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Aerodynamik - 航空力学

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Perfumeワールドツアー第二弾は欧州、シュトックハウゼンによる電子音楽誕生の地、ケルンに立つ


Perfumeの「WORLD TOUR 2nd」としてのケルン/ロンドン/パリ欧州ツアーと、海外大規模ダンスフェス「UMF」の韓国開催版への出演が発表になった。アイドルやヴィジュアル系など欧州でも注目されやすい日本のポップカルチャーのライブはフランス「JAPAN EXPO」などを軸に色々行われているのだけれど、今回のPerfumeは、単独ライブツアーでの訪欧となる。

Perfume WORLD TOUR 2nd

http://www.perfume-web.jp/cam/WORLD/
http://www.perfume-web.jp/news/individual.php?id=41
http://natalie.mu/music/news/88577



ケルン
GLORIA http://www.gloria-theater.com/neu/termin_details.php?id=1717
ロンドン
O2 Academy Islington http://www.o2academyislington.co.uk/event/53179/perfume-tickets
O2 Shepherd's Bush Empire http://www.o2shepherdsbushempire.co.uk/event/53859/perfume-tickets
パリ
Le Bataclan http://www.bataclan.fr/events.php?id=648


90年代前半のレイヴムーブメント/セカンド・サマー・オブ・ラヴとテクノの隆盛、そこから遡ってテクノの直接的な「ダンスミュージック」としてのルーツである80年代後半アシッドハウスや、電子音楽とパンクの結節としての80年前後のノイエ・ドイチェ・ヴェレ、そしてテクノの源流たる70年代のジャーマン・プログレクラウトロック)と、ベタベタに電子音楽漬けの人生を送ってきた人間にとっては、ダンスカルチャーの中心地であるロンドン公演と、そして言わずもがなのテクノ/電子音楽の中心地であるドイツでの公演が行われるというだけで感無量というか、思いが溢れてしまう。エンターテイメントの王国はアメリカだというのはまあ誰が考えても譲りようがないのだけれど、ディスコとR&Bとファンクでダンスするアメリカ圏とは全く異なる、欧州での電子音楽の歴史に、ごくごく小さな、ほんの僅かな形でもPerfumeが関わったという事は、それだけでも、自分の電子音楽リスナーとしての人生において素敵な思い出になるだろうなあという。PIXARクラスのハリウッド映画に楽曲が採用されるよりも、ケルンで1000人/ロンドンで2000人クラスのライブをやるという事の方がよほど自分にとっては大きな話だ。


ロンドンとダンスミュージックカルチャーの関係を語るのも今更すぎるので省くとして、イギリスとダンスならマンチェスターも重要拠点だけれど、くたびれた工業都市でロンドンから2時間半の所(距離感的には東京−名古屋)でいきなりやることも無いし、人も来ないだろう。じゃあドイツは何故ベルリンじゃないのか、人は来るのか、とりあえず人の多い所でやろうよ、と思うけれど、ドイツ第四の都市ケルンは欧州のハブ空港の一つフランクフルトやデュッセルドルフから移動しやすいと言えなくもない。


ドイツはその地方分権小邦分立という歴史的経緯から、日本やイギリスの様な首都一極集中型ではなく、人口も分散していて、また地方都市独自の文化色が強い。デュッセルドルフは如何にも工業都市らしく、エレクトリックで単調なリズム反復を主とするKRAFTWERKNEU!を生み出した。東ドイツの中に西ドイツの飛び地として孤立していたベルリンでは、アメリカにおけるアフロミュージックが「母なる土地への回帰」として宇宙を目指した、ジョージ・クリントンのような「アフロ・フューチャリズム」と同様に、Tangerine DreamAsh Ra TempelManuel Gottsching/Klaus Schulzeといった、ドラッグを多用してトランスミュージックで宇宙を目指す「コスミッシェ・ムジーク」を生む。ワーグナーマーラーを生んだ宗教都市バイエルン王国ミュンヘンではAmon DuulやPopol Vuhのような神秘的な瞑想やコミューン幻想色が強い。そしてケルンといえばCANだろう。地理的にもデュッセルドルフに近いためか、トランス感抜きのミニマル反復の快楽性がデュッセルドルフ陣に近いと言えば近い。まあ全部、かつてはハードなプログレ誌だった「MARQUEE」の受け売りだけれど。


で、ケルンの話をすると、ここは電子音楽が生まれた場所だ。WDR(西ドイツ放送)内に1951年に作られたケルン電子音楽スタジオでは音楽制作の実験や音響機器の開発が行われ、スタジオの二代目所長カールハインツ・シュトックハウゼンが1953年に制作した「習作I」が、電子音のみを使用し、電子機器によってのみ演奏された、初めての電子音楽とされている。NHKもケルンに続いて1955年に「電子音楽スタジオ」を作り、同年に制作された黛敏郎素数の比系列による正弦波の音楽」が、日本初の電子音楽となる。そしてやはり同年、RCA放送局とコロンビア・プリンストン大学によって開発された世界初のシンセサイザーRCA Electronic Music Synthesizer Mark I」が誕生する。この当時は、電子音楽は放送局によって作られるものだった。そもそも電子音響機器なんて物は放送局か大学、研究所にしかなかった時代。ちなみに、YAMAHAのエレクトーン発売はほんの数年後の1959年、モーグシンセサイザーは1965年。


Perfumeの欧州での最初のライブがそういう土地であるのも、なんというか運命的なものを勝手に抱いてしまうのだけれど、「Perfume」=「香水」≒「オーデコロン」=「ケルンの水」というダジャレなんじゃないかという気もしなくはない。


Karlheinz Stockhausen - Elektronische Musik Studie I 習作I (1953)

Karlheinz Stockhausen - Elektronische Musik Studie II 習作II (1954)




フランスと電子音楽の歴史といえば、1948年Pierre Schaeffer「エチュード」シリーズから始まる、Pierre Henryとのフランス国立放送局でのミュージック・コンクレート研究。セカンド・サマー・オブ・ラヴ以降のフランスは、ロンドンのフランス大使館シェフがハシエンダデビューという面白エピソードを持つLaurent Garnier/F-Communications以外にはこれと言って目立つ物も無く、ダンス後進国呼ばわりだったが、フィルターハウスを世界的にヒットさせたDaft Punkと、Kitsuneのエレクトロにおける役割は語ることも不要だろう。どちらかといえば、日本のポップカルチャーにある程度理解のあるフランスでのライブということよりも、あの伝統と伝説に彩られた「Le Bataclan」でPerfumeがライブをするという事が衝撃的だ。


Pierre Schaeffer - etude aux chemins de fer 鉄道のエチュード (1948)



東アジアを回った「WORLD TOUR 1st」では、同じ東アジア文化圏内でそれなりに日本文化への尊重や理解的なものも伺えたけれども、日本文化に興味が無い欧州人は日本人を勤勉な猿か何かだと思ってる程度の認識で、ダンスポップグループなどJ-POPシーンなどとは全く比較にならないほどありふれた環境でもある。そういうところでどこまでPerfumeが通用するだろうか。先行して国外でのライブを熱心に回って歓迎を受けているきゃりーぱみゅぱみゅを見ても分かるように、極東の島国から出てくる変わったポップカルチャーは、欧米の文化圏からは遠く離れたところにある異世界の物として、一種の幻想を持って迎えられている。それは、日本人が、あまり文化的交流の無い北欧や東欧のデザインセンスに対して極めて大きいカルチャー幻想をもって接しているのと同じようなものだ。中田ヤスタカとのユニット「COLTEMONIKHA」でPerfumeファンにもお馴染みの酒井景都のブランド「COLKINIKHA」は、「ロシアとスウェーデンの間にある架空の共産国の服」という、まさにベタすぎる程の辺境ポップカルチャー幻想がコンセプトになっている。勿論Perfumeは初めから海外展開を前提に活動をしているわけではなく、「日本でやって面白いものしか作れない」というヤスタカ、「海外で待ってくれている人がいるから海外に行く」という西脇さん達のスタンスが先にある。Perfumeが欧州で歓迎されるとすれば、きゃりーぱみゅぱみゅ同様、お互いの辺境ポップカルチャー幻想に応えることが一つの鍵なのだろう。ここ数年で強烈にアメリカ市場に勝負をかけたK-POPの人気ユニット達はどこも相当な苦戦を強いられ、撤退を始める事務所も出てきたが、ご存じの通り、昨年爆発的に受けたのは、モデル体型のアイドルによるダンスポップグループではなく、欧米人がイメージする「KOREA」の象徴、金正日的な腹の出た謎のおっさんによる面白ダンスミュージックだった。Perfumeも、ガツガツのテクノなど意識する必要はない、日本の中でも誰も追い付けないほどに極まってしまったその独自性を、そのまま持っていけばいい。巷にあふれるEDMに飽き飽きして、わざわざ極東の島国のJ-POPをネットで探し出して聴いているような海外Perfumeファンの事だ、きっと彼らもそれを待っている。




ULTRA KOREA 2013 (ULTRA MUSIC FESTIVAL)

http://www.perfume-web.jp/news/individual.php?id=35
http://www.umfkorea.com/
http://natalie.mu/music/news/87967



ブレイク前のPerfumeを見て、彼女達が色んなダンスフェスに出られたらとても面白いだろうと考えたりもしたものだが、あくまでJ-POPのフィールドでダンスポップを先駆することが彼女達の目指す方向となり、それが広く大衆に受けいれらた現在では、ダンスフェスとは距離をとって活動しているのだろうと思っていた。逆に、方向性を絞る事でアイデンティティを確保する日本のダンスフェスの側でも、彼女達を呼ぶことは無いだろう。ダンスフェスでも老舗のWIREですら横浜アリーナなのだから、動員の適正値というものもある。規模の大きいロキノン系フェスで相応のリスナーに応えることが今のPerfumeの活動の軸でもあり、それらのフェスも当然のように相当の動員を期待しているのだろう。


そんな中で突然の報、UMF韓国版、Armin Vun Buuren/AVICII/AFROJACK/KASKADEといったトランスやEDM系ダンスアクトに、CarlCox、なぜかボーイ・ジョージ、日本からは大沢伸一/☆Taku Takahashiといった面子にPerfumeが混じって出演することになった。ダンスフェスにダンスアクトでPerfumeが出演することに対しては、もはやポップアイコンであるPerfumeに対して国内の場ではそういう評価と扱いをする場が無かった、という複雑な気持ちもあり、それが隣国であることに嫉妬も覚えなくもない。しかし韓国版UMFでは、Perfumeが出る一方で、韓国のダンスポップアクト、例えば少女時代や2NE1、SUPER JUNIORのような人達は一切呼ばれていないとなると、やはりPerfumeも韓国ローカルから見た外タレ的扱いになるのだろうか。いやあ、国内ではこういうダンスアクトとしての方向性と長い間決別してきただけに、今は色々と複雑な気持ちで一杯だけれど、まあ一言でいうと悔しいなあ。ダンスフロアでPerfumeの楽曲を聴きたいという動機で始まったのが2008年の「Perfume Night」だった。そういう需要はあったのだ。Perfumeも、「チョコレイト・ディスコ」当時はクラブミュージック専門誌「remix」に広告を載せて、リミックスを収録したアナログ7インチを配って、果敢にクラブミュージックリスナー層に切り込んでいたのになあ…。


本家マイアミでのUMFは、前回実績で30万人を動員する巨大フェスで、メインステージではSwedish House Mafia/Afrojack/Deadmau5/Skrillex/David Guetta/Steve Aoki/Tiesto/Calvin HarrisといったEDM的な派手なメジャー系面子、サブステージでFatboy SlimCarl CoxJohn DigweedJosh Winkなどの超大箱DJから、Richie Hawtin/Dubfire/Green VelvetSteve Bug/Loco Dice/Flying LotusAdam BeyerJoris Voornなどジャンル関係なくダンスアクトを詰め込んだ上に、KraftwerkNew Orderといったレジェンド級や、Neon Indianらchillwaveまで参加して、これ以上ない規模でのめちゃめちゃなダンスミュージック祭りになっている。国内で規模を比較すると、昨年のフジロック3日間延べ動員が14万人。LOVE PARADEを除いたとしても、フジロックの二倍の動員のダンスフェスはなかなか想像しがたい。
韓国版UMFは、流石に本家比では規模は小さいが、韓国受けしそうな派手で下世話なアクトを中心に揃えて、日本のアクトも出演するなどローカライズされ、昨年のcapsuleも出演した「UMF KOREA 2012」での動員は8万人。SUMMER SONIC東京会場2日間延べ動員が8万人と、丁度同規模になる。参考までに、国内ダンスフェスの動員は、ハシエンダ大磯フェスティバルで3万人、SONICMANIAが2万人、MetamorphoseBIG BEACH FESTIVALで2万人、WOMB ADVENTURE/WIREで1万人程度。でかいフェスなら面白い、なんてことは全くないのでただ比較しても意味はないけれど、ダンスアクトだけで8万人を動員するのは驚異的だ。日本ではダンスフェスにここまでの人気は無い。ちなみに韓国ではGlobalGatheringも開催されており、日本よりもこの手の巨大フェスには随分と積極的。
勿論これらの国内ダンスフェスにPerfumeが相応しいかと言われたら、客の立場で否と言うし、今の日本にはPerfumeをダンスアクトとして扱える許容量のあるダンスフェスも無い。今なら寧ろPerfumeがキュレーターでアイドルフェスをやってほしい位だ。Perfumeがヘッドライナーなら誰も文句はないだろう。それにしても悔しいな…。「なぜか教室がダンスフロアに」を当時のダンスフロアで聴きたかったなあ。




Ohm + (Bonus Dvd)

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Music for a Retro Future

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エレクトロ・ショック

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Bataclan 72 (通常版)

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ライヴ・オ・バタクラン‘73(LIVE IN PARIS-BATACLAN 1973)(直輸入盤・帯・ライナー付き)

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