Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 クルミクロニクル東京初ライブ/大森靖子/南波志帆「EXTRAVE!!! vol.2」@新宿LOFT



面白い対バンだけれど平日。仕事帰りのスーツのままこういう面子を見たくない。とはいえ、休日にこの面子を集めてもターゲットとなる客層は大体既に現場で予定が埋まっているだろうから来ないよ、とはスタッフの談。

大森靖子

大森靖子を初めて生で観る。「アイドルのイベントに抱き合わせで出るのはもうこりごり、楽屋は可愛い子だらけ、可愛い子と一緒のイベントだと家を出るときに落ち込む」と冒頭に吐き出してからのライブ。衝撃。怖い。剥き出しの感情をこういう音楽でぶつけられることに慣れていないから。
彼女と椎名林檎を比較する言説が多いのは、彼女自身がイメージソースとして椎名林檎を引用している部分が多いが故にそうなるのだろうけれど、そもそも彼女について語るためのボキャブラリーを持たない虚構の世界を愛するアイドルファンが彼女を見た時の動揺を、自分がよくTwitter経由で目にするからなのだろう。自分も同様に彼女を語る言葉を持たない。こういう人がTIFに出て、アップアップガールズ(仮)と一緒に踊って、アイドル文脈から評価されていくる過程。RIJFで西脇さんが言っていた「ロックとは夢とか信じるものを想い続けること」という言葉は、細野晴臣御大の「テクノとはサウンドではなく意識」という言葉を思い出させる。


20130712 EXTRAVE!!! vol.2 大森靖子 (over the party)

大森靖子】歌ってみた【ハロプロ縛り】



クルミクロニクル

クルミクロニクル、東京初ライブ。今年1月から動き始め、4月以降路上ライブを数回経験しただけの、大阪のコーラス部の女子高生、という以外に素朴さ朴訥さ生真面目さしかない女の子。彼女の2枚のCD-Rと僅かなライブを一部の人達が熱狂的に求めて止まないのは、はっきり言ってしまえば、「クルミクロニクル」というプロジェクト自体が、うやむやな形で活動を休止したSaori@destinyデートピアを離れた楽曲制作スタッフをそのまま受け継いでいる唯一の存在だからだ。一部で高い評価を得ていたダンスポップサウンドだけでなく、彼女の素朴過ぎる人柄まで含めて。クルミクロニクルを見ながら、その視線の先にはSaori@destinyの亡霊しかいないというのはあまりに両者にとって残酷な事だと思うし、デートピアのアイドルを応援したファンの抱えるトラウマや業は海よりも深い。そういう物を断ち切ってクルミクロニクルを応援することが贖罪になるのかどうかは分からない。ただ、Saoriの影ではなく、クルミクロニクル自身を見なければいけないな、と思う。

  1. 輝け空色少女
  2. 午前11時
  3. クルリクル
  4. ススメ!ススメ!


20130712 EXTRAVE!!! vol.2 クルミクロニクル



南波志帆

南波志帆、バンド無し、竹中夏海振付楽曲中心のライブ。状況を変えんがためにandrop赤い公園に制作を依頼したり、アイドル振付までやってみたりという、試行錯誤し過ぎて足元が見えなくなっている感がどうにも辛かったけれども、この日のライブを観て、今そういった方面の楽曲が失っているのは、南波志帆の透明な声の湛える郷愁のような切なさ、青春時代を振り返る時の軽い戸惑いと恥ずかしさ、淡い恋心、そういった部分なのだろう、と一人で納得した気分になった。そう一方的な思い込みをさせる位に、tofubeats君の書いた「LOST DECADE」の恥ずかしい位の青臭さはとてもキュートで、トーフ君がワーナーミュージック・ジャパンと契約したことが報道されたその日に、ライブ会場最前で南波志帆の歌う「LOST DECADE」を聴いたことは自分にとってとても重要な事だった。音楽は現場の空気と共に記憶に残るから。

  1. Ram Rider / VOICE -とおくのきみへ- starring 南波志帆
  2. 少女、ふたたび
  3. 「ありゃりゃ?」
  4. ばらばらバトル
  5. tofubeats / LOST DECADE feat.南波志帆


tofubeats - LOST DECADE feat.南波志帆



プー・ルイ

BiSプー・ルイのソロ、ギターとベースは高校時代からのバンドメンバー、ドラムはBiSの新メンバーのファーストサマーウイカ。誰に聞いても「BiSはエモい」と判を押したように同じ言葉が繰り返し返ってくるのが気味が悪いと思っていた。というか、「エモい」という言葉の指し示す所がよく分からなかった。東日本大震災の前日に初めて渋谷GladでBiSを観た時は、そんなものよりももっと幼稚で悪趣味なレベルのアイドルロックごっこの性質の悪さ、特に菊地成孔のカバーをやる辺りの賢しさに嫌悪感すら抱いたのだけれど、世間様の良識に対して不器用で生身をさらけ出すことしかできない幼稚さと生臭さを暴力に変えて対抗するような姿勢が「エモい」というのならエモいのだろう。エモかったです。怖かったです。


プー・ルイ - I'm coming