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SF作家ハーラン・エリスン、AOLと和解
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0406/11/news022.html



ハーラン・エリスンの代表作に「世界の中心で愛を叫んだけもの」(ISBN:4150103305)がある。
前書きで作者本人が言い訳しているように、SFの中でもかなりの実験的な作品だ。


タイトルから連想されるのは当然売れに売れた「世界の中心で、愛をさけぶ」(片山恭一 ISBN:4093860726)。デグレしたみたいなタイトルは著者がエリスンから取ったんだろうと思っていた。



しかしこれがどうやら、著者の意向ではなく、編集者が「売れるようなかっこいいタイトルを」と、無理やりつけたものらしい。


おまけに、この編集者はエリスンのことを知らず、エヴァンゲリオンの最終話(これもかなり実験的な映像だ)で庵野監督がエリスンから引用したタイトル「世界の中心でアイを叫んだけもの」から取ったということだ。


なんだか気の抜けるような話だ。どっちから引用したって別にいいんだけどね。売るためだけだったら愛が無いよね、と。


まあ商業的には大成功したし、それだけ売れたということは、購入者の殆どはSFファンでもエヴァヲタでもない、どちらの引用元も知らないでいる普通の人なのだろうからどうでもいいが。
ただ、SFもエヴァも好きな僕にしてみれば、この劣化コピーみたいなタイトルはなんだかひどく残念な気がした。



この「世界の中心で、愛をさけぶ」が、たまに引っ張り出しては読み返している「ノルウェイの森」(内容よりも文体が面白い)よりも売れたと聞いて、調べてみたら、Amazonでは読者のレビューが590件も登録されていて、またそれが見事に一点または満点という極端な評価がほとんど。
殆どは「大して泣けなかった」という普通人のごく普通な感想で、残りは「稚拙で読むに値しない」「宣伝手法の勝利」といったものだ。
ごくたまに「感動しました。泣けました。」という「善良」な読者もいた。そんな人には、「ほとんど本を読んだ事が無いんだろう」という言葉が投げかけられていたが。


「泣ける」と帯に書いた柴崎コウが、映画にでちゃってるあたり、始めからビジネス的なものが動いていたのは未読でも分かることだが、レビューの中に、

・中学生でもわかる内容(小学校高学年だと読者のプライドが許さないのでダメ)
・タイアップでキャラクターの立った旬な人間を起用すること
・美しくかつ無内容な装丁
・すぐ読めるボリューム、でかい活字

というのがあって、思わず吹き出してしまった。