渋谷シアターNにて鑑賞。90年代を代表するUKインディーロックレーベル「Creation Records」のドキュメンタリー。レーベル・オーナーのアラン・マッギーはもちろん、Oasis、Primal Scream、Teenage Fanclub、My Bloody Valentine、The Jesus & Mary Chain、Ride、The Super Furry Animals、Slowdive、The Boo Radleysといったバンドのメンバー達のインタビューと彼らの音楽を中心に構成されている。
グラスゴーでレーベルを立ち上げ、80年代にThe Jesus & Mary Chainをマネージメントしながらヒットさせて、1991年にはロンドンでPrimal ScreamとMy Bloody ValentineとTeenage Fanclubのアルバムを同時にチャート上位に叩き込んでUKロックの代表的存在となり、続くOASISの爆発的なブレイクで、自らの手に余る巨大すぎる成功を手にするも、最終的には「ロックンロールに情熱のない人間達」である大資本ソニーに吸収されていく過程は、当時のあの空気を覚えている人にとっては堪らない内容だろう。
前半は淡々と歴史の事実を追うような、ややかったるい展開なのだが、中盤から流れは一転、とんでもなく面白くなる。パンクとスピード(覚醒剤)ばかりだったCreationのメンバーが、アシッドハウス全盛期のマンチェスター:ハシエンダを訪れ、そこでエクスタシー(MDMA)とダンスミュージックのサイケデリアを覚えてしまうのだ。そこからはこの映画はひたすらドラッグ漬けの話しか出てこない。音楽制作の場にはAndrew Weatherallが大量のドラッグとダンスミュージックを携えて現れ、 Creationのオフィスは金曜の夜から週末はずっとドラッグパーティーで、月曜日には誰も週末の事を覚えていない。そうやって生まれてきたのがあの「Screamadelica」で、エクスタシーの持つ多幸感や他者との共有感が、UKのロックカルチャーに如何に影響を与えたのか、非常に分かりやすい一枚だ。ひたすらどうしようもないほどドラッグに溺れてレーベル運営がめちゃめちゃな状態となり、そういうドラッグ文化の反動として、OASISが現れ、オーナーが中毒で入院し、ポップスターの誕生とともにドラッグパーティーの日々は終わりを告げる。
この映画と同じタイミングでシアターNで再公開される、UKの若者文化を描いて90年代のアイコンの一つにまでなった96年公開の「トレインスポッティング」。渋谷のミニシアターブームの火付け役でもある渋谷シネマライズで公開されて、当時それはもう凄まじい影響力があったのだが、あれも最初から最後までドラッグ漬けの映画だ。いくらなんでも酷過ぎて、あくまであれは映画の世界なのだろうと思っていたが、このドキュメンタリーを見ると、UKカルチャーにおいて、ドラッグのあり方というのは誇張でもなんでもなく日常的なレベルで酷く蔓延しているし、それによって文化が動いているというのも実感できる。
個人的な思い入れも含めた感想を言うと、Creation Recordsを変えさせたハシエンダ、そしてFactory Recordsは凄い、という事でした。「24 Hour Party People」を見直してこよう。あと「Screamadelica」のリマスターが出たのだから、「Loveless」も何とかしてほしい。これは切に願う。