Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 WIRE 11@横浜アリーナ



ドイツ色の強いテクノ祭り「WIRE」には、初回の99年、二回目の2000年まで行って、それっきりになっていた。時期的に、自分の趣味がハードミニマルやフロア系のゴリゴリのテクノから、エレクトロニカクリックハウスに移っていて、その頃のWIREがあまりにハード過ぎると感じて、それからなんとなく疎遠になってしまっていたのだ。Mille Plateauxの「Clicks & Cuts」が丁度2000年で、気分的にそういう方向だったという。一方で、1990年からのほぼ全カタログを所有するくらいにWarp Recordsが好きということもあり、UK、特にWarp Records系中心のブッキングだったElectraglideには毎回通っていた。
今年の夏は仕事が多忙で、ずっと休日出勤が続いており、結局夏らしいことを何もせずに夏が終わってしまいそうだったので、何か大きい夏のイベントに参加したくなり、実に11年ぶりに、WIREのチケットを買うことになった。


殆ど一回りする位の時間が空いたが、久し振りにWIREに来て感じたことは、幕張で行われるあれやこれやの大規模イベントに比べて、WIREは圧倒的に快適だということ。トイレに並ぶことは全くなく、食事と酒を売る店はこんなに必要なのかという位大量に出ており、音を聴きながら休憩するスペースも沢山ある。幕張はどのイベントでも呆れるほどに、トイレには悲しくなるほどの長蛇の列、酒を売る店は常に少なすぎて混乱し、フロア内には大量の死体が溢れる。さすがはWIREはチケットが高いだけあるって、ホスピタリティがしっかりしている。


今回初めて導入されたという、フロア内休憩席。普段ならこの手のイベントでは可動式の椅子席は完全に内部に収納されてしまうのだが、今回はステージと反対側の椅子の一部が、アリーナ部分だけ出されている状態だった。踊り疲れた時に、フロアから出て無音のロビーにへたり込んでしまわずに、ふかふかの椅子に座りながら音を聴き続けつつ休憩し、またすぐフロアに戻れるという、体力の続かないおっさんにとっては最高の場所だった。これまでも、スタンド席は開放されていたのだが、スタンドまで行ってしまうと、もう完全にフロアから離れてしまって、そのまま寝てしまう感じだった。今回のアリーナ椅子一部開放は、クラブの壁際のソファのような感じで、音を聴きつつ休んで、疲れが取れたらまたフロアで踊り、完全に疲れたらラウンジに移動する、あの感じがうまく再現されていた。



DJ Tasaka (Tokyo)

身体慣らし。


Dubfire (Washington, D.C.

上物メロディー一切無し、リズムの骨組みだけのごりごり硬質テクノ。WIREに来たんだなあという実感。


Daniel Steinberg (Berlin)

ファンキーなボイスやらディスコフレーズのサンプリング物を多用した跳ねるリズムのプレイで踊らされる。展開もブレイクを頻繁に挟んで盛り上げ。


Ken Ishii (Tokyo)

休憩中にちらっと聴いたら「Extra」やってた。


Rainbow Arabia (Los Angeles)

ちょっと異色のバンド物。KOMPAKTとKITSUNEにピックアップされた、エレポップ感とトリップ感のあるインディーダンスバンド。裏が卓球だったので快適。


Takkyu Ishino (Tokyo)

メインフロアが一杯に。一曲目に山下達郎希望という名の光」。レーザーとカラフルな照明が飛び交う横浜アリーナに、達郎のコーラスが響いた。

A Ray of Hope for You
A Ray of Hope for Me
A Ray of Hope for Life
for Everyone...

卓球がこんなにはっきりとメッセージを打ち出すのは珍しい。今回のWIREのロゴも日の丸を意識したものと言っていたし、VJにも何度も「地球→世界地図→日本地図→日の丸」というループが流れていた。
そこだけ聴いてセカンドフロアへ移動。


Takaaki Itoh (Miyagi)

ダークでパーカッシヴな鋼鉄ハードミニマルテクノで攻める攻める。完全にかつての「Maniac Love」状態。一番軽いのがDamon Wild「Avion」という。異常な盛り上がり。まだ0時だというのにここで体力を使い果たす。個人的にここがベストアクト。


Westbam (Berlin)

相も変わらずガキガキにタイトでスクエアで硬質な、これぞドイツの大箱サウンド。バムのDJは、一音一音が重い。剣道でひたすら面打ちの地稽古をやっているような。パワフルさとタイトさと男気。Dustin Zahn「Stranger To Stability (Len Faki Podium Mix)」がピーク。


丁度終電が無くなるこの時間帯に、どういうわけかどう見ても異質な大量のギャルとギャル男がフロアに流入してきて、アホみたいに騒いだものの、5分も持たずまたロビーに帰っていった。花火大会帰りだろうか。結局ギャル集団はずっと始発までエントランスロビーにたむろっていた。チケットは高いのに、なんだか可哀相にも思えた。


dOP (Paris)

なんでこれがメインフロアなのか分からない、異色の出演。半裸の男が奏でる「フランスの場末のキャバレー感」溢れる謎のジプシーテクノ。観客も面食らっていた感じ。


Mark Broom (London)

ベテランの繰り出す往年のハードテクノ、だが、この時点でのセカンドフロアはあまりに温度湿度共に異常な状況で、熱中症で死にそうになり離脱。


Felix Krocher (Frankfurt)

今はシュランツスタイルではなくなってしまったクロヒャー。流れはハードだが、Die Vogel「Blaue Moschee」のような変態の入った奇妙なプレイ。MGI「Rainbow」やFischerspooner「Emerge」のような、ドイツ産エレクトロクラッシュも。煽ろうとして何度も音を止めていたけれど、ちょっとやり過ぎて飽きられていた。


Radio Slave (Brighton)

淡々とあまり変化の無い地味なプレイ。体力が尽きて休憩。


69 LIVE (Carl Craig) (Detroit)

レッドブルを投入してマシンソウルに臨むも、あまりに焦らしすぎ。45分しか枠が無いのに、半分くらいの間はキックが鳴っていなかったんじゃないだろうか。10分以上ノイズだけ、20分位「Rushed」、最後の5分で「Desire」。先日のelevenでのプレイはかなり煽ってくれたのだが、今回は渋すぎて、極太マシンファンクを堪能、とまではいかなかった感じ。「Jam the Box」はやってくれなかった。


Len Faki (Berlin)

朝5:30からラストまでLen Faki。いきなり強烈なサイレンの音で寝ている客を叩き起こし、全く容赦無しの超ストロングハードスタイル。クラシックGreen VelvetFlash」も繰り出し、鞭打ちまくり。


12時間近く踊り続けて、もう同世代のおっさんは足が動いていない。ロビーで駄弁っていた20代の女の子たちが、ラストという事で一斉にフロアに戻ってきて、もはや上半身が揺れているだけのおっさん達の周りを飛び跳ねるように踊りだす。これが若さ…。始まって13年も経つイベントでもあり、客の高齢化が随分と目立っていた。


ハードなプレイは7時まで続いた。最後に、意外にも自然な流れでJaydee「Plastic Dreams」に繋いで余韻を残しつつ終了。その後、アンコールに応えて、アフターアワーズ的に、Laurent Garnier「The Man With the Red Face」、Aril Brikha「More Human」、Dennis Ferrer & Jerome Sydenham「Timbuktu (Pan-African Electro Dub)」、Djuma Soundsystem「Les Djinns」とスピリチャルにきめて静かにWIRE 11は幕を閉じた。




暫くごりごりのドイツ産テクノから離れていたが、やはり自分はテクノ、電子音が好きなのだと再確認。


毎回話題になるWIRE恒例のVJガールは「うえむらちか」。*1 VJ素材に合わせて、色々なポーズをとったり、楽器を演奏したり、もう可愛い可愛い。体力の限界にあった朝方には、彼女が映る度に自分の踊る気力が少し回復するのを実感して笑ってしまった。そして恒例の「See You Next Year」。





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