Aerodynamik - 航空力学

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観劇記録 「インセプション」(Inception)アメリカ/イギリス 2010年公開



吉祥寺東亜興行にて鑑賞。


現実と仮想空間を行き来きし重層的に積み上げられる世界観は、少しでも目を離すとストーリーの構造を見失う位に複雑だ。一度見ただけでは、この映画を理解した気分にはとてもなれないという意味では、難解な映画に分類されるだろう。生半可な気分で見に行ける作品ではない。それだけに、脳をフル回転させ緊張感を持って最後まで観終わった後の、知的好奇心の満たされ方もまた他にはないレベルの快感だ。
仮想現実を分かりやすく描いた作品というと、一番ベタな所では「マトリックス」がある。現実と虚構の世界の行き来という設定は、SFやアニメではよくあるパターンなのだが、今作はその設定を更に追求し、一つの高みを見せたと言ってもいい。
148分の大作だが、この重層的な設定に、さらにアクションとサスペンスを盛り込んで、よく一本の映画にまとめ上げたな、と感嘆する。


そして複雑な設定に負けない、強烈なビジュアルの力。これを生み出したイマジネーション力は相当なものだ。予告編で見ることの出来るCG全開のシーンだけでなく、アナログ的な手法によって撮られた驚くべきシーンをいくつも堪能する事が出来る。さらに音楽/音響の素晴らしさも特筆すべきものがある。ということで、これは劇場で見るべき作品だ。大画面大音量で圧倒されるべき。


クリストファー・ノーラン監督の、定評ある心理描写もまた冴え渡っており、深層心理と記憶が絡み合い、夢の中でそれらが具現化していく過程は鳥肌を覚えたほどだ。この映画の中でディカプリオ達が取り組むミッション自体は単純なものだが、その行為の奥底にある、事の重さにため息が出る。


脚本、映像、演出、演技、音楽、とにかくあらゆるものが凄い映画だ。その重厚さゆえに万人向けではないが、傑作だ。