるんだったら使わせてください」っていう単純な発想からだったんです(笑)。次のシーンも、僕の好きな、美しいものとの対比のシーンです。飼育系というかアンドロイド女子カテゴリーのMV。結構ここまでやらせてもらえるアーティストって少ないんです。そして、彼女たちは整備されて、踊りのレッスンに場面は進みます。

「飼育系」という過激なキーワードが。メイド、或いは恋人としてのアンドロイド女子(ガイノイド)信仰というジャンルは、日本のアニメやゲームなどで非常に大きな存在を占めている。近年の萌え系作品でなくても、「キューティーハニー」も「Dr.スランプ」もガイノイド作品だ。そういう意味では、非常に日本的な感性とも言えるだろう。ある意味ベタ過ぎる、SF×少女という男の永遠のテーマに対して、かつての近未来三部作以上に、本気で取り組むPerfumeの三人が美しい。

−ロボットアームはライゾマティクス所有の品。撮影はALEXAのカメラ。


−アンドロイドを繋ぐコードや基盤類は美術の一部であり機能もしているそうだ。LEDを十分な光量で光らせるための課題は電源の確保。テクニカルを担当したのはライゾマティクス。事前の打ち合わせで、田中監督は最先端なイメージとは裏腹な、彼らのど・エンジニアな魂に感動したそうだ。


田中:映らないようなデバイスにもPerfumeってロゴが刻まれていたり。発注してないんだけど、現場行ったら「レーザーでロゴ入れときました」って! しかも制作進行ギリギリの中、たった一晩で。今やってることが大好きなんだとひしひし伝わってきました。光る服を全部暗い世界でやるのは普通だから絶対に嫌だったんです。LEDの光が、明るい世界の中でも強く光る世界を撮りたかった。そうすると強いエネルギーが必要で、電池じゃ動かない。見せる電源コードで、繋がれてる感じは全然あり、付いてる方が面白い。踊る彼女たちからしてみると結構踊りづらくて嫌だったとは思うんですけど。

ここで「Rhizomatiks」。Perfumeの制作陣に、真鍋大度氏を始めとするライゾマ人脈が加わったことは、現代的な表現手段の拡張において、非常に大きなアドバンテージとなった。彼らのテクニカルアートは、内側のPerfumeファン以上に、外の世界へ対してのアピールにおいて強力な威力を持つ。
今回の作品では、以下のメンバーがクレジットされている。

  • LED lighting design/programming: 真鍋大度
  • interaction design/technical dir: RHIZOMATIKS、4nchor5 La6
  • hardware design/development: 石橋素、柳澤知明

−CDジャケットと連動した透明のボールは、アートディレクションを担当する関和亮氏による“冬眠中”というコンセプトを共有している。春に向けて飛び出す直前の、まだ少し眠っている状態だ。映像ではこの透明の殻に入っているのは“心の中”、そしてラボの外側は“現実”を表現している。

関監督は、CDジャケットでアートディレクションを担当。透明のボールは、まだ培養中であるかのような「殻」の象徴である。

−物語は、かしゆかがエスパーカードのテスト中に引き当てたハートのマークから次のステージへと動いていく。ハートのマークをきっかけに感情が宿り始めた3人の「もしかして私たち自由になれるんじゃないか?」と思った気持ちのプログラムがコードを伝って逆流し、ラブ(感情)がコンピュータを侵食していくのだ。


田中:マザーコンピュータをハッキング完了、再起動。3人は気になってたあの子に電話してデートの約束を取り付けて、お出かけ前のオシャレをして、今まで操作されていたロボットアームにネイルを塗らせる・・・と立場は逆転します。さぁデートに行こう、合コンに行こうってことになり、「これ、邪魔だから抜いていかなくちゃいけないよね」ってコードを抜いて、停止・・・勘違いだったわけですね。

あのエンディングについては、あえて語らずに観る者に解釈を委ねておいた方が面白かったかもしれないが、こういう事だそうだ。

−アンドロイドならではのほのかな哀愁が漂う物語の完成度を、更に高めているのが衣裳。グレート―ンの背景をバックに“透明”というコンセプトで光る服は、LEDの光が皮膚の下から透けて発光しているようなイメージで、服というより体の一部のような意図が感じられる。LEDは直接触れるとかなり熱いので、Perfumeのメンバーは下にシリコンのような断熱素材の服を着ているそうだ。


田中:光は、ライン(線)で見せたかったんです。映像的にはラインが並んでて、曲に合わせてバラバラっと動くのが効くと思ったんですね。でも、そのアニメーションをさせるには基盤がたくさん必要らしくて、3人の背中にいっぱい付いている装置で、一本一本のラインをそれぞれコントロールしているんです。

背中に背負うLEDコントロールデバイスだけでもかなりの重量、さらに、服の下には断熱素材。「JPN」ツアーの後半ではこの衣装とLED照明付きで「Spring of Life」が披露されたが、その時は流石にヒールは低いもので演じられた。


@daitomanabe
daitomanabe
4nchor5 Lab特製ロゴ入りデバイス for spring of life mv。ライブ用デバイスはまた違うカッティング。 そのうちどこかで色々なデバイスを紹介出来たらいいですね。 #prfm #Perfume_UM http://pic.twitter.com/CsOw8kyu link

−田中監督の現場は撮影時間が長いことで有名だが、この撮影もご多分に漏れず、なんと30時間!


田中:そもそも僕の企画って撮る量、シーン数が多いんですよね。MVってよく楽曲の構成に合わせてループで同じ映像が出てくる構成が多いんですが、僕の場合時間軸で考えるんです。繰り返し使わないから、必然的に撮らなくちゃいけないシーンがどうしても増えちゃうんですよね。ここまでやって一回しか使わない(笑)。あとはダンスシーンもPerfumeの凄いユニゾンをバシッと撮りたかったので、ダンスシーンはテイク数が多くなっています。

Perfume史上最長の時間をかけて撮影された拘りのダンスシーン。アンビリカルケーブルに吊られたままなのに躍動感溢れるダンスシーンは、フェティシズムに溢れた素晴らしい映像だ。



−撮影を振り返り、田中監督は次のように語っている。


田中:楽曲、Perfumeのダンス、色んな要素をアンドロイド企画でやり切れたのが良かったと思ってます。それと、Perfumeは本当にいい子たち。一度仕事をしたら、また今度も一緒に頑張りたいって思ってしまう魅力、求心力を持っているアーティストですね。





Spring of Life (初回限定盤)(DVD付)

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