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Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 スマイル学園「電音部 UNDER FACE」デビューライブ@渋谷Womb

http://underface.jp



2012年末、スマイル学園「電音部 UNDER FACE」の結成と1stライブのアナウンスがYoutube公式チャンネルにアップされた。他のアイドルグループをシニカルにネタにするスマ学のこと、そのユニットの名前からしても、さくら学院の「重音部 BABYMETAL」や、11月にデビューした科学部「科学究明機構 ロヂカ?」的なキャラユニットでサブカルオタを一本釣りというネタなのだろうと思ったけれど、電子音、そしていきなりテクノ箱Wombでデビューライブ、と言われたら、テクノ好きとしては喜んで釣られに行く。アートワークの洗練されなさは、95年前後にMacintosh Performaを手に入れた人達が原宿で好んでやっていたフロッピーディスクでアートを売る「フロッケ」の稚拙なデジタルワークを思い起こさせる。イラストレーターむかいあぐる(向井拳)の毒気を考えると、インディーズが故の安っぽさではなく、直球でこのベクトルを狙っているのだろう。ジャケットを見ても、メカ腕や足が千切れていたりと、相当悪趣味感がある。


仕事にあれこれと都合をつけて平日19:00の円山町に何とか間に合わせると、ステージ上では、透過液晶パネルにDJソフトを表示しタッチ操作でミックスする派手な演出でDJが堅めのドラムンベースをプレイしていた。あの手の演出は視覚的に未来っぽいインパクトがあるのだけれど、選曲から繋ぎまで、DJソフト上でやっていることが全て観客に丸見えなので、結構恥ずかしいものがある。Wombのフロアは前後半分に仕切られ、前方はチケット代に二千円追加でステージ撮影自由というエリア割りが行われていた。クラブのフロアをエリア割するという発想自体が斬新過ぎて驚いたが、その選民エリアにはスマ学常連オタ10人ほどしか入らず、大きく無駄な空間を開けて、後方にオタ30人、その後ろに関係者30人弱がステージを眺める不思議な光景となった。


開演時間5分前になると、リズムが止まり、Wolfgang Voigtの様な分厚いモノトーン音響アンビエントに切り替わる。開演までの時間が静かに荘厳な風景を作り出していくが、その音が定刻を迎えフェードアウトしても直ぐにメンバーは登場しない。そのうちに常連オタがいつものノリで会場に観に来ていた他のスマイル学園メンバーにがっつき始めたり、それに他のオタが「無銭がっつきかよ!」と突っ込みを入れたりと、オタオタしいノリが始まってしまい、DJがクールに決めたかったであろう演出が台無しになった微笑ましい流れの後に、ようやくメンバーがステージに登場。一々こういう所まで計算されたものなのかそれとも手際の問題なのか分からない所に、スマ学運営のシニカルさを勝手に想像する。


メンバーの頭にはスチームパンクっぽいガジェット、モノトーンチェッカー柄のゴスパンク衣装に、手足には大きめのファー使い。90年代後半の頃の「サイバーパンクハンドブック」的なSF感という、何とも微妙なところを狙ったセンスはこれも本気なのかネタなのか。始まった楽曲は、上物はAutoTune使いの如何にもなテクノポップヴォーカルものだが、他ではめったに聴けないほどのガツガツとしたインダストリアル感のある四つ打ちリズムトラックが特徴的。それがWombで鳴るのだから、つまらないはずがない。


しかし、一曲パフォーマンスが終わるとメンバーはステージを降りてしまう。そしてまたDJプレイへ。Rene Walther「System Hacked」など渋めのトラックに、「UNDER FACE : 電子音楽の追求、更なる発展を目指し、その活動を通じて、人々の心を豊かにすることを 目的として設立されました」というメンバーの声がオーバーラップ。大真面目で大業なこのコピーはダンスしか頭に無い享楽的なテクノリスナーにとってはどう考えても皮肉なネタにしか聞こえず、どう展開するのかとわくわくしながらステージを見守るも、DJはそのまま特に展開も無いままプレイを続けている。10分ほど過ぎて、常連オタが完全に飽きた頃に再びメンバーが登場、一曲やってはまたDJプレイという繰り返し、という珍しい形でライブは進んでいく。DJも時間が進むにしたがって、渋めのトラックからUKハードハウス経由でどんどん下品なイケイケ度を増していくという選曲で盛り上げようとしている感はあるが、恐らく今日の所の客層にはそんなものは全くどうでもいいことだろう。



Lunde Bos - Can You Feel It

Andy Whitby and Karlston Kaos - One Middle Finger

Miss Behavin - Such A Good Feelin (Lee Haslam vs Guyver Rmx)




二曲目、1stシングルのタイトルトラック「SKYTOWER」は2008年のテクノポップブームの残り香を感じる保守的な作りだが、三曲目、シングル未収録の「Tick-Tock-Clock」は、Berghainのようながっつりゲルマンテクノなリズムトラックと展開の少なめなヴォーカルがとても面白い。衣装もRAM RIDERが好んでやっていそうなLEDチューブで光らせたりと「エレクトロポップっぽい」演出をしつつ、アッパーなEDM方向に持っていかずに、抑えたメロディーと妙にちゃんと「今のテクノ」なリズムトラックという構造は、「多幸感」や「全力」というキーワードが前提の最近のアイドルグループには無い希少価値すらある。誰がこれを好んで聴くのか不安になる位だ。Wombのライティングとカラフルなレーザーが飛び交い、そしてWomb独特のキックが天井に抜けるフロア鳴り、この曲のお披露目には最高の演出だ。一方でステージ最前ではカメラを持った常連オタがステージに張り付き撮影を続け、後方ではやはり常連オタが我慢できずにミックスを打ちだす。フロアの風景と音にオタ現場のギャップが重なり、笑えるような奇妙な空気が生まれてゆく。


四曲やってライブ終了。実際は曲間にDJが都度挿入されたので、これだけで1時間弱はあっただろうか。一曲ごとにステージからメンバーが捌けるので、ライブが終わったのか途中なのか判断しかねていると、DJ自らアンコールを煽りはじめる。色々と斬新過ぎる展開だが、再びメンバー登場、「SKYTOWER」をもう一度披露。スクリーンには「NEXT LIVE 08/23 Fri @Womb」の文字が。次は8月? 確かにWombは拘る意味がある箱だとは思うけれど、幾らなんでも間を空け過ぎだ。DDにもサブカスにも忘れられてしまうし、スマ学父兄にも馴染まれないんじゃないだろうかと勝手な心配をする。


アンコールの一曲も終わり、本当にライブ終了。DJもスマイル学園の曲をかけだす。と、ライブが終わったはずのメンバーがまたステージに上がり、「スマイル学園」に合わせて振りを踊りだす。勿論常連オタも一気にテンションが上がる。結果としてこのシーンが一番盛り上がったのはまあ当然といえば当然か。

  1. YUTORI
  2. 歯磨きガム
  3. SKYTOWER
  4. Tick-Tock-Clock
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  5. SKYTOWER

ライブ後にステージ演出担当スタッフと少し話を。「エンジニアがトラックを仕上げたら低音が五倍になって返ってきた」というテクノ好きする話があったが、今作のエンジニアの今本修氏はMondo Grosso大沢伸一周辺、Monday満ちるや、RavexなどのAvex仕事などを手掛けており、アイドルポップスにしては随分フロア物に近い仕上げをしたのだろう。欲を言えば、折角Wombをデビューの場に選んだのだから、ライブではDJのかけるトラックに負けないレベルでキックを強めに鳴らして欲しかった。



「電音部」を名乗りながらも、明らかに狙って外したアクの強いデザインや演出に拘り、スマ学内でも人気のある可愛いメンバーを素材にしてやりたい放題なプロジェクトで、彼女達の良さを引き出す事もなく、ずれた記号(特にカラコン)で固め上げ、そして「ほらサブカスはこういう変わったものが面白いんだろ」と突きつけられているような無邪気過ぎる悪意すら感じるが、面白ければ何でもいいと開き直るのもまたサブカスの仕事だろう、などと意味の分からない事を考えながら帰宅。


「SF×少女」というテーゼは日本人が古来からDNAレベルで好むスタイルであり、そんな事は一々作品名など挙げなくても衆知の話だと思うが、そのSF演出が彼女達の個性をこれまでとは別のベクトルで引き出せていたのかと言われれば、まだ電音部はその段階には無い。逆説的に「重音部」や「バトン部」の作り込みと所属メンバーの魅力的な個性の引き出し方のレベルが桁違いだったことを証明することにもなった。今後電音部をどういう形で作り込んで行くのか、かなり先だけれど八月のライブには行って確かめてみたい。



スマイル学園 電音部 UNDERFACE「Tick-Tock-Clock」