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Aerodynamik - 航空力学

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これがユニバーサルの選択か、Perfumeが遂に「国際標準ダンスミュージック」と「日本オリジナルのガラパゴステクノポップ」の二面戦争を開始する

Perfume

二週間前くらいにCapsuleの公式サイトを見ていたら、この夏のライブ出演予定の中に「UMF KOREA」というフェスがあった。*1 この「UMF」自体は世界各地で開催されている大規模レイヴで、それの韓国版なのだが、メインクラスのアクトはSkrillex、Steve Aoki、Tiestoのようなド派手な人達だ。その中に混じって小さいながらもCapsuleの名前があることに驚いた。


シカゴハウスやデトロイトテクノ発祥の地にも拘らず、「アメリカではテクノが流行らない」というのが長年の定説で、アメリカのビルボードチャートを席巻するダンストラックは、大抵ヒップホップかR&Bだった。その流れがここ1、2年位で急激に変わり、EDM、エレクトロニック・ダンス・ミュージックが今のアメリカでは異常なブームとなっている。この「EDM」というざっくりしたジャンル名は、日本人の考えそうな「エレクトロニック・ダンス・ミュージック」像とは大分違うサウンドで、上に挙げたSkrillexのような派手派手ブロステップ、deadmau5、Swedish House Mafiaのような派手派手エレクトロハウス、Afrojack、Calvin Harrisといった派手派手ダッチトランス/プログレッシヴハウス辺りが中心となっており、David Guetta、Steve Aoki、Tiesto、Aviciiのような派手派手DJがシーンの立役者となっている。そういう、派手でセレブでパーティー、という感覚が、いかにもアメリカらしい。そして、その流れに完全に乗っかって国外に出ていこうとしているのが今のK-POPで、それこそKARA「Honey」や少女時代「Gee」のような「可愛いダンスポップス」をやっていた時代があまりに牧歌的に見えるくらい、BIGBANGやSuper Juniorらを切り込み隊長にして、アメリカの今そのままの下世話なダンストラックが量産されている。だから、チャートを席巻しているようなEDMに対して、まるでK-POPだという逆の感想が出てくるのも自然な話だろうし、そういうサウンドがポップスとして定着している韓国で、「UMF」にCapsuleが呼ばれたのもそう不自然ではない。


Calvin Harris - I'm Not Alone


LMFAO - Party Rock Anthem


※参考
SUPER JUNIOR - Opera




ここで日本を振り返ってみると、日本国内のエレクトロニックダンスミュージックシーンは、そういう流れには全く食い付いていない。視点を変えれば、取り残された、と言い換えてもいい。日本の大規模テクノ系フェスを見てみると、「WIRE」はドイツのハードテクノ、「METAMORPHOSE」はドイツ/UK/デトロイトとダンスミュージックのレジェンド、「electraglide」はUK寄りで、欧米の超メジャーシーンのEDMなど最早「音楽と見做していない」位の印象がある。敢えて探せば「GAN-BAN NIGHT」位だろうか。最初に挙げた「UMF」のように、SkrillexやSteve Aoki、Tiestoなどを招聘するダンス系フェスは想像がつかないし、もちろん「ポップグループ」としてのCapsuleが呼ばれることも同様に無い。勿論Perfumeもだ。


アメリカのメジャーシーンを席巻している、つまり世界的に大ブームであるサウンド、幅が広いので敢えて「EDM」と呼ぶが、これらはもう嫌というほど世界中に溢れていて、そういう中でPerfumeが「ガールズダンスポップユニット」として世界に出て行こうとする時に、同じ土俵では勝負にならない。だからこそ、ユニバーサルのインターナショナル・マネージング・ディレクターが「Perfumeを日本的なポップチューンのまま輸出する」と発言していたことには非常に共感していた。 *2 *3




そして、昨日のラジオでのPerfume新曲「Spending all my time」フルオンエア。最初の一秒で飛び上がるほど驚いた。これまでのPerfume、特にドメスティックなポップスを指向した「JPN」の流れとは正反対を向くサウンド。シンセのリフや構成など全体が「EDM」ベースで、歌詞に至ってはほぼ英語だ。それはもうびっくりするよ。加藤さんあなた「日本的なポップチューンのまま輸出する」って言ってたじゃん、という。まあ落ち着いて聴いてみれば「ヤスタカ節」そのままなんだけれども、音色も展開も思いっきり「EDM」に乗っけてきた。そして端から日本のメディアで勝負するつもりもないようで、「テレビでは披露しない」とまで宣言してきた。国内展開はカップリングに収録される従来路線のキリン氷結「Hurly Burly」で行うものと思われる。ユニバーサルへ移籍して二枚目にして、遂にPerfumeは「国際標準ダンスミュージック」と「日本オリジナルのガラパゴステクノポップ」で二面戦争を始めてしまったのだ。



Perfume - Spending all my time


Perfume Hurly Burly 氷結新CM&Making詰め合わせ




先日フランスでのライブを敢行したきゃりーぱみゅぱみゅは、日本にしかありえないキッチュなポップ感で、日本に対して一種のサブカルチャー幻想を持つヨーロッパなどで評価されたが、Perfumeはそういう日本のオリジナリティ路線では勝負にならない、EDMに乗っかって欧米に攻勢をかけようとしているK-POPと同じことをさせよう、と考える人達がいる。まあ普通に考えれば、世界マーケットに視点が向いている国際企業ユニバーサルと、中国韓国に積極的に投資を行い、K-POP経由で派手なダンスサウンドが流行している極東アジアPerfumeを定着させたいAmuse、双方の意見が合致した結果なのだろう。だからこそ、日本のテレビメディアで勝負することを放棄した「Spending all my time」をあえてシングルタイトル曲に置き、そして「取り残された」国である日本向けの楽曲は、カップリング扱いになった。海外視点からすれば、この手の「EDM」的なサウンドが売れている音楽の国際標準であり、一見さんに対しては非常に馴染みが良く、印象も良いのかもしれない。そして、国際標準の支配下にありながら、わざわざ極東の島国のJ-POPをネットで探し出して聴いているような従来の海外Perfumeファンからは「何故Perfumeが個性を捨ててこんなことをやる必要が?」「退屈」「9年間のファンを失う」という意見が見られるのも納得と言える。そもそもJ-POPに興味を示す極々少数派の「数寄者」である彼らが、アメリカメジャーのサウンドに拒否反応を示すのは当然だ。海外に打って出ようとするとき、重視すべきはどちらなのか?自分には分からない。


PVと、ライブでのダンス付き披露で初めて完成となるPerfumeの楽曲に対して、現時点で判断を下すことに何ら意味は無い。 PV監督に久し振りに関監督が起用されていることで、バランスを取ることが図られているのかもしれない。(PVは田中裕介監督でした)  しかし、「Spending all my time」で、Perfumeは海外へ向けて本格的に走り出してしまった。しかも、日本の保守的なテレビメディアを切り捨てるという大胆な形で。海外50ヶ国での配信、そして海外でのパッケージ発売も決定している。中台韓星と東アジアを周るツアーも発表された。完全に海外を向いた楽曲をシングルタイトル曲とする一方で、日本国内向けのポップなCMソング「Hurly Burly」「ポイント」がそのカップリングに据えられた。




二正面戦争という言葉を考える時、かつてのドイツ第三帝国におけるイギリス・フランス戦線と独ソ戦大日本帝国における中国戦線と太平洋戦線を真っ先に思い出す。また、海外には「He that hunts two hares loses both」(二兎を追う者は一兎をも得ず)、「fall between two stools」(2つの椅子の間に落ちる)、という言葉がある。そして当然、この手の言葉には対義語があって、「Kill two birds with one stone」(一石二鳥)、晋書「一挙両得」、北史「一箭双雕」(一本の矢で二羽の鷲を落とす)などという言葉も連想される。同じAmuse所属のサザン/桑田佳祐福山雅治といった稼ぎ頭が伝統芸能のように一定の個性を貫き通す中、これまで築き上げてきた自らの個性に安住することなく、海外のサウンドに迎合してまで先端を行こうとするその姿勢が、どこまで評価されるのだろうか。
そもそも、2006年頃に欧州でエレクトロシーンが大いに盛り上がろうとしていた時期に、それをいち早くJ-POPに取り入れるという革命的な行為を成し遂げたのも、Perfume中田ヤスタカだった。この一見危うい挑戦も、彼女達にとってはある意味において「原点回帰」でもあるのだ。




Perfume 「Spending all my time」 (Teaser)




Spending all my time (初回限定盤)(DVD付)

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