Aerodynamik - 航空力学

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Perfume「未来のミュージアム」ウェブインタビューまとめ


Perfume未来のミュージアム」は、まず初めに「映画ドラえもん」の主題歌としての発注があって、その発注に対して、「火の鳥」「風の谷のナウシカ」「学研 科学」を「影響を受けた本」として挙げつつ、Perfumeの楽曲にオルダス・ハクスリーなどの古典SF小説を引用する、SF好きのヤスタカらしい纏め方をしている。SF好きといっても、ガチハードSFやサイバーパンクといったジャンルよりも、「人類の進歩と調和」「空飛ぶ都市計画」「反重力旅行」「宇宙エレベーター」といったタイトルをcapsule楽曲に好んで付けていたように、基本的にはヤスタカにとってのSFは「サイエンス・フィクション」というよりも、もっと象徴的な、科学が人類を豊かにする未来という希望を前提とした「サイエンス・ファンタジー」の色が強い。Perfumeの「近未来三部作」のようなディストピアが見え隠れする世界観は、実はヤスタカの作品のなかでは異端なのだ。「未来のミュージアム」で使われた「夢」「広がる世界」「希望」「冒険」、そしてこの世界観を総括する単語「ファンタジー」は、エレクトロに転向する前のヤスタカのSF観をそのまま「ドラえもん」のSF、いわゆる「少し不思議」の夢のある世界へと適応させたものであり、なんとも彼らしい作風だ。


意外にも「『ドラえもん」仕事だからガキ向けの幼稚な作品だ」という感想も随分多いが、まあそういった先入観ありきで判断されるのも仕方ないとは思う。では「ドラえもん」主題歌はガキ向けなのか、という事を改めて見直してみると、2000年以降の「ドラえもん」主題歌は、基本的に大人のリスナーに向けた作品ばかりで、まるで子供向けとは思えない。参考までにここ10年前後の主題歌を挙げてみる。

こうして並べて一通り聴いてみると、恐らく先程の「子供向けなドラえもんの主題歌」という先入観とは大きく異なる楽曲群だと思える。どれもスケールの大きい、雰囲気を重視した曲が主だが、基本的に子供が喜んで歌う/聴く曲ではない。成長を歌うものも多いが、大人が子供時代を振り返る哀愁を含んだ内容であり、子供が未来の希望を歌う視線ではない。99年「宇宙漂流記」でPerfumeが憧れる大先輩SPEEDが担当した「季節がいく時」ですら、曲調も歌詞の内容も全くドラえもんとはかけ離れたものだった。こうして見てみると、むしろ「子供向け」である「ドラえもん」主題歌がこのような流れであることに違和感すら感じる。ストレートに子供達が一緒に歌える明るいポップな曲調で、なおかつこの未来に希望の持てない時代に、明るい未来を歌う曲は、実は近年では「未来のミュージアム」が唯一なのだ。長引く不況、政治不安、そして自然災害、原発事故によって科学万能の信頼も地に落ちた。このような時代に、子供向けの映画で、本来の小学生向けコミック原作のようなジャケに包まれた、希望ある未来を歌う楽曲を、「これまでの流れを無視して提供した」ということに対しても、自分の信念の為に旧来の閉塞的/保守的な業界常識を打破しようとするヤスタカの姿勢が明確に見える。だから、この曲に関しては、どこぞの人達のように「これは幼稚な子供向けじゃない、音は攻撃的に作られている」などと顔を真っ赤にして反論することなど無意味だと思うし、「ドラえもん」なのに辛気臭い曲ばかりの主題歌だった近年の流れを絶って、子供に希望溢れる未来を見せるために「ガキ向けの幼稚な曲」と言われるほど分かりやすい明るくポップな楽曲を提供したヤスタカの気概を素直に評価してあげてもいいのではないだろうか。SF好きであればこの辺のニュアンスに共感できる人も多かろう。子供が科学に希望を失ったら、この技術立国に未来はない。


まあ「映画ドラえもん」主題歌は、1985年「宇宙小戦争」での武田鉄矢の超名曲「少年期」に始まる武田鉄矢海援隊の10年の印象が強すぎて、スケールの大きいバラードにどうしても偏ってしまうというのはあるだろうけれども。




Perfume(パフューム) - 「聴いてても歌ってても気持ちいい曲です!」 - インタビュー exicite music

http://www.excite.co.jp/music/close_up/interview/1302_perfume/

か:中田(ヤスタカ)さんもドラえもんが大好きで、映画のスタッフさんを交えての打ち合わせにもすごく積極的に参加したそうです。


−じゃあ、レコーディングもすんなりと。


あ:細かい指導はちょっとあったね。


か:<飛び立とう>の歌い方とか。


あ:あとはハモリみたいなの入れたとき「もっと息っぽく」とか「もっと広がるように」って言われて、「えっ!? はい」みたいな(笑)。中田さんの中で声のイメージがしっかりしてるからだと思うんですけど、そのスパルタ的な感じが久々過ぎてドキドキしました

久々のスパルタ歌唱指導。「FAKE IT」以来?

−完成した「未来のミュージアム」の印象はいかがでした?


あ:中田さんが「Perfumeの歌う『ドラえもん』の曲はこれだ!」って作ってくれたものがものすごく直球な曲だったので気持ちがいいですね。夢と希望にあふれていて聴いてても歌ってても気持ちがいいし、子どもたちにぴったりだし。


−いま直球とおっしゃいましたが、Perfumeの曲で“未来”が歌詞に入ったものって意外と少ないんですよね。木の子さん作詞の「エレベーター」「引力」、中田さん作詞の「Dream Fighter」「MY COLOR」に続いて今回で5曲目になります


あ:中田さん、“夢”とか“未来”みたいな言葉をめったに使わないんですよ。それで自分の世界を表現できるところがすごいし、かっこいいんですけど、今回は『ドラえもん』だから敢えてわかりやすく提示したんだと思います。

インタビュアーの下準備。



Perfume『映画『ドラえもん』主題歌で話題の新曲!今のPerfume像とは!?』 ORICON STYLE

http://www.oricon.co.jp/music/interview/page/416/

ドラえもんの映画を通じて、さらにたくさんの国々のみなさんにPerfumeのことを知ってもらえたら最高ですよ。Perfumeって、日本のカッコいいカルチャーの代表ですから。


あ:レーザーや照明、音響とすごい方々が支えてくださっているんです。Perfumeのことを愛してくださって、「Perfumeって超カッコいいんだよ!」って、もっと外へ発信したいって思ってくださる方々が集まっている。技術だけではなく、そういう気持ちが動いて、ここまで来られたのを感じています。私はPerfume本人ですけど、俯瞰(ふかん)で見ることがよくあるんです。「すごくいいグループだな。ライブ観に行きたいな。こういうことやってくれたら嬉しいな。こうなっていったらいいな」っていうのが、今でもどんどん浮かんでくる。それが嬉しいんですよ。可能性がたくさん広がっていて、道もたくさん広がっているから、いろんな未来をキラキラ想像できる。それが今のPerfumeなんですかね。

「俯瞰で見る」



Perfumeが“ドラえもん”主題歌を担当! プロデューサー・中田ヤスタカドラマニア ニュース-オリ★スタ-

http://onlystar.oricon.co.jp/news/music/2134/

ディレクションの部分でも、かなりこだわりが感じられました?


あ:本当に希望にあふれたキレイな言葉で構成されているし、中田さんの中にも曲のイメージがあって、そこに近づけようとしているのはすごく感じました。「もっとこう、息声な感じで!」「広がりを持って!」とか、声の調子がいつもよりちょっと前のめりで感情的な感じで。


の:私は、子供たちに向けて、明るい気持ちで歌いました。


か:こんなキラキラした純粋なイメージの曲は、Perfumeとしてだけでは出せなかったかもしれない。ドラえもんの曲だっていうことで、子供たちも聴きやすくて覚えやすく、口ずさめる作品になったんだと思います。

中田ディレクション「声の調子がいつもよりちょっと前のめりで感情的な感じ」



ナタリー - [Power Push] Perfume未来のミュージアム」インタビュー

http://natalie.mu/music/pp/perfume04

−「未来のミュージアム」は「ドラえもん」にピッタリのかわいい曲になりましたね。


の:そうですね。中田(ヤスタカ)さんが自ら「ドラえもん」の打ち合わせに赴いてこの曲を書いたそうです。


か:「こういう映画になるので、こんな感じの主題歌を書いていただきたいです」みたいな打ち合わせが最初にあったらしいんですけど、「中田さんがわざわざ打ち合わせに来たんだよ!」ってスタッフさんが言ってて、「あ、普段行かないんだ」ってビックリしました(笑)。自分から出向くくらいものすごく「ドラえもん」が好きみたいなので、そんな中田さんの「ドラえもん」のイメージが詰まった曲になってると思います。

タイアップでも完全に商品先行の楽曲が多く、商品のイメージや宣伝コピーをそのまま歌詞に乗せてしまう位の寄り添い方をすることが多いPerfume楽曲だが、「こういう○○なのでこういう曲を書いていただきたい」レベルの会議にヤスタカが普段参加していないという衝撃的な話。

−前作「Spending all my time」から、また一気に雰囲気が変わったなと思いました。


の:ギャップが激しいですよね。でも振れ幅が広がってよかったなって思いました。ライブのときに同じような曲が並んじゃったりすると「もっと緩急つけて盛り上げたいな」って思うので、いろんなタイプの曲を作っていただけるのはうれしいです。


か:最初に聴いたときはまだ曲の基本の部分しかできてなかったから、「ドラえもん」の主題歌になるからってこんなにかわいい曲でいいのかなって、そこまで行っちゃって大丈夫かなっていう心配があったんです。でもできあがったら、しっかり低音が入ってるし、間奏で遊んでるし、展開に細かい変化があるし、歌だけ聴くとすごくかわいい曲なんだけどちゃんと大人も楽しめる曲になったと思いました。あとはジャケットとかPVでバランスが取れたなって思います。


あ:子供たちに興味を持ってほしい、なおかつ、いつも応援してくれてるファンの方にも楽しんでもらいたい、そういう気持ちがジャケットやPVにも表れてます。

樫野さんの楽曲評価ベクトル。



「だいじょばない」について。

の:私はこういう若者言葉がちょっと苦手だったりするんで、「いや、そんな言葉使わないですし」って思って中田さんに聞いたら、中田さん本人も周りの人も使ってないって言ってて。「マジか!」って思って歌詞を見たら「だいじょばない」って言葉がいっぱい書いてあって。

どこからのインスピレーションなのか。


ワールドツアー1stについて。

−会場のキャパが大きくなるにつれて舞台美術や照明、演出がどんどん派手になっているけど、それだけでなくPerfume自身もやっぱり昔と比べてはっきりと進化しているんだなって。今回ステージのサイズが小さくなって演出も小規模になったことで、3人のパフォーマンスがより引き立ってそれがあらわになった気がしました。


あ:うれしいですね、そう信じてやってきたので。小さなライブハウスでずっと活動してきたから、自分たちは特別な機材とかが何もなくてもライブをやれるって、なんとなく思ってたんです。でもアリーナとか大きいところでライブをやらせてもらえるようになって、どんどん演出がすごくなったときに、MIKIKO先生が「Perfumeのライブは演出がないと大きなアリーナでは難しい」っていう話をしてくれて、実はすっごい傷付いたんです。「あ、演出がないと、うちらもうステージ立てないんだ」って、すごいショックだったんです。だからこれから、ライブハウスでやったときに「こんなもんか」って思われて、イメージダウンしてしまうかもしれないっていうのをすごい恐れてるところがあって。自分たちを信じられない気持ちがあったから、その言葉は本当にうれしいです。

色々と示唆的な話。Perfumeのライブの三大要素、爆音/ダンス/MCのうち、爆音/ダンスの二つは会場規模が拡大すればするほど、その魅力を失っていく。Perfumeのパフォーマンスは何も変わらなくても、会場規模とは反比例してその魅力はスケールダウンしてしまう。それは単に遠くて小さい、見えない、動きを感じられない、という事だ。これは物理的にどうしようも無い。それを補完するために「演出」が必要となる。この前提に立てば、西脇さんの「ライブハウスでやったときに『こんなもんか』って思われる」という危惧に関しては、全くの杞憂に過ぎない。観客の誰もが、その奇妙で独特なダンスパフォーマンスを皮膚感覚の距離で体感しうることができる、これ以上にPerfumeの魅力を伝える条件が他にありうるだろうか。


もう一度、秋葉原石丸電気ソフト2のイベントフロアの距離感でPerfumeのライブを観たい、と言ってもそれは叶わぬ話だ。尤も、今のPerfumeは、もう「演出がないと、うちらもうステージ立てないんだ」などと嘆く必要はない。嘆いてなどいてほしくない。アリーナクラスの会場が主戦場ならば、如何にしてその最大の武器であるダンスと演出を有機的に統合させ、「距離」という最大の障壁を超えて、Perfumeにしか成し得ない全く新しいパフォーマンスを生み出す事ができるのか、今はそれを生み出すべきフェーズなのだから。







未来のミュージアム

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