http://natalie.mu/music/news/104428
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_861.htm
http://ameblo.jp/michiru-h/entry-11712313999.html
平日20時からと珍しい時間帯のCAYに着くと、普段レストラン営業時に出ているテーブル席がそのままになっていて、特段料理を頼むわけではないのだけれど、成り行き上ディナーショー的な雰囲気のワンマンライブ。流れているSEは、はせはじむの選曲か、ロマンティックな60年代ポップス中心、もう気分的にはクリスマスとかそういう時期なのだ。会場に向かう途中で覗いた店にはセルモネータ・グローブが並んでいて、10年振りにその名前を思い出した。ローマのスペイン広場の店で買った。そう話すと、もう10年前から代官山に路面店がありますよ、と店員が笑って教えてくれた。
Connie Stevens - Now that you're gone
The Ronettes - How Does It Feel
美空ひばり - 魅惑のワルツ
Garry Miles - Look For A Star
Louis Armstrong - When You're Smiling
ケーブルカー経由で高尾山の頂上に佇む星野みちるを映したモノクロフィルム、BGMはLouis Armstrong「When You're Smiling」、随分ゆっくりとした贅沢な流れでライブ開始。ステージには電子ピアノが一台、宇宙服ドレスで以前のAKB一期生当時からの自作バラード弾き語り、VIVID SOUNDに移籍してからの趣味的ポップス「い・じ・わ・る・ダーリン」「もう、ランデブー」は赤のショルキーで。「ショルキーだよ、かっこいいでしょ、何か弾こうか」と観客に投げかけるも、誰も答えられないので「やっぱ止めよう」となったところで、客が「ハッピーバースデー」と投げかける。そう、この日は彼女の28歳のバースデーライブ。「28歳、意外と行っちゃってるパターン」と小さく笑い、でも「ハッピーバースデー」を弾かずにそのまま次の曲へ。多分ファンなら彼女のピアノで「ハッピーバースデー」を一緒に歌いたいであろうところだが、そういう空気読みなど一切しない淡々としたところがかえって彼女らしいという。
いきなりライブ途中で今日は二部構成であることが伝えられ、休憩に入る。客の都合や盛り上がりなど関係なく、淡々と彼女の独自のペースと世界観で進むライブ。休憩中に割烹着でバーに登場した彼女、サプライズで料理をするという話だが、出されたものは米と梅のみ、そして彼女が作ったものはおにぎり二つ。とても料理の手つきではなく、まるで子供の粘土細工のようだ。具ははみ出したまま、不格好なおにぎりをべたべたと握る手元がスクリーンに大写しに。あんなに酷いおにぎりは見たことが無い。そしてBGMは808 State「Pacific 707」。一体これは何だ。後ほど彼女から「ラップを使って握ったことしかなかったから」と弁明が入る。
808 State - Pacific 707
二部はドレープが綺麗な赤いミニワンピ。彼女の幼い頃の写真と、彼女が書いた素朴な絵のスライドショーをバックにピアノを弾き語り。そしてVIVID SOUNDの新曲(今回も7インチアナログ+同音源CD-R)は、まず「この道で」。スクリーンに夜の首都高からの眺めを映しながら、流麗なストリングが印象的なジャズファンク歌謡、間奏のスティールパンソロから後半のブラス使いが良過ぎる。本人は淡々と「かっこいいでしょ、シティポップだって。そう言うんだって。そういう曲名じゃなくてジャンルなんだって」。
海をバックにBPM遅めのバレアリックハウス歌謡「トワイライト・ブルー」、そして細野晴臣アポジー&ペリジーカバー、投げやりで不器用なロボダンス付きで「真空キッス」、そしてまた大ネタだけどベースラインがとてもグルーヴィーな「ワンダランド」と、VIVID SOUNDのDJが好きでそのまま作った感の楽曲の面白さ。「ワンダランド」ではこの曲のみ写真撮影が許可され、「Twitterで宣伝してくださいね」との事だったが、観客が全員ひたすらスマホを彼女に向けシャッターを切り続ける中で歌った後、「びっくりした。もう無しだね」。流石にこれは歌う方もこの距離感ではやりづらいと思う。
「12/24はみんな空いてるでしょ、その時間を私に下さい」とライブ告知。あからさま過ぎて苦笑い。7インチA面の「マジック・アワー」は「ノーザンソウルだって聞いたけどスーザンボイルって思っちゃう」。松田聖子×大滝詠一を渋谷系の人がやってみましたみたいなド直球路線、タンバリンと、スネアのエコー使い、そして鐘の音。そこにかぶさるクセのない素直な声。アナログ両面とも相変わらず恐ろしいほど狙い過ぎの編曲。そしてアンコールのサービスとして、発売予定が無いという「星に、メリークリスマス」を披露。808がちゃかぽこ鳴るバックビート刻みレゲエハウスのマッドチェスター感に、ポールマッカートニー「Wonderful Christmas Time」をサンプリングしたロマンチックなクリスマス曲、ポールが久し振りに来日公演を行ったタイミングでこれ。何故これを今リリースしないのかとおろおろする位に素敵な曲だけれど、そのままではリリースできないか。
「ぎりぎりまでチケットが全然売れていなくて、でも今日はこうやって沢山来てくれて、なんでみんな意地悪なんですか」と子供の様なMCの後、最後にまた彼女の素朴な手書きの画のスライドショーをバックに「一緒に旅する君へ」を弾き語り。今のVIVID SOUNDプロデュース陣が明らかに数寄者向けのサウンドばかりやっていても、星野みちるの28歳になっても失われない小学生みたいな素直で素朴なキャラクターと、その性格をそのまま映し出した素直な歌声が、そのスノッブさを全部洗い流すのはとても気持ちがいい。そういう楽曲が好きでここに来たくせに、スノッブ感の無さが気持ち良いとこの思わせる、その稀有な声と空気。
1部
- 愛すべき光
- くちびる
- い・じ・わ・る・ダーリン
- もう、ランデブー
- MC
- 私はシェディー
- オレンジ色
2部
- ガンバレ!
- 歩んでる道
- この道で
- トワイライトブルー
- 真空キッス
- ワンダランド
- マジック・アワー
- EN
- 星に、メリークリスマス
- 一緒に旅する君へ
星野みちる / 私はシェディー
星野みちる/い・じ・わ・る・ダーリン