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観覧記録 南波志帆 初ワンマンツアー「THE NANBA SHOW 『FANTASIC STORY』 TOUR 2011」千秋楽@渋谷duo MUSIC EXCHANGE



南波志帆にとって記念すべき初のワンマンライブツアーは、東京と大阪、そして出身地の福岡の3か所で行われ、この渋谷公演が千秋楽となった。


ギター岩谷啓士郎、ベース須藤優、ドラムNona Reeves小松シゲル、キーボードSunnyと定番のバンドセット。全員黒シャツに小さなリボン。オタマジャクソンにもリボン。そしてステージに現れた南波志帆も、頭に大きな黄色いリボンが。衣装は、Candy Stripperで揃えたような、わりとエグ目のポップなもので、これまで何度も彼女のライブを観てきた中でも無かったその印象に、少々面食らう。それは爽やかな白や水色を纏ったジャケット衣装だったり、シティポップス的サウンドとしてのイメージの中で組み上げられた清楚でキュートでシンプルな脳内イメージを外れたからで、18歳の女の子にしてみれば何のことは無い話ではある。多分自分は南波志帆を通して、その後ろにコトリンゴ土岐麻子Cymbalsを見過ぎていたんだ、そう思った。




それはそれとして、この日のライブが、これまでとは意趣の異なる「特別なもの」になるだろう、という事前の予想は、公演の1曲目に、彼女が15歳の時のデビューアルバム「はじめまして、私。」の1曲目「ストーリー」を持ってきた時点で、既に確信に変わっていた。福岡から上京してきた中学生は少しずつ成長を続け、そして今年に入って明らかに実力を上げた彼女だが、大人と子どもの間を揺れ動く18歳をテーマにした今年の活動は、ある意味この年の集大成たるこの日のライブにおいて、「子どもの南波志帆」を振り返り、「18歳の南波志帆」を見せることで、完結を迎えるのだ。


前半のポップな楽曲の間に、コトリンゴ作の「ふたりのけんか」が。このツアーが初披露。コトリンゴの書く楽曲は、他の楽曲達に比べてやや難解な形式と独特の深みを持つ。ヴォーカリストたる南波志帆コトリンゴの楽曲を表現しきるには正直まだスキルも経験も足りないと常々感じていたが、この「ふたりのけんか」で、ようやく南波志帆コトリンゴの楽曲をモノにしたのではないだろうか。それを実感できる、若さゆえの心の痛みと逡巡を感じさせる深みのある歌声だった。


一旦バンドは捌け、ピアノ音に定評のあるROLAND Fantom-X8と椅子がステージへ運ばれる。今回のツアーでは、会場ごとに異なる楽曲の弾き語りが披露された。福岡では斉藤由貴「MAY」、大阪は牧瀬里穂「Miracle Love」という、絶妙過ぎる選曲だったが、ここ東京で披露された弾き語りは、松田聖子赤いスイートピー」。やや緊張の見えるピアノに、透き通った声が重なった時、その美しさに、息を飲んだ。自分の呼吸の音すらその音を汚すようで、ただ息を潜めて、その会場の空気の振動を静かに受け入れた。経験や技巧ではどうにもならない、透き通った少女だけが描ける世界。この時ばかりは、この美しい瞬間が永遠に続くことを願った。多分これは罪ではない。




そんな感傷に浸りつつ、再び彼女の成長を意識させる意趣として、「プールの青は嘘の青」と「たぶん、青春」という2曲が続けて披露された。「プールの青は嘘の青」は、これを録音した2年前当時に、18歳の自分を想定して歌ったものであり、そして、「たぶん、青春」は、「プールの青は嘘の青」の2年後の世界を歌ったものだ。キリンジ堀込兄による文学バラード「プールの青は嘘の青」を、かつてよりも情感を込めて歌い終えた後、南波志帆は一旦ステージから捌け、バンドがゆったりとしたジャムで間をつなぐ。そして再び現れた彼女は、先ほどよりもよりエグ目のきついポップな衣装、アイラインとアイシャドウにはきつめのメイクが施されていた。そして上京後の寂寥感を歌う「たぶん、青春」。子どもから大人への演出にしては、やはりいつもとは印象の異なる、衣装のやや裏原かぶれの過剰なポップさが前に出ていたが、その変化の演出の意図は伝わったと思う。




次のMCで会場に声出しさせ、会場を暖めて後半戦スタート。アップテンポでダンサブルな曲を固めていつものように一気に駆け抜ける。最近導入された「それでも言えないYOU&I」前のカオスパッドセッションでは、カオスパッドからビートを叩き出し、バンドと軽くジャムる。


踊っているうちに、あっという間のラスト。最後のMCで、南波志帆は、自分を語りだす。信頼する人との別れ、歌手としての自信と不安。何度も福岡に帰ろうと思った。でも、ステージに上がって観客を見る度、そしてスポットライトを浴びる度に、歌うことが自分の天職だと思えるようになった。それは観客の皆さんのおかげ。そして、デビューしたての頃は分からなかったけれど、今なら胸を張って、歌うことが皆さんへの恩返しと言える、と。そして、デビューアルバムの最後の曲「はじめまして、私。」。


デビューアルバムの1曲目から始まり、デビューアルバムの最後の曲で本編を終える。「18歳の南波志帆」が「子どもの南波志帆」に立ち返り、現在の視点で過去を歌い、過去と現在と未来の間を揺れ動く「こどな」、18歳という微妙な存在のリアリティを描く試みは、ここに完結した。




もはやこのままアンコール無しで終わってもいいほどの充実感ではあったが、アンコールでは、緊張の糸が切れたような感じのテンションで、物販紹介やコール&レスポンス、客との合唱などで、再び会場を一体にしてライブは終了。来年からは、また違った南波志帆が観れるであろうことと、テクノばかり聴いてきた自分のボキャブラリーでは、シンガー南波志帆の魅力を表現することなど到底できないな、ということを確信しつつ、会場を後にした。




@nanba44
南波志帆
南波志帆です☆きのうはワンマンツアー千秋楽。最高でした。会場にいるみんなが笑顔で感動的な、夢のような時間。一生忘れない。やっぱりこれが私の天職だと確信しました。みんな、いつもありがとう。大好きです。#nanba44 link



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