Aerodynamik - 航空力学

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観劇記録 「マイマイ新子と千年の魔法」 日本 2009年公開



チラシを見ると「文部科学省選定(家庭向き)」なんて書いてあるものだから、なんだ子供向けの魔法ファンタジーアニメか、なんて思って完全スルーしていた。予想通り興行のスタートダッシュに失敗し、あっという間に公開打ち切りになったのだが、その一方でネット上での評価は高く、興行の継続を願う署名運動まで起こっている事を知り、観に行ってみる事にした。


都心での上映は先週に打ち切りられ、阿佐ヶ谷ラピュタで1週間だけのレイトショー。
ジブリ映画のような冒険や壮大なアクションもない。それどころか、ストーリーに起承転結もなく、目的や越えるべき壁もない。カタルシスもその引き金もない。ただ昭和30年代の山口県防府の田園風景に暮らす少女の暮らしと友達とのふれあいを描く、それだけである。この映画の魅力を言葉にするのも難しい。これは興行が失敗してもしかたがない、そう思わせる。しかし、何故かこの映画を見ている間、自分は何度も眼鏡を外してスクリーンを歪める涙を拭き取らねばならなかった。


昭和30年代とか田園風景などを背景としながらも、「三丁目の夕日」的昔は良かったノスタルジー映画ではない。かといって、何が良かったのか、これは言葉で説明するのも難しい。
ネタバレにもならないので触れてもいいと思うが、タイトルで「千年の魔法」と言いながら、この映画は魔法は一切出てこない。多分このタイトルのせいでファンタジー映画として切り捨てられ、大人の観客を失っているものと思える。ではこの映画でいうところの魔法とは何なのか、それは「子供の想像力」である。想像力を通して、子供は遠い千年も過去の世界とつながってゆく。それは「ブラタモリ」を観る時の興奮に近い。子供の想像力、過去と現在の並行して流れる時間、過去から未来への知識と経験の伝承、そういった要素が絡み合いながら美しく流れてゆく。


サントラもなかなか良く*1、感動を味わった後のエンドロールで流れるコトリンゴはそれだけで再び胸を熱くする。


上映後、片渕須直監督・上原伸一美術監督の挨拶があり、平日のレイトショーでも満席で見れない人が何人もいたという事で、26日以降この映画が見られなくなってしまうという事態はなんとか回避しようと交渉中との言葉もあった。機会があれば、ぜひとも劇場で観ておいて欲しい。こんな映画をアニオタとロリコンだけのものにしておくなんて!


※ちなみに阿佐ヶ谷ラピュタは小さな箱のため、レイトショーにもかかわらず午前中から整理券を配布、夕方にはなくなってしまう状態となっているのでご注意を。







主題歌はこちらに収録。

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*1:一点「シング」だけはちょっと違和感を感じた