Aerodynamik - 航空力学

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KOR=GIRLデビューアルバム全曲無料配信、デートピアは日本の音楽ビジネスに風穴を開けるか?

http://www.korgirl.jp/
http://natalie.mu/music/news/34272


Aira MitsukiSaori@destinyを擁するデートピアから、その二人と同様に総帥Terukadoがプロデュースを手がける、KORG Wavedrumを叩く女子ツインヴォーカルユニット「KOR=GIRL」がiTunes配信デビューしたのは5月。7/21にはミニアルバムがリリースされる。しかし、そのアルバムの音源は、昨日から既に公式サイトで全曲無料配信されている。残念ながら、どの曲も3分半でフェイドアウトしてしまうため、完全な無料配信とは少し異なり、試聴音源の域を出ないものではあるが、公式サイトや各種メディアでの報道を見る限りでは、「全曲無料フル配信」ということになっているので、そういう仕掛けを意図したものなのだろう。


この手の分野では先駆者である平沢進、あるいは最近のネットレーベルで最も動向が注目されているMaltine Records、彼らの音源も、ネット上で無料配信されてきた。しかし、メジャーレーベルの土俵でそれをやることは難しく、平沢氏はその為にメジャーとの契約を切ったほどだ。Nine Inch Nailsの無料配信や、Radioheadの「リスナーが払いたいだけ払う」配信があっても、制約の多すぎる日本国内では到底無理だろうと指を咥えて見ているだけだった。


デートピアは、早くからYoutube*1ニコニコ動画*2に公式チャンネルを構え、リリースされる楽曲を全曲試聴できるようにしてきたし、中にはフルサイズで試聴できる曲もある。そういうことには積極的だった。が、試聴と無料配信は話が違う。
いくつものニュースサイトやブログに取り上げられ、金をかけないでできる最大のプロモーション。いや、そんな簡単な話ではない。日本における著作権意識の変化をさらに加速させ、下手をすれば音楽業界自体を崩壊に導くトリガーにもなりかねないし、もしかしたら、楽曲の相対的価格を下げて、もっと皆がいい音楽を気軽に購入して楽しむようになるかもしれない。


公式サイトに掲げられたTerukadoのメッセージ。

ミュージシャンは死なない


僕のプロデュースする楽曲が
いくつかの、違法アップロードサイトで、
無料配布されている。
ここ数年ずっとだ。
なぜだか、リリース前の音源が
そういったサイトに上がってたりする。
世間では、流出っていうらしい。
僕のパートナーのスタッフは、
楽曲を守ろうと、必死になって
削除するよう督促をかけている。
応じるサイトや応じないサイト様々だ。
でも、いずれ音楽は無料になる。
iPhoneならYOU TUBEが僕のハードディスク
みたいなもんだ。
いずれ音楽は無料になる。
みんな反対するし、問題もあるのかも
しれないけど、僕の新曲すべて無料
配布しようと思う。
たくさんの人にきいてもらえたら
すごく嬉しいよ、
僕らミュージシャンやアーティストは死なない。


Terukado


http://www.korgirl.jp/fde/mnd.html


そして、各種メディアに送られたメッセージ。

Think differentのキャッチコピーでコンピューターを変えたアップル、ハイスペック路線に進んでいたゲーム業界に一石を投じたWiiのように、音楽を送り出している僕らのような人間も、変わらなければならない。コンテンツを記録したモノを売るという考え方を離れ、音楽がもっと可愛がられる、楽しんでもらえる、音楽体験を提供していかなければならない。発想を転換していく第一歩にしたいと思っています。


http://www.inmusic.jp/ano/news/korgirl.php

「僕らミュージシャンやアーティストは死なない。」などとかっこいいことを言うが、いくらかつて自曲をオリコン1位や紅白へ送り込んだ人間とはいえ、同じ事を主張してきた坂本龍一とは立場が全く違う。売れなければ、ミュージシャンは食べていくことはできない。それでも、あえてそう言うのなら、その覚悟はあるのだろう。


前述の通り、この音源はフルサイズではなく、完全無料配信ではない。そこが、この画期的なはずの行為を不完全なものにしてしまっている。いつもの、デートピア一流のインパクト勝負でしかない。けれども、Terukadoの、既存の枠組みを引っ掻き回したいという意図は十分に伝わった。いいだろう。1,575円を払って、このミニアルバムを買うよ。







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