http://tokyogirlsstyle.jp/live/tour.php?id=1000086
昨年末の武道館公演で発表された次のツアータイトルが「Royal Mirrorball Discotheque」だと聞いて発狂せんばかりに躍り上った類の人間なので、このツアーは何が何でも観ておきたかった。ツアー自体は05/17まであと数公演を残しているが、もう渋谷AX公演がusetreamで生配信されてしまっているので今更ネタバレも無いだろう、読むならご自身の判断で。
20140330 東京女子流 4th JAPAN TOUR 2014〜Royal Mirrorball Discotheque〜@Zepp DiverCity Tokyo
Maltine Girls Waveの12インチを買ったらJETSETの袋だった。
客入れSEはディスコクイーンKylie Minogue姐さん固め。2013年の方向性不在とロックへの偏向迷走を年末武道館の小西ドラムで完全に清算し、本流のディスコ/ハウス/R&B路線に立ち返るこの「Discotheque」を冠したツアーらしい選曲。こういう所までの気配りはとても大切だと思う。そして開演時間丁度に「I Should Be So Lucky」が流れる!一番高まった所で開演…してくれればいいのだけれど、二公演とも一曲分くらい遅れての開演となった。
Kylie Minogue - In My Arms
Kylie Minogue - Celebration
Kylie Minogue - Get Outta My Way
Kylie Minogue - Give Me Just A Little More Time
Kylie Minogue - I Believe In You
Kylie Minogue - I Should Be So Lucky
メンバーがステージに登場、小西 黄/山邊 緑/新井 ピンク/中江 紫/庄司 緑のドレープが印象的なクラシカルでエレガントなドレス、70年代ソウルグループの香りがする。一曲目は落ち着いた新曲、聞き覚えのあるこのメロディーとリズム。「TGS04 鼓動の秘密」と同様に年齢的に歌えるようになるまで取っておいたという「TGS00」、デビュー前にYoutubeでメンバーが2010年1月1日から一人一人公開されていく、あの動画のBGMでもあった。後日この曲および次のアルバムのタイトルが「Killing Me Softly」であることが発表された。そのタイトルは勿論Roberta Flackの引用だろう。今現在の東京女子流プロジェクトが音楽性とその方向性をはっきりと示した、確かなメッセージだ。
新井ひとみ from 東京女子流*TOKYO GIRLS' STYLE
Roberta Flack - Killing Me Softly
そして始まるRoyal Mirrorball Discotheque。基本的には松井寛セカンドアルバム「Mirrorball Flare」にダブルディスクとして付けられたこれまでの「Royal Mirrorball Mix」をまとめて木村コウがミックスしたものをベースにライブが進む。フロアでRMMだけのライブ、それも当然ミックスされた状態で。振り付けもこれに即して全面的に変更されている。こんな夢の様な話があるだろうか。演者も客もサウンドもダンスフロア仕様に徹したアイドルライブをPerfumeで観たい観たいともうずっと言い続けてきて、それは2009年代々木体育館の「Perfume LIVE! ディスコ!ディスコ!ディスコ!」でほんの少しだけ叶いそうな気がしたものの、以降のPerfumeには全くその手の挑戦はなく、昨年ようやくダンスフェスに出演するも基本的には曲間を四つ打ちで繋ぐ程度のもので、ここまで振り切った試みはなされてこなかった。今目の前で行われているライブへの感動とこれまでのPerfumeとダンスフロアへの思いが複雑に綯交ぜになったまま溢れ出して踊りながら泣く。自分の左隣の席は空席で、右隣は通路、もうお前は好きに踊れとディスコの神様がこのライブを与えてくれたのだ、もうそんなオカルトめいた気持にすらなる。
木村コウミックスと同じように「Love like candy floss」からスタートし、「Last Forever」まで一気にRoyal Mirrorball Mixだけで駆け抜ける。強いアタック、短いサスティン/リリース、この松井寛ビートはあくまで松井寛音源でなければ味わえない。生バンド演奏ライブがありがたい曲の時もあるが、やはりこのDiscotheque空間は生ドラムに置き換えてほしくない。
途中で二本目の主演映画「学校の怪談 -呪いの言霊-」の主題歌となる「十字架」を、シンプルなモノトーン衣装と、背中には大きく白テープで十字架が描かれた黒マントを羽織る大業な感じで披露。その場ではしつこ過ぎる歌謡曲テイストのメロディに全く興味を持てなかったが、ディスコと怪奇ホラーは昔からネタものとして量産されているので、この曲のRoyal Mirrorball Mixもネタを突っ込んだ面白いものになるだろう。
Hot Blood - Soul Dracula
Captain Dax - Dr.Beezar (Soul Frankenstein)
ピンクレディー モンスター 1978 08 28
黒マントを外して次は松井寛「Mirrorball Flare」収録の女子流が歌うシャッフル曲「Paint in Black」、そして同アルバムでミトカツユキが歌う大野雄二/カリオストロの城ネタのダンディズムソウル「Count Three」の女子流リアレンジ。「Paint in Black」と言えばストーンズ、そしてニューソウルリヴァイヴァル、昨年の邦ロック路線からの割り切った方向転換が美しい。
@royalmirrorball 松井寛 |
ツアー初披露の「Count Three・東京女子流バージョン」は、単にカバーでは無く、ギターは土方隆行氏、Sax Soloを「赤木りえさんのフルートソロ」に変えて女子流仕様に仕上げていますw | link |
The Rolling Stones - Paint It Black
印象に残ったMC。「ファンクラブイベントやりたいね」という話から、皆が「バーベキューいいねいいね」と盛り上がるなか、山形育ちの庄司さんは「芋煮会」と即答し、山邊さんは小西さんを喜ばせようと「ジャガイモ掘り」を提案していた。そう、ステージで過呼吸を度々起こすほどに精神的な負荷に苦しんでいた山邊さんがリーダー職を庄司さんに譲る人事異動がツアー前にあって、それ以降の山邊さんは一気に明るく可愛らしくなった。「約束」ツアードキュメンタリーを観て、あの更迭が正しい判断だと理解した。
そして再び木村コウ/RMMミックスへ。「ヒマワリと星屑」から「おんなじキモチ」、そして最後は東京女子流最高のメローディスコ「キラリ☆ (Royal Mirrorball Mix)」へ。青春の美しさと儚さ、そして未来への希望がこれでもかと詰め込まれ、そして原曲よりもBPMを落としてスイートなディスコに仕上げたデビュー曲のリミックスとして最高の仕事。東京女子流の1stリリースでこの曲を聴いた時に、このユニットをずっと聴いていたい、聴いていこうと思った。
流れ的にもあまりに美しい終わり方をしたのでもうアンコールはむしろ要らないと思ったが、一応アンコールで再登場し最新シングルである「Partition Love」RMM、そしてグッズ紹介。いつものぐだぐだなトークで美しい流れも掻き消され、ハウスミックスはその流れも大切な要素として尊重してほしいと思ったが流石にそこまではできないか、最後はどうするのかと思っていたら、東京女子流最初の主演映画となったどこまでも美しい青春群像劇、山戸結希監督作「5つ数えれば君の夢」(ホラー映画がデビュー作でなくて本当に良かった)から「月の気まぐれ」。映画のエンドロールのように、キラキラした月夜の夢、静かに幻想的にステージは終わりを迎える。曲のアウトロのオルゴールをバックに、ステージの上をターンする彼女達のキュッという靴の音が会場に響くほどに美しい余韻。
- Killing Me Softly (TGS00)
- Love like candy floss (Royal Mirrorball Mix)
- 鼓動の秘密 (Royal Mirrorball Mix)
- 運命 (Royal Mirrorball Mix)
- Rock you! (Royal Mirrorball Mix)
- ふたりきり (Royal Mirrorball Mix)
- Bad Flower (Royal Mirrorball Mix)
- MC
- Get The Star (Royal Mirrorball Mix)
- Limited addiction (Unlimited addiction Mirrorball Royal Mix)
- Mine (Royal Mirrorball Mix)
- Liar (Royal Mirrorball Mix)
- 追憶 (Royal Mirrorball Mix)
- Sparkle (Royal Mirrorball Mix)
- 月とサヨウナラ (Royal Mirrorball Mix)
- きっと忘れない、、、(Royal Mirrorball Mix)
- Last Forever (Royal Mirrorball Mix)
- 衣装換え
- 十字架 -学校の階段Ver.- (新曲)
- MC
- Paint in Black
- Count Three
- MC
- ヒマワリと星屑 (Royal Mirrorball Mix)
- 頑張って いつだって 信じてる (Royal Mirrorball Mix)
- おんなじキモチ (Royal Mirrorball Mix)
- キラリ☆ (Royal Mirrorball Mix)
- EN
- Partition Love (Royal Mirrorball Mix)
- MC
- 月の気まぐれ
試みとしてはもう何もいうことが無いほどに素晴らしい、松井さん有難う有難う。ただ、この試み自体が東京女子流にとって全く初めての事だけに、錬り込まれていない部分もまた多数あった。一応記録として書いておくが、まず、とにかく音が小さかった。全体の音量ではなくボトムが足りない。ディスコティークなのにキックが小さいという時点で相当辛い。クラブの出音を基準にライブハウスの音を考えても何も得るものは無いというのは分かっているけれど、「Royal Mirrorball Discotheque」を冠したツアーにあの弱々しい出音は無いわーという気持ちは抑えられない。同会場で観たPerfumeはがっつりキックを鳴らしていたので、システム的に出せない訳ではない、PAの方向性の問題。
二つ目に、女子流メンバーが普段のライブと同様にやたらとハンドクラップや左右の腕振りを要求し、ミックスの途中でも「次の曲は○○ですよー」と被せてくる。そして「まだまだ盛り上がる準備できてますかー?」の繰り返し。この手の煽りはディスコサウンドとミックスを楽しむうえで障害でしかない、特に曲と曲が気持ちよくミックスされてスライドしていく瞬間こそが醍醐味でもあるのに、それを上から妨げられてしまう。高校生になったばかりのメンバー達にディスコ/クラブの楽しみを求めるのも不条理だし、ここも周りの大人がライブの趣旨に合わせて演出を検討すべき問題。そもそも、アスタライトは基本的に踊らない、公式ペンライトで軽く振りコピするだけのファン層がほとんどだ。その一方で、東京女子流が対バンイベントに出ればアップアップ(仮)やももクロだったりした訳で、そちらのファンはサイリウムやキンブレを持って大騒ぎしてミックスしてコールするのが流儀。そういうライブを横で見ていれば、女子流メンバー達も自分達のライブは盛り上がっていないのだろうかと不安になり、クラップやコール&レスポンスをライブに組み込んでいこうとするその気持ちは痛いほど分かる。Perfumeのライブでお馴染みの各席分割や「メガネの人!」「Tシャツ着てる人!」のようなコール&レスポンスまでがそのままこのライブに組み込まれていた。Perfumeも会場が大きくなってから物理的に遠くなる客との一体感演出の為にこの方式を取り入れたのだけれど、もうそれが必要なほどに本人達が追いつめられているのかという悲しさもある。余所の盛り上がり方と比べる必要はない、胸を張って最高のダンスとグルーヴを届けてくれればそれでいい、そしてその為には、Perfumeと同様にファン層の耳も女子流運営自身が育てていかなければならない。Perfumeの初武道館と同時期にリリースされたシングルは「Dream Fighter」で、「ディスコ!ディスコ!ディスコ!」の時は「ワンルーム・ディスコ」だった。ブレイク直後の状態では、シングル曲をあそこまでJ-POP歌謡に寄せなければ通用しないと判断されていたということだ。数年をかけてリスナーの耳は中田ヤスタカに教育され、「spending all my time」でも「Party Maker」でも受け入れられる環境ができた。女子流にもそういう過程が必要なのだろう。
メンバーのパフォーマンスについては、ツアーの趣旨に合わない何時ものままだった煽りや間の使い方を除けば、「約束」ツアーの状況とは打って変わって皆が前向きで、歌もある程度安定して、ダンスもとても魅力的だった。全く踊らないオタをどう乗せるかに相当悩んでいるのは誰が見ても感じる所だろう。また、スキルとは別に、まだ基礎体力がない、ダンスに必要な細かい筋肉が付かないままにハードなステージをこなしている感がある。だから後半まで声も持たない。そして新井さんだけが一貫して声もダンスも安定しているのであの人だけは鉄人感がある。avex規模の会社でスポーツトレーナーも付けずにいるのも不思議に思うが、それもメンバーのこの春の全員上京で変わって行くのかもしれない。山邊さんが可愛らしく復活しているのが今の女子流チームにとっていい影響を与えているのだろう。どんな事でも人には適性があり、リーダーになって自分を追い込むか自分を高められるか、それはは能力ではなく適性の問題だ。庄司さんはリーダ職を与えられてそのプレッシャーを前向きにコントロールできるタイプのようだ。他のミドルティーングループに対して東京女子流は明らかにパフォーマンスの成長が遅いが、これは地理的な問題が主たる障壁だったとすれば、これからの未来もまた楽しからずや。
まあ言ってもこれはPerfumeで観てきたものを基準にあれこれ言っているだけの話で、「Royal Mirrorball Discotheque」の試み自体はもう何も言うことがない素晴らしいただただ松井さん有難うございます、一度こういうライブをPerfumeで観てみたかったです、もう感謝しかないです。
松井寛・東京女子流 / Mirrorball Flare + Royal Mirrorball Discotheque(松井寛 / 東京女子流)ダイジェスト
07:30「Count Three」、08:50「Paint in Black」、13:30「Royal Mirrorball Discotheque」
映画『 5つ数えれば君の夢 』予告編
20140406 東京女子流 4th JAPAN TOUR 2014〜Royal Mirrorball Discotheque〜@渋谷AX
一般発売で買ったチケットは2階奥の席で、見晴らしのいいはずの席も前方が立ってしまえばステージは全く見えない、音もろくに響かない切なすぎる状況。幕張フェスの9ホールでライブ開催中に、10ホールのフードコートで食事をしているような気分。ここまで酷いと人間諦めがつくのだろう、近くの席の人はライブ開始早々に座席に座り直し、タブレットを取り出しイヤフォンを耳にさし、ustreamの生中継の方をずっと見ていた。たまにチラ見させていただいたおかげで、ステージが全く見えない中で山邊さんが卵を使って何をしているのかが分かったので尚更切ない。AXではDivercityの音量不足は改善されていたとのこと。
※観覧記録 松井寛/東京女子流「松井病院@代官山UNIT 〜Mirrorball Flare + Royal Mirrorball Discothequeリリースパーティー〜」@代官山UNIT
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20140425/p1