Aerodynamik - 航空力学

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通勤の間に少しずつ読み進めていた「終戦のローレライ」、やっと読了。
id:miercolesさんに感謝。


福井晴敏作品はこれが初めて。
読み始めは、ストーリーが非常に面白そうなのに、すぐに個々の登場人物の背景描写に移ってしまい、またそれが長くしつこい。
「いい所なのに、早く話を進めてくれ・・」と何度思ったことか。
しかし、個人のバックグラウンドがあってこそ、一見ほとんどが「トンデモ」的でわざとらしいほど訳ありなキャラクター設定が真実味を帯びてくる。
結果、登場人物の全員に思い入れを抱かせるほどリアルな人間ドラマに昇華。
散々焦らされた後に、「おぉ!」と来る、その過程がマゾ的に快感だった。
続けて「亡国のイージス」も読もう。


「責任を取らない大人たち、未来に希望をもてない子供達」。
90年代以降に散々使い古されてベタになってしまったこの言葉も、終戦間近に将来の日本を見据える人達、その言葉を通して現在の日本へ語られると、言葉も重い。


また、国のために命を捨てる、愛するもののために命を捨てる、そういうことについて色々と考えされられるものがあった。
何のために死ぬのか、確信を持てずにいる特攻隊要員の少年。戦時中でも、恐らくは皆そうだったのだろう。
何のために死ぬのかは、何のために生きるかを考えることでもある。




「愛するものを守るために死ぬ」ことについて、非常に気になったエントリ。
ブラリズム − アンチ美学の会
http://d.hatena.ne.jp/burarism/20050824

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原作読了後、早速映画「ローレライ」も鑑賞。


これは・・・


覚悟はしていたが、文庫で4冊分の重みを2時間にするにはこうするしかなかったか。
内容は文庫の3巻後半と4巻前半をメインに構成されているのだが、原作が背景描写をしつこい位に詰め込んでいた分、それがごっそりと抜けてしまうと、なぜあのような展開になるのかを理解することすらも難しくなってしまっている。
一緒に鑑賞した彼女には、なぜあの地に原爆が投下されなければならないのか、その理由もよく分からない、単なる狂人の暴走のせい?みたいなことを言われた。
恐らくは尺の都合でカットされた、個々の人物の描き込みがかなりの量あるに違いない。


まあ全ては原作への思い入れがそう思わせているだけで、映画は別物と思えばね。
大作を2時間に詰め込むことで抜け落ちた数々のバックボーンは、ベテラン俳優陣の存在感で一応フォローされているので、邦画SFとしてはクオリティの高いビジュアルの作りこみを中心に鑑賞。


樋口真嗣だから過剰演出なアニメをそのまま実写化したような「画」としての面白さ、想像していた物がビジュアル化される快感は十分に満たしてくれた。潜水艦の内部もよくできていたと思う。
ただ、もちろん突っ込みどころも満載だし、PS2のゲームのようなCGや演出もかなり辛いところもあるのだが、リアル戦争映画ではなく、SFファンタジーと思えばいいんです。


演出で勿体無いなあと思ったのは、潜水艦物に付き物の「見えない」ことの緊張感が全く生かされてないこと。
見えない状況をローレライシステム上で見せるのならまだしも、観客に全体の状況を見せすぎて、これでは岡目八目だ。





なーんてさっき思ったことをざっと書いてみたけど、こんなこと映画公開時にみんな書いてるよね。
チラシの裏スマソ。


電気グルーヴファンとしては、掌砲長こと変態面白狂人ピエール瀧も見所。結構重要な役回り。
あと彼女が「これって実写版ナディアじゃないの?」とか言ってた。