http://white-screen.jp/2010/06/yuichi_kodama.php
アイディアをどう形にするか、非常に面白いインタビュー。その中から、「シークレットシークレット」言及部分。
見ている人に伝わりやすくするためにはどうしたらいいか、という流れから。
−ファンともリンクするんですね。
児玉:曲とアーティストの状況も毎回違う。デビュー10年目なのか、勝負時なのか、あと1年でブレイクするのか。Perfumeの「シークレットシークレット」ではまさにブレイク直前!だったので、どうしたら今までのファンのみんながより彼女たちを好きになるかが大事だなと考えました。そこで、いままで応援してきたひとには分かる彼女たちのサクセスストーリーを描こうと思いました。そうすることで商品とのタイアップ企画だったのですが、嫌な感じどころか、その企業と一緒にPerfumeを応援している気分になれるんではないかと。商品のタイアップが入ったブランディッド・ミュージックビデオだと「魂売りやがって」じゃないけど、いい風にみられない事もあるんですが、だからといって商品を見せないのも本末転倒。ポジティブにマーケティング的な側面も考慮できると更にいいと思います。
Perfumeがだんだんメジャーになっていく過程、そしてブレイクして遂にpinoのタイアップを獲得し、Perfumeが商品の顔となるまでを描いてみせる。おそらくあの時ベストのタイミングで、児玉氏はこのストーリーを作り上げたのだ。Perfumeファンの特徴として挙げられる、サクセスストーリー中毒症、いわゆる「物語原理主義」を児玉氏に見抜かれたような気がした。売れない時代から、その成功までの過程を疑似体験させ、最後に成功の象徴としてタイアップを持ってくる手法。児玉氏は、Perfume物語原理主義の聖典たる「道夏大陸」を見て、ファンの傾向を掴んでいたのではないか、とすら思えてくる。
Perfumeファンは本当にこういう物語演出の前ではイチコロだ。Amuseもアニバーサリーイヤーである今年は特にそれを多用するだろう。先のファンクラブツアーでも、最初に10年間の成長過程を追う映像を流し、関係者のおめでとうコメントの直後に、NBBのタイアップCM。もうそれだけでファンはNBBに好意的になってしまい、企業と一緒にPerfumeを応援しているような気分で、mixiのコスプレトピを埋め尽くすようにNBBでPerfumeと同じ服を買い捲ってしまうのだ。非常に保守的で、Perfumeファンとは対極にあるようなブランドでさえ。
こういうサクセスストーリー仕立てのお膳立てがなかったがゆえに、同じようにCMに本人達が出演したSONY VAIO、あるいはau「W62SH」やコーセー「Fasio」などの商品たちには、Perfumeファンからタイアップ先への極端なまでの共感が構築されることも無かった。
ファンの見たい物を見せる、ファンとのリンクというテクニック。嫌味がないどころかむしろ愛されるブランディッド・ミュージックビデオ。広告代理店もクライアントも変わったのに、再度起用される仕事振り。感嘆するばかりだ。