Aerodynamik - 航空力学

はてなダイアリーからはてなブログへ移行中

第9回 アイドル楽曲大賞2020 に投票するよ

http://www.esrp2.jp/ima/2020/

f:id:aerodynamik:20201212021321p:plain



世界からダンスフロアが消えるなんて誰が想像しただろうか。あらゆる実演系エンターテイメントがその価値をひっくり返された2020年。クラブ/ライブハウスの音響で音楽を聴く、それは非日常だからこそ美しかったはずなのに、いつの間にか週末ライブハウスに通い、特に行きたいライブがなければクラブに行くのが日常になってしまっていた。無くなって初めてその事に気付き、配信ライブならではの楽しみ方を見出せず、飢餓から脱したくてガラガラの映画館で音楽ドキュメンタリー映画を観たり、名曲喫茶に通ったりもした。もうすぐこの一年も終わる、自分はどう音楽と向き合うべきか、そろそろ腹を据えて決めなければなるまい。

Perfumeドームツアー千穐楽に向かうその足で直前の公演中止を聞いて唖然としたり、「本当に日本で尊敬されている優れた歌手」aka 鼻息荒いシマウマ の娘さんが自らの手で虹を掴むというアイドルラップリスナーとしては相当にテンションの上がるタイミングでのあの報道に唖然としたり。テレ朝「関ジャム」とEテレ「シュガー&シュガー」は今年の生き甲斐でもあった。音楽の現場から遠ざかっていく代わりに、音楽が妙に報道バラエティに侵食されていったり浸食したりをリビングで眺める一年であったかも知れない。




 

メジャーアイドル楽曲部門 (5曲、持ち点10pts、上限3pts、下限0.5pts)


鈴木愛理のグルーヴを引き出すOfficial髭男dism藤原聡 提供曲一択と思っていたら、先行配信で去年のノミネート扱いでした。

鈴木愛理『Break it down』(Dance Shot Ver.)
www.youtube.com




1. lyrical school / HOMETENOBIRU 『OK!!!!!』 2020.04.22 CONNECTONE/Victor Entertainment 3.0pts
www.youtube.com
valknee作詞。巧い/プロップスがある/強い/悪い/稼ぐ/モテる/盛り上げる、などセルフボーストバリエーションは多々あれど、マチズモの塊であるヒップホップ界においてフィメールラッパーが泥臭く戦ってきた過去を知るがゆえに、制作/プロデュース陣のヒップホップに対するリスペクトが崇ければ崇いほど、彼らがアイドルラッパーに「可愛い」だけで押し切るセルフボースト曲を書くのは難しかったはずだ。Maltineの現場で遊んで育ったデジタルネイティブ世代がiPhone片手に歴史を飛び越えていく、これは今のフィメールラッパーにしか書けない革命的な曲。リアルとフェイクの物差しから逃れるために、敢えての「B-GIRLじゃなくてI-D-O-L」宣言が必要だった時代はもう終わった。「かわいいからイイ あたし偉い」「かわいいカナリ あたし偉い」をminanとhimeがキックしてるのがとてもよい、「早起きしておしゃれして出かけるフラッ」の「フラッ」の語感も最高。



2. イヤホンズ / 記憶 『Theory of evolution』 2020.07.22 EVIL LINE RECORDS/KING RECORDS 2.5pts
www.youtube.com
□□□三浦康嗣提供。高野麻里佳高橋李依長久友紀による声優ユニット。アルバム冒頭はナタリーのアルバムリリースインタビューの会話をカットアップした「記録」、そのまま街の背景音をクリップしたビートとポエトリーリーディング/ラップによる「記憶」へ繋がる。声優の声を歌を通して「歌」でなく「声」そのものとして最大限に引き出す、RYUTist「ALIVE」と対を成すカラフルな傑作。



3. 乃木坂46 / I see... 「しあわせの保護色」 2020.03.25 N46Div./Sony Music Records 2.0pts
www.youtube.com
賀喜遥香センター、乃木坂4期生曲。林田健司清水信之小西貴雄小森田実/CHOKKAKUらが作り上げたmid90sのSMAPディスコクラシック達を多分に意識した楽曲は、嵐仕事が豊富なyouth case作曲、佐々木博史編曲。まだ音楽業界がバブル景気の残り香を纏っていた頃のあの浮かれた空気、浮かれたステップ。都知事による外出自粛要請記者会見と同日に公開され、忘れてかけていたあの賑やかで華やかなカラ元気を緊急事態宣言下に振りまいた。アイドルにしかできないことは沢山ある。



4. 福原遥 / 透明クリア 「透明クリア」 2020.03.11 Sony Music Associated Records (SMAR) 1.5pts
www.youtube.com
星野源「POP VIRUS」収録「サピエンス」にエグいベースラインを提供したSnail's House(Ujico*)作曲編曲。中田ヤスタカを飛び越えて世界に飛び出すデジタルネイティブ世代の「Kawaii Future Bass」と透明感ある女性とのコラボレーションの好例。



5. CY8ER / トーキョー・イノベーター 『東京』2020.01.22 Victor Entertainment 1.0pts

KOTONOHOUSE提供。全てを叶えてくれるはずだったインターネットは、いつしかSF作家の予言通りに市民自身による徹底した相互監視の目に形を変えた。現実とSNSに境目がなくなった息苦しい世界の中で、Soundcloudは新しい宗教を生み、ヤマハの歌姫は根拠も自信も裏付けも無いまま自由と希望と解放を能天気な言葉で高らかに謳う。ダンスカルチャーのオプティミズムは場を変え形を変えて継承されてゆく。「明日は明日の風が吹く」のバランス感覚の秀逸さ。

トーキョー・イノベーター 歌を歌おうよ
ガイドメロディなんてきにしないでさあ
トーキョー・イノベーター 未来切り拓くよ
明日は明日の風が吹く


 

次点

順不同


6. 私立恵比寿中学 / I'll be here 『playlist』 2019.12.18 SME Records
www.youtube.com
29歳のムードを漂わせるiri+ESME MORI曲。Kan SanoによるRYUTist「時間だよ」と共に、今年ダンスフロアを失ったクラブカルチャーがそのセクシーさを取り戻すための手掛かりのひとつ。



7. 相谷レイナ / TV STAR 「TV STAR」 2020.11.04 よしもとミュージック

ex. ミライスカート/ex. 我儘ラキア。マッドチェスター。今年秋からのSam is Ohm/PellyColoとのレイドバックな連作が全て良い。



8. 虹のコンキスタドール / Fancy Friday Night 「サマーとはキミと私なりっ!!」 2020.09.16 KING RECORDS

「ぺのれり」こと三好啓太、プリキュアでんぱ組声優アイドルを得意とするアキシブ職人。情報量の多い音楽をこじゃれたコードにまとめる手法がテンプレ化したその次にあるものとは。



9. 森保まどか / No Diggity!! 『私の中の私』 2020.01.29 UNIVERSAL MUSIC

発表から5年、ようやくリリースされたHKT48 1期生によるピアノソロアルバム。クラシックに寄るかポップスに寄るか、「松任谷正隆武部聡志鳥山雄司本間昭光がカバーとオリジナル1曲づつを提供する豪華なイージーリスニングアルバム」ができてしまってもおかしくないところに光る、Arto Lindsayも出していた坂本教授のgütレーベルの香りがする、大比良瑞希を手掛ける伊藤修平の一曲。



10. 田村芽実 / わたしたちの冤罪無花果』 2020.04.08 Victor Entertainment

松井五郎作詞、田上陽一作曲編曲。貫禄が出てきたねえ凄い女優さんになるのだろう。



11. sora tob sakana / untie 『deep blue』 2020.08.05 NBCUniversal Entertainment Japan
www.youtube.com
照井順政作詞作曲。こんなにも美しい最期。




インディーズ/地方アイドル楽曲部門(5曲、持ち点10pts、上限3pts、下限0.5pts)


ラストライブを無観客で行い「終幕」したカメトレ「スバラ」「バラバラ」でワンツーフィニッシュの予定でしたが、音源のミックスバランスにめちゃめちゃクセが有り過ぎるのでライブで観たあの光景と共に心の中にしまっておきます。




1. ピューパ!! / Ajisai 「Ajisai」 2020.07.26 Roula 3.0pts
www.youtube.com
喪失と光。スーパーカー「HIGHVISION」リリース後に書かれたけれど「Answer」と毛色が違うのでお蔵入りになったまま忘れ去られていたナカコーのデモテープ音源、くらいに過剰なロマンティシズム。



2. ばってん少女隊 / OiSa 『ふぁん』 2020.10.28 BATTEN Records 2.5pts
www.youtube.com
今年JVCKENWOOD Victorとの契約が切れたスタダ九州ユニット、自主レーベルからの起死回生の一手はファンク/アヴァンギャルド色強め。ASPARAGUS渡邊忍提供。Mark bellのようなトランシーさを備えたミニマルエクスペリメンタルとトリッキーな言葉の乱れ打ちの強烈な中毒性、「トリック」を想起させるオカルティックで美しいMVも隙が無い。

ほらね真っ当に生きてしまうから
満身創痍だ満身創痍だ
ほらね雑踏に消えてしまうから
半信半疑だ半信半疑だ


3. SAKA-SAMA / わたしたちの地図 「空耳かもしれない」 2019.12.07 TRASH-UP!! RECORDS 2.0pts
www.youtube.com
佐々木喫茶提供。ここねんの不安定さがもたらす胸を締め付けられるほどの切なさと喫茶曲の相性の良さ。「虹の向こうにかすかな理想たち!」、「!」の勇敢さたるや。



4. MIC RAW RUGA(laboratory) / SEEYOU(Let's Dance) 「dog kawaii」 2020.02.19 VIDEOTHINK 1.0pts
www.youtube.com
箱代の安い休日の昼前に始まって昼下りには終わってしまうインディーズの対バンライブの後、気怠いオタク同士で下北沢の安いカレーを食べながらEVISBEATS「ゆれる」だったなあと頷きあう、心象風景とバース2が終わってからのMIC3 COCOによる魔法の時間、「分かってる分かってる私全部分かってる」、日常/世間との葛藤ループ、それでもちゃんと呼吸をして、天気を感じて、朝まで踊って、そうやって人は生きていく。



5. RYUTist / ALIVE 『ファルセット』 2020.07.14 PENGUIN DISC 1.5pts
www.youtube.com
Celebrate BrooklynフェスでのtortoiseTNT」再現ライブでブルックリン在住の蓮沼執太に再会したPENGUIN DISCレーベルオーナー南波一海氏が思い付きで楽曲提供を依頼、というかつてのHEADZレーベルメイトいい話まで含めて素敵な曲。失われた春を丁寧に色づけていくフィルの一音一音が愛おしい。いつかこの曲をホールで。



次点

順不同


6. 開歌-かいか- / ポプラ 『花歌-はなうた-』 2020.06.16 T-Palette Records
www.youtube.com
大好物のコンパクトなポップソング


7. WAY WAVE / Looking For Woman 『SOUL PUNCH』 2019.12.18 P-VINE RECORDS
www.youtube.com
笑ってしまうほどパワフルで最高の女たち



8. ULALA / Life 「Life」 2020.10.29 LOCAL SQUAD/LSUP Entertainmen
www.youtube.com
3B juniorが残した名曲 川上桃子権藤葵「Rainy Day」を思わせるナイスグルーヴ



9. なにぬねるん? / スカイワーワー 「スカイワーワー」 2020.08.31 YOU’LL RECORDS
www.youtube.com
1985年以来32年ぶりのレジデンツ来日公演を見逃してしまった



10. 謎ファイルとやま観光 / マジカル・ミラクル・トキメキ・ナイト 「マジカル・ミステリー・ファイル・トヤマ・ツアー」 2020.07.05 NS ENTERTAINMENT
www.youtube.com
よくわからないのですが富山で何が起こっているんですか



11. るなっち☆ほし / ルナチュチュ 「ルナチュチュ EP」 2020.09.22 やせいのながれぼしレコォズ
www.youtube.com
陽(神様クラブ)作詞、神様クラブ作曲編曲、超越してしまった人たちの可愛い音楽。「明日の天気 晴れにしとくね」が猛烈にかわいい



12. 木下百花 / ダンスナンバー 「ダンスナンバー」 2020.02.05 441recordings
www.youtube.com
木下百花作詞作曲、宮野弦土編曲



13. ukka / 恋、いちばんめ 「恋、いちばんめ」 2020.06.24 STARDUST PROMOTION
www.youtube.com
ヤマモトショウ作曲、宮野弦士編曲、「月9」に引き続きのmid90s SMAP歌謡



14. CUBΣLIC / KISS KISS CUBΣLIC 「KISS KISS CUBΣLIC / TOKYO PLANET ΣARTH」 2020.09.16 harvest records
www.youtube.com
演者がほぼ全員が善良なオタクであるがゆえに2013年前後のEDMバブルにも乗れなかった善きエレポップ歌謡シーンの正統後継アイドル。猫宮ねこ さんは日本アンダーグラウンドサイケデリックの帝王Captain Trip Records/MARBLE SHEEP松谷健氏の娘さん。



15. SARI / sari no shitaku 「sari no shitaku」 2020.05.01
www.youtube.com
ex. NECRONOMIDOL瑳里 作詞。明日の叙景Kei Toriki作曲。



16. RAY / ネモフィラ 『Pink』 2020.05.23 DISTORTED RECORDS

美しすぎるProphetシューゲイザー



17. 広瀬愛菜 / Travel In My Mind 「17」 2020.11.03 なりすレコード

広瀬愛菜作詞、関美彦作曲。こういう音楽、こういう歌をアイドルシーンに形として残していく文化事業



18. 回せ!グルーヴ開発部 / #FFFFFF 「#FFFFFF」 2020.03.1

怠田ユニ作詞、Alkome作曲。この16進表記で「ホワイト」と読ませる感傷的な歌詞と早すぎるBPM



19. 桐生ちあり / Light 「白」 2020.08.10

ex. SUMMER ROCKET / ex. D'yerMak'er?
桐生ちあり作詞、that's all folks作編曲、デトロイトビートダウンのようにもったりしつつ跳ね回るキックとベース、もったりと分厚いシンセと声の絡みのよさ、美味しい讃岐うどん



20. jubilee jubilee / 放課後のCANDY 「僕の地図」 2020.02.05 AZTiC Music

jubilee jubileeのクセディスコハウスは今回も松江BOUZUMANS/he MysterycirclesのSIJI提供。ほぼ全曲 siraph蓮尾理之編曲、東京事変刄田綴色も参加のアルバムとしてまとめて聴くのが楽しみ。




アルバム部門 (3枚、持ち点6pts、上限5pts、下限0.5pts)

1. なにぬねるん? 『Short Short Songs 1』 2020.08.31 YOU’LL RECORD 3.0pts

TikTokでバズらせることを目的として作られた(のにまだTikTokに投稿されていない)一曲20秒前後、全部で2分半のアイデアの欠片。



2. RYUTist 『ファルセット』 2020.07.14 PENGUIN DISC 2.0pts

「青空シグナル」から早2年、積み上げてきた信念と実践、水がきれいな土地で育ったアイドルの豊穣



3. 963 『tick tock』 2020.08.28 LAUGHFACE INC. 1.0pts

10曲中7曲がKenichiro Nishiharaでかつほぼ全編ユニゾンだったこともあり同じような曲調に偏っていた前作から、一気に鮮やかに、霞が晴れたような、それでいて夢を見ているような。諭吉佳作/menとkabanaguによる「lumen」のフロアを這うキックとベースラインが最高、そしてこのアルバムは963にとって「コントラストの高い解体されていく風景」そのもの



次点

順不同



After Five / O'CHAWANZ

O'CHAWANZ 『Mellow Madness』 2020.05.27 Socond Factory
どれか一曲、という感じではなくて、以前からピアノジャズヒップホップなROMANTIC PRODUCTIONがわざわざ「Lo-fi Hip Hop」を標榜してのアルバム制作、全編メンバー作詞による日常系ラップにおける圧倒的「リアル」さと緩さ加減、アルバム制作のためのクラウドファンディングから始まって、ストレッチゴールでMV制作、コラボアルバムリリース、そしてワンマンライブ開催決定という一連の流れ、それに活動困難な状況においても積極的なDIYライブ配信を展開するフットワークの軽妙さ、一年を通してとても楽しませていただきました。


RAY 『Pink』 2020.05.23 DISTORTED RECORDS
FAREWELL, MY L.u.v 『GOLD』 2020.10.28 Surf Club
ばってん少女隊 『ふぁん』 2020.10.28 BATTEN Records




推し箱部門

レギュレーションが「いわゆるMVP(今年特に活躍したグループ)ではなく、オールタイム推し箱」なのでPerfumeです。(コピペ)




MV部門

そんな部門ないですが。番組に出演した女優さんによる ふかわりょう曲のダンス動画が公開されているのだけれど、アイドルの人って凄いなあと改めて思いました。


ROCKETMAN aka.ふかわりょう / あざとい夜はもう来ない? feat.ジュリ

「あざとくて何が悪いの?」YouTube限定オリジナルダンス!!〜乃木坂46 山下美月編〜
www.youtube.com

「あざとくて何が悪いの?」YouTube限定オリジナルダンス!!〜日向坂46 佐々木美玲編〜
www.youtube.com

「あざとくて何が悪いの?」YouTube限定!!ダンス完全版〜今泉佑唯島崎遥香&鈴木仁編〜
www.youtube.com




エントリー外


1. 이달의 소녀 (LOONA) / Why Not?
www.youtube.com
引き続きイ・スマンprod。今年最高の中毒曲。



2. 유키카 YUKIKA / 서울여자 (SOUL LADY)
www.youtube.com
こちらはほぼMonoTree。韓国でシティポップドリームを体現した寺本來可、11/30をもって契約終了とのこと。