Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 ライムベリー@渋谷Glad



  • 120119 ASIA IDOL COLLECTION@渋谷Glad

何がコンプレックスって、「マイク掴んだらマジでNo.1」「悪そうな奴は大体友達」みたいな喧嘩腰が苦手で、そういうカルチャーを一切避けてきたが故に、自分は日本語ラップを全く理解していないという事だ。96年の伝説的イベント「さんピンCAMP」で日本語ラップが盛り上がっていた頃には、これまた伝説的イベント、富士山の麓で行われた日本最初の野外レイヴ「Rainbow 2000」で一晩中テクノを浴びていたのだから仕方がない気もするが。本当にLittle Bird Nation系を少し齧っただけで、自分のライブラリをそこから遡ってもMAJOR FORCE関連しかなく、後は「咲坂と桃内のごきげんいかがワン・ツゥ・スリー」位というお粗末さ。日本語に限らず、ヒップホップのタグを見てみても、Man ParrishとかMantronix、Grandmixer D.ST.あたりの所謂エレクトロクラシックばかりで、Public EnemyとかRun DMCになるともう駄目だ。


何をダラダラと書いているかというと、ライムベリーの面白さを語るボキャブラリーが自分の中に無いという事です。あんなに面白かったのに。




そもそも2007年位に、「萌えラップ」「アキバ系ヒップホップ」という、初心者にはあまりにもキツいコンセプトの女性3MCユニット「MOE-K-MCZ」の存在があった。*1 一部にカルト的な信者がいたりするものの、このユニットはCDも出さずに活動を休止してしまう。交わりようがなかったアイドルオタとヒップホップオタの中間地点に現れたそれは、アイドルとクラブシーンが交差した、かつてのPerfumeの存在と似たようなものだったのかもしれない。その「MOE-K-MCZ」のトラックメーカー「E Ticket Production」こと桑島由一氏が、再びトラックを提供したのが、このライムベリー。3MC 1DJのユニットだが、メンバーは中学生。そもそもライムベリーは中学生アイドルグループ「usa☆usa少女倶楽部」の内部ユニットという事だ。*2 昨年の11月にライムベリーとして初ライブをしてからまだ2か月程度で、持ち曲もMOE-K-MCZのカバー3曲とオリジナル1曲だけ、音源リリースも無いのだが、かつてのMOE-K-MCZオタが再び熱狂している、そしてとにかく凄く面白いという話が伝播してくる。


ヒップホップも日本語ラップも分からないので、チープなトラックと大ネタ使い、勢いだけのラップがMAJOR FORCE的だと言われても、そうなのですか、としか言いようがない。語るボキャブラリーも無さ過ぎて、寧ろ歯痒さばかりを感じる。しかし、そういう文脈を知らなくても、スチャダラパーサマージャム'95」に電気グルーヴ「新幹線」を乗せるセンスの意図する方向は分かる。この日対バンした他多数の地下アイドル達のオーソドックスなアキバ系アニソンスタイルとは一線を隔す、明確に好きモノ狙いのトラック、それも30代以上向けだ。当然その匂いに寄せられる客層も、他の対バンのアイドルオタとは人種もノリ方も全く違う。年齢層が高めのアイドルオタとヒップホップオタがごちゃごちゃしながら嬉々として語り合っている異様な空気は、ブレイク前のPerfume現場を思い出す。大人の悪い遊びに何も分からないまま精一杯乗っかって弾けるMCのマイクパフォーマンスは、当時のPerfumeの完成度などとは比較にすらならない荒削りでスキルレスだからこその、がむしゃらな先走り感。そして、テクノ系よりもさらにストイックにメッセージ性とそのスキルを追求するヒップホップの世界からは見向きもされないだろうが、また一つアイドルの変種で面白いものがドロップされた、それを渇望していたであろうオタ達を包む、異常なほどのパーティー感。たった4曲の披露だったが、完全にその場のハッピーな空気に呑まれた。Perfume現場ですら物販で買うことはなかったのに、気付けばライムベリーのTシャツを買っていた。



  1. Rhymeberry Iz No.1
  2. Hey!Brother!!
  3. Winter Jam
  4. Magic Party@Night