観劇記録 「ローラーガールズ・ダイアリー」(Whip It)アメリカ 2009年公開 PG12
スポ根青春ものには基本的に興味が無いのでスルーしていたが、なにやら絶賛の声を聞いたので六本木シネマートへ。
退屈で保守的なテキサスの田舎町、典型的アメリカ中流家庭で、優等生でいる事を強いられる生活。そして偶然見つけたもう一つの刺激的な世界で、少女は新たな自分を発見し、成長していく・・・。予告編で分かるこの情報通りの、散々作り倒された古臭いプロットだ。これを軸に、友情、恋愛、家族との絆、そういったものが絡められるのも、定番過ぎる作り。凝った仕掛けも無いし、アイディアにも目新しいものは何も無い。しかし、今作は、今年観た映画の中では五本の指に入る面白さだった。
何が面白かったのか。典型的なストーリー要素をどれも小奇麗に纏め上げ、テンポ良く編集、スポーツシーンも分かりやすくスピード感もあって楽しく見れる、という映画の「作り」の部分を別とすると、やはり、これが初監督作品となるドリュー・バリモアの色が前面に出たことで得られた、「ワイルドなバッドガール達の生態のリアルな描画」、これに尽きるような気がする。馬鹿みたいにすぐテンションが上がり、テンションが上がればいつでもどこでも歌い出し、踊りだし、いつの間にか大合唱。そんなアメリカの女の子達のくだらないほどのリアリティ。無駄に前向きで明るく、情に厚くて、そしてタフで自立した女性達。バリモア自身の、ドラッグ中毒や両親との確執、流した様々な浮名など、若くして人生の修羅場を潜り抜け来たにもかかわらず、それでもなお明るい馬鹿という奇特なキャラクターが、主人公を取り囲み成長させていくバッドガール達を、とても魅力的なものに描かせているのだろう。
また、バッドガールだけでなく、優しいけれど頼りない男達、その他登場人物全てのキャラクターの描き方が丁寧で、それぞれ癖のある、でも憎めない、人間愛のようなものも感じた。これはなかなかできないことだ。
「ローラーゲーム」は60年代末から70年代初頭に日本でも大流行したらしいので、年配の方は知っているだろうが、自分は初めてこの映画でその存在自体を知った。予備知識ゼロでも解説付きで十分楽しめるので予習は不要。
主役を演じる演技派エレン・ペイジがなかなかに小柄でキュート。キュート以上のオーラが無いのも、また「等身大」の女の子を描くのに一役買っている。また、ヒール役にはジュリエット・ルイス!クセのあるいい演技をしているのもなかなかの見所。