観劇記録 「ジョニー・マッド・ドッグ」(Johnny Mad Dog)フランス=ベルギー=リベリア 2007年公開
渋谷シアターNにて観覧。映画秘宝方面で非常に高評価であったため足を運んだ。
明示はされていないが、舞台は90年代のリベリア第1次内戦。反政府軍として戦う15歳にも満たない少年兵達と、戦争に巻き込まれてもけなげに家族を助けて生き延びようとする一人の少女、この二つの物語を交互に描いている。少年兵と言ってもヒトラーユーゲントのようなものではなく、反政府たるイデオロギーも何もなく、手にしたAK-47を己の力として、ただただ無軌道に繰り返す殺戮・レイプ・強盗に、その若さのエネルギーをぶちまけているだけの、手の付け様が無い悪餓鬼集団だ。子供達の持つ凶暴性が全開になった時の狂気、そしてまだ子供であるが故のふとした所で現れる甘えるようなやりきれない幼さ。そういうものを、カメラが淡々とドキュメンタリータッチで捉えてゆく。
戦場カメラマンを撮影監督に迎え、少年兵達は全員オーディションによって選ばれた「本物の」元少年兵だ。たんなる子役芝居ではない。戦場の緊迫感、そしてそこになすすべも無く巻き込まれていく市民達のリアリティ。ありとあらゆるシーンが圧倒的な存在感を持って重く圧し掛かってくる。
リベリア内戦は2003年に終結したが、アフリカではまだまだ内戦が続いている。これは単なる映画のスクリーンの出来事ではない、これは現実で、今でも本当に彼らは存在するのだ、それを考えるとただただ絶望するしかない。
観る人を相当選ぶかもしれないが、とても言葉では言い表せない衝撃作だった。