Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 クルミクロニクル 1st Anniversary Live「Prismic Step」@渋谷WOMB

http://www.womb.co.jp/live/2014/04/05/prismic-step.html
http://kai-you.net/article/4555
http://ameblo.jp/curumichronicle/entry-11815536171.html


渋谷WOMBさんでのワンマンはまだまだ身の丈には合っていないと分かってます。驚かれた方がほとんどだと思いますし、私もあんなに広いステージに一人で立たなきゃいけないのかと思うと怖くて仕方がありません。


正直な気持ちを言うと、楽しみなんて感情はまだ湧いてこないです。でも、私はWOMBワンマンを成功させて自分に自信を持ちたいです!そして、いつも支えてくれている方々への恩返しのつもりでライブをします!!


長くなりましたが、会いに来てください!!


くるみ


路上ライブから始まったクルミクロニクルの活動一周年記念ライブ会場はWOMBだった。2013年11月にタワレコ渋谷地下の「CUTUP STUDIO」を借りてまず初ワンマンライブ、その次は今年2月の渋谷のアンダーグラウンドクラブ箱amate-raxiでのバースデイワンマン。そして3度目の会場はドメジャーなクラブ箱WOMB。エレクトロニックなダンスミュージックの鳴りにあれこれいう人間にとっては嬉しいばかりだし、逆にその会場に相応しい鳴りを前提として期待するので勝手に自分の中でのハードルも上がっていく。


それはともかくクルミクロニクル本人はいたって「ふつうのおんなのこ」だ。自分が言うと気味が悪いが、日笠麗奈が「アイドル界に”ふつうのおんなのこ”が迷い込んでしまった」と書いているのだからそれでいいだろう。頼りなくてふわっとしていてでも芯のある強さが見え隠れしていて、「さよならポニーテール」が大好きでたまらない、その人柄自体が、キラキラとまばゆいようなオーラを放つタイプのアイドルとはまた異なった形での「天性のアイドル性」を持ち得ている。エッジの立ったエレクトロニックなダンストラックと、クルミのふわふわしたキャラクター、その「EDM女子高生」と呼ばれる両者のギャップが面白い、そういうサブカル的な目線から、ライブを観る度にいつしか彼女自身の人柄に魅せられていく、彼女のライブを観に足を運ぶたびにそれを自覚していく。




WOMBでのワンマンライブにかける運営の意気込みは凄まじいもので、ageHaのレーザー演出でお馴染み(ここのレーザー演出は本当に場に映えるので、レーザーが入ったパーティーでは何時の時間でも女の子が頭上に七色に輝くレーザーをスマホに収めようとしている姿を目にすることができる)のVenusLaserに投資し、ステージを記録に残すため多数のカメラとクレーンまでもが用意された。ティザー映像や、フロアテイストの強い新曲をDL公開するなど、幾つもの手を打って訴え続けた。しかし、「今発券してみたら100番ちょっとだったよ」というオタの声を直前まで聞き続けたのもまた事実で、さすがに今の段階でWOMBは大きすぎたかと思わざるを得なかったし、クルミ本人もライブ会場の大きさ(特にWOMBは非常に天井が高いので余計にそう感じる)に不安を見せ続けていた。


会場に入って二列目位に位置を取り、少しして後ろを見渡すと、フロアの半分ほどしか埋まっていない。チケット150枚程度ならこの位だろう。ライブが始まり、路上ライブから現在に至るまでの彼女の写真が「輝け空色少女」の大袈裟でドラマチックなストリングスアレンジをBGMにしてスライドショーでスクリーンに流れていく。たった一年、しかしこのスライドショーが既に一つの映画のように大きく物語を描いているように見える。


初めてクルミクロニクルの音源を手にしたのは、本人のライブではなく、握手会のイベントですらなかった。音源をCD-Rに焼いたものを明日渋谷のどこかで売ろうと思っているというプロデューサのツイートを目にし、そして翌日集まった人達と連絡を取り合って宮下公園に移動し、全身黒い服に身を包み真っ青な顔をしてマスクを着けたままの酷く体調の悪そうなプロデューサから、曲タイトルだけがディスクに手書きで記されたケースすらない白いCD-Rを何枚か買った。タワーレコードと線路を挟んだ位置にある明るく晴れた日の狭い公園には似つかわしくない風景で、まるで違法薬物を売買しているかのような妙な感覚だった。それが数か月後にタワーレコードに並び始め、クルミ本人の東京ライブは2013年の8月にようやく実現した。


スライドショーが終わり、クルミがステージに上がる。重たいビートとチョッパーベースがJusticeのように鳴りまくる「KITTY」。しかし音が小さい。WOMBなのに音が小さい。WOMBは箱の規模の割にはスイートスポットが非常に小さいから、このライブを全身で楽しむにはミラーボールの真下かスピーカーに張り付ける位置に移動しよう、そう思って、曲終わりに誰もいない後方スピーカーに張り付くべく後ろに下がった。しかし半分までしかいなかったはずのフロアには、いつの間にかぎっしりと人が溢れていた。早めにチケットを買って入った、踊る余裕のある前方よりも、後方は更に余裕なくぎっしりと人で埋まっていた。後方のスピーカー前まで辿りつく事もできなかった。「マジかクルミクロニクルってこんなかっこいい音なんだ」「すっげー癒されるキャラだ」と彼女を初めて観たのであろう人達の興奮した会話が飛び交っている。彼女に期待と新しい刺激を求めている人達が、WOMBのフロア後方目一杯まで集まっていた。何てことだ、この時点でこのライブは大成功じゃないか。




フロアを揺らすエレクトニックなダンスサウンド、飛び交うレーザー、時にはクルミ自身がステージ上のDJブースに入りヘッドフォンをかけてトラックをドロップする、その中でもMCはいつもの調子で「体の一部と思っている位に好きなさよならポニーテールさんから花が届いていたので、なんかもう気持ちが高まってその花を食べました」。しかしやはりここは活動一周年の場、一年間を振り返り重い話も吐露する。家族や学校に活動を反対されたこと、そして、「これ言っていいのかな」と前置きした後、「プロデューサの方が前に手がけられていたアーティストさんと自分が重ねられて見られている気がして、ほんとに嫌で、私は私なのにって」。涙ぐみ、絞り出すように語った後、「でもそれがあったから私を知ってくれた、見に来てくれたというのもあって、今ではそれもよかったのかなって思えます」と、くしゃっと苦笑いしながら付け加えた。


フロアの前の方を埋めていた人達にとって、この言葉の受け止め方はそれぞれでも、それなりにショックを受けるものではあった。自分達の心の中でどう整理を付ければいいか、ライブ後に皆集まって話し込むほど、動揺は大きかった。はっきり言ってしまえば、これまで熱心にクルミを観てきた人達は全員デートピアオタ、Aira MitsukiSaori@destinyの現場にいたファン達だ。クルミ本人にとって何もかもが初めての事であっても、オタの側は2度目3度目の出来事かもしれない、事あるたびに比較されるならまだしも、かつての存在を自分に重ねて見ているのではないかという嫌悪感も、全くもって納得できる話だ。こんなことは誰も喜ばないのだから言うべきではなかったという人もいるし、もう少し経ってファン層が大きくなってから振り返りとして言ってもよかったという人もいる。ただ彼女は黙っていることもできたはずのことに敢えて触れた。それはとても正直で真摯な事だと思う。とても彼女らしい。


自分の感情に整理を付けるためにも敢えて書こうと思う。Aira MitsukiSaori@destinyの両者の活動はファンに未練を残すようなとても不自然な形で終わりを告げ、ファンは胸に業と思いを抱えて続けたままでいた。デートピアを離れたプロデューサがサウンドを手掛け、同じ(様な)サウンドが鳴っていて、初期の現場に集まったファンは結果的にかつて同じ現場にいた人達の集まりだった。プロデューサが公園でCD-Rを手売りした時、そこにはクルミはいない、しかし集まった人たちは皆顔見知りだった。


クルミクロニクルAira MitsukiSaori@destinyを重ねて見ている」、というのはある意味では正しく、ある意味ではまた間違ってもいる。例えが適切か微妙なところだが、それはイアン・カーティスを失ったJoy Divisionと、その後のNew Orderのようなものだ。Joy Division信者は多いかもしれないが、New Order時代しか知らない人達にとってはJoy Divisionなどどうでもいいし、陰鬱だが美しいJoy Divisionの影を振り切るように、New Orderはエレクトロニックダンスを取り入れ進化を続け、全く違う地平を切り開いた。ただ、プロデューサが同じでなければ、路上で歌っているクルミを知ることも無かったであろうし、彼女のステージを観る事も無かっただろう。それはどちらかといえば彼女に出会うための「縁」みたいなものだったのだと思う。彼女を見つけるための幾つものキーワード、それが縁だった。そしてクルミクロニクルのライブに行き、感想ツイートなどを検索してみればすぐわかる事だが、彼女が愛される所以は彼女の人柄の魅力、そこなのだ。サウンドプロデューサが同じなのだから、それこそPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅのように楽曲やパフォーマンスの比較対象として語られ続けることはあるだろう。しかし、少なくともその日現場に集ったかつてのデートピアファンに、死んだ息子に似せてロボットを作る天馬博士のようなものを感じることは無かったし、そこにいた全員が、かつてのステージの再現ではなく、もっとクルミクロニクル自身による先の展開を待ち望んでいた。


どちらにしろ、Aira MitsukiSaori@destinyの「当時の世間的扱い」は「Perfumeフォロワー」でしかなかった。現場にいればそれが別物だと理解できても、それは外には伝わらない。クルミクロニクルはその先に進んで、Perfumeフォロアーという雑すぎる括りをひっくり返していく存在であってほしいし、それは後ろ向きな過去の再現によって成し遂げられるものではないだろう。




20130712 クルミクロニクル東京初ライブ「EXTRAVE!!! vol.2」@新宿LOFT

クルミクロニクルを見ながら、その視線の先にはSaori@destinyの亡霊しかいないというのはあまりに両者にとって残酷な事だと思うし、デートピアのアイドルを応援したファンの抱えるトラウマや業は海よりも深い。そういう物を断ち切ってクルミクロニクルを応援することが贖罪になるのかどうかは分からない。ただ、Saoriの影ではなく、クルミクロニクル自身を見なければいけないな、と思う。


http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20130808/p1


20131013 クルミクロニクル 初ワンマンライブ@CUTUP STUDIO


クルミクロニクルを聴くときにSaori@destinyAira Mitsukiへの贖罪みたいな感情が自分の中から払拭できないのがとても複雑で、おそらくほとんどのファンも同じことを感じてはいるだろうけれど、それでも今はもっと未来を、彼女自身を見つめようという空気が、彼女の初ワンマンライブを観ようと集まった人達の中にはあった。確かにそう感じた。


http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20131113/p1


Joy Division - Love Will Tear Us Apart


New Order - The Perfect Kiss




クルミクロニクル - KITTY


クルミクロニクル - 3/19リリース「Second Spring EP」CM


クルミクロニクル - Prismic Step



  1. 活動振り返りスライドショー
  2. KITTY
  3. 午前11時
    • MC
  4. クルリクル(ふぇのたすRemix)
  5. ブロークン・トイ
    • MC
  6. Rainy Starry Night
  7. VOICE(ft.USAGI DISCO)(新曲)
  8. 16(ft.USAGI DISCO)
  9. FLIGHT(新曲)
    • MC
  10. Daft Punk - One More Time(USAGI DISCO Remix)
  11. Candy Trip(新曲)
  12. twinkle linkle line
    • MC
  13. ススメ!
    • MC
  14. Prismic Step
  15. クルリクル
  16. Make New World
  17. 輝け空色少女
    • EN
  18. 午前11時(USAGI DISCO Remix)
  19. オレンジ
    • EN2
  20. 君がくれたストーリー(新曲)
    • EN3
  21. 輝け空色少女


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