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平日月初営業日に定時レベルで会社を抜け出すのにも相当の根回しと緊張感が必要だったが、よりによってその日に物理障害が発生して散々走り回り、何とか会場に辿りつくも、そこにいた6人位の知人に各々「顔色酷く悪いけれど大丈夫?」と心配される位に体調が完全にあれな状態で、正直このライブは座って鑑賞したかった。会場はキャパ150、そこにぎゅうぎゅうに詰め込まれ居心地も悪い、ステージも低い、こんなに素敵な面子でのライブならいつもの原宿vacantでやってくれればよかった、と弱音を吐く。そりゃそうだ、普段の南波志帆のライブでは(恐らくその歌唱/演奏難易度とライブ向きでない深さゆえに)めったに演奏されないコトリンゴ提供曲が本人の演奏で披露されるという、コトリンゴと南波志帆両者のファンにとってこれ以上ない素敵な機会。逆にこの二人の組み合わせが何故これまで行われてこなかったのかという(過去には音霊2012の一度だけ)。しかも演奏はコトリンゴライブの定番、ベース村田シゲ&ドラム神谷洵平。南波志帆のライブも竹中夏海先生振付のカラオケライブが中心になり、最近ではバンド形式のライブはなかなか行われず相当な欲求不満状態。折角の機会、雰囲気も居心地も素敵な会場で観たいじゃないですか。
とはいえども、あまりに狭すぎるステージ故に、バンドセッションの三者の距離の取り合い探り合い、緊張から生まれる熱気が、かつて観たことの無い濃密なレベル。非常に狭いステージ上での生演奏でのアドリブ多めのジャムセッションスタイル、お互いの呼吸を確かめ合い探り合いで演奏を進めていく緊張度が、返しではなく生音になるだけで全く違う。特に神谷洵平のあの独特の手数の多いドラムが更に手数が増えて飛ばしまくる。コトリンゴのキーボードへのタッチ音やフットペダルを踏む音までが観客にまで聴こえるから、それまでがジャムセッションの音の隙間を計る要素になる。あの体験は非常に貴重なものだった。ピークはコトリンゴ「ツバメが飛ぶうた」。あそこまで「高まった」のは初めてだ。
南波志帆「anselm」が神谷洵平ドラムの生演奏とかもうそれだけで感動的で、コトリンゴ提供曲の中でも一番好きな「ふたりのけんか」も、あのじわじわと感情を高めながら鬼気迫るピアノはコトリンゴでないと。アンコールでの各メンバーの告知タイムでは、コトリンゴがその場で即興のBGMを弾き始め、それがいつもの村田シゲとの夫婦漫才の中でオペラ調に発展して、全員が即興でメロディーを付けて告知を歌うという、これぞコトリンゴライブの醍醐味。南波志帆がSPICE GIRLS「WANNABE」を捻くりまくってエレガントなピアノ演奏でカバーした曲も、コトリンゴの圧倒的な演奏力の高さのおかげで演奏の揺らぎに余裕すらあって、そこがこの曲の狙いのユーモアとしてCD音源以上に再現されるという完璧さ。セットリストに堀込高樹提供曲の傑作バラード「プールの青は嘘の青」があったのは、堀込弟が脱退したキリンジにコトリンゴがメンバーとして加入したタイミングでの、キリンジファンへのメッセージだったのだろう。
普段の両者のライブでも観られない特殊な状況と選曲と演奏で、それがまたいつもよりも高いテンションで披露され、本当に最高のライブだった。こちらの体調がすぐれなかったのが残念でならない。それにしても、コトリンゴの演奏と表現から醸し出される独特の空気と並べてみれば、南波志帆の歌も表現もまだまだ発展途上の荒削り状態であることがはっきりと分かる場でもあって、彼女は声質以外は表現者としてまだまだ全く完成されていない、逆に言えば伸びる余地はまだまだ無尽蔵すぎるので成長するしかないという期待と焦りまでを勝手にこちらが感じるライブでもあった。
コトリンゴ+村田/神谷
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コトリンゴ「ツバメが飛ぶうた」
南波志帆「クラスメイト」