Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 メタモ振替イベント「Typhoon Party 1」@代官山UNIT


東日本大震災の復興支援を目的として開催されるはずだったフェス「FREEDOMMUNE 0<ZERO>」は、皮肉にも、自然の脅威の前に、当日に中止を余儀なくされた。そして、伊豆修善寺で行われてきた日本最大の野外ダンスミュージックフェス「METAMORPHOSE」も、台風を目の前にして、当日朝に中止が告知された。野外フェスとはそういうものだ、と一言で終わらせることのできない夏の出来事だった。
しかし、「METAMORPHOSE」関係者の動きは早かった。海外から招聘した沢山のミュージシャン達を、無駄に帰国させることはしなかった。中止当日とその翌日の二日に渡って、急遽都内の4つの箱を押さえ、「Typhoon Party」としてイベントを開催したのだ。それらの一つの箱でも、一組いれば十分すぎる位に豪華なメンツだった。


Unitには開場前から並んだが、開場一時間後にようやく会場に入ることができた。そしてほどなく、Unitは入場規制となった。フロアはメタモの主な客層である30代から40代のクラブミュージック愛好者でぎっちりと埋まり、身動きも出来ず、サウナのように蒸し暑くなっていた。しかし、みなそれを覚悟の上で、この夜を楽しもうと集まったのだ。



残念ながらTalvin Singhは、ダブステップドラムンベースに合わせてタブラを叩きまくる姿を数分観れただけだった。


ドイツ在住オランダ人Dave Huismanのユニット「2562」。洗練されたハードでテクノ寄りのダブステップに、デトロイトテクノ的な哀愁のあるメロディや、ビキビキのアシッド。固いキックがフロアを打ち付ける。


そして、Orbital。「Orbital Soundsystem」名義での登場、つまりDJだったが、あの独特の下降コードというかリフというか、一聴して分かるOrbitalサウンドがほとんど。しかし、所謂彼らの往年の名曲は殆ど使用せず、なおかつそのどれもが「今現在の音」にアップデートされており、1989年デビューとは思えない新鮮さを持ってフロアを沸かせた。90分の枠の中で、かつての定番曲は「Halcyon」と「Chime」だけだったし、それらも今の音にアップデートされていた。アップデートと言えば、あの特徴的な左右にライトの付いたメガネで今回も登場したハートノル兄弟だったが、そのライトはLEDになっていた。





Tim Deluxeは最初から飛ばしてフロアを盛り上げるが、何故かさっきよりもフロアが空いている。トイレ休憩ついでにUniceを見てみると、そこには大学生位の若くて可愛い女の子達が沢山いた。そういうことだ。土曜の夜に夜遊びがしたくてUnitに来た子たちはみなUniceかSaloonに避難していた。このサウナのようなフロアに噛り付いて踊っているのは、本来ならこの時間は伊豆にいたであろう、クラブミュージックが好きで好きでたまらないアラサーアラフォーの猛者だけだ。そこは、ナンパも無いし、アルコールの瓶を掲げて馬鹿みたいに騒ぐ輩もいない。Tim Deluxeもその空気を読んでか、サービスにUnderworld「Two months off」を持ってくる。大爆発するフロア。なんという加齢臭!




トリは、1988年のアシッドハウス・ムーブメントの立役者、808 state。何度も「マンチェスターから来たぞファック!」を繰り返す口の汚いオヤジ達。ドラム、ベースのメンバーまでいる。なんと生バンドセット。しかもハードコア。さらに言うと猛烈に演奏が下手。何なんだこれは。「コレジャナイ」感が凄い。超名曲「Pacific」のブラスも生だったけど、ドラムがドカドカ言い過ぎていて、楽園感ゼロ。ハードコアバンドのノリで「Cubik」「In Yer Face」も披露したが、もうそれはまるでPendulumのよう。Orbitalとは別の形での進化に唖然。





WIREの時も同様の事を感じたが、セカンドサマーオブラブの時代から20年が経ち、リスナー層もかなり高齢化が進んでいる。いい年してそれでもフロアに足を運ぶアラフォーのダンスミュージック好きの中にいるのは気持ちがいいが、だからと言って若年リスナーがいなければクラブシーンは閉塞するし、その入り口になるのであれば、ナンパだけが目的のようなチャラい人種を切って捨てるわけにもいかない。激混みで汗だくなのに音楽ファンしかいないという、むしろ安心感のある快適なフロアで、自分は少し複雑な気分になっていた。




Orbital 20

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