Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 Saori@destiny「ワンマンLIVE in Glad」(事実上のラストライブ)@渋谷Glad


今年の年頭、ファンの間に激震が走った。


過去にPerfumeが表紙になった事もあるフリーペーパー「UNGA!」のNo.140号は、「Aira Mitsuki × Saori@destiny」コラボユニットを表紙にして、2011年の大晦日に発行された。

Saoriさんのソロ「LAST SONG」ですが、このタイトルが歌詞の中にも出てきて、そこが強く印象に残りました。こちらはどういうイメージで?


Saori@destiny:ええと…、これ、言ってもいいのかな?実は今回のリリースで、Saori@destinyとしての活動が最後になると思うんですね。だからソロの曲で、“ラスト”というのを強調したくて。でもあまりストレートに書いても聴く人を戸惑わせちゃうと思ったので、恋愛のお別れの曲と掛けたんです。


−…それはかなり衝撃の発言なのですが。アーティスト活動を卒業されるという事でしょうか?


Saori@destiny:はい。だから例えば<忘れない Our LAST SONG>っていう歌詞があるんですけど、恋愛ならこの場面であまり“Our”って使わないですよね。その“私たち”の中にファンの人への思いも込めてたりとか。


−それはすごく寂しいですが…、このことをファンの方々が知った時に、すごく意味のある、大切な曲になりますね。


Aira Mitsuki:これ、UNGA!さんにだけ書かれていたらものすごくレアですよね。今の流れを聞くと分かってもらえると思うんですが、私にとってもすごく心に残る作品になってます。作った時は割とポーンとできちゃったんですけど、これからの自分達の人生を考えても、一緒にできて良かったし、今後ずっと心に残る作品になると思います。


Saori@destiny:ソロだとこんなにバラエティに富んだ内容にならなかったし、コラボでしかできない作品だと思います。だから自分の中でもすごく気に入ってるし、皆さんにとっても思い出に残る一枚になってくれたら嬉しいなと思います。

それはあまりに唐突過ぎる内容だった。売れる売れないは別として、Saori@destinyのアルバムは、タワレコBounceに全ジャンルを通しての年間ベスト30作に選出される、RHYMESTER宇多丸2009年度マブ論年間第4位に挙げられるなど、高い評価を受け、そしてキーボード二人を従えたライブは「観客をダンスさせる」というベクトルにおいて異常なほどのクオリティを更新し続けていた。現場にいたファンの誰もが、ここまで質の高いプロダクトが「世間」の評価を得られないことにイライラしつつ、毎回狂ったように踊り続けていた。あらゆる物事は全て永遠には続かないとしても、こんなに唐突な幕切れなど、誰も想定していなかった。


そして、「これ、UNGA!さんにだけ書かれていたら」というAiraの言葉、それもまた事実だった。Saori@destiny本人も、事務所も、この件に関して、一切言及することはなかった。本当に、この限られたほんの僅かな場所でしか配布されていないフリーペーパーの記述以外、誰も何も事実を語ってくれなかった。このフリーペーパーが配布された後に何度かライブがあったが、そこでも彼女も事務所も一切何も語らず、いつものようにライブをした。一体どういう事なのか、いつその日が来るのか、なんの情報も与えられなかった。ファンは混乱と絶望の中で必死に手探りをした。そして、今になってその意味が分かる、幾つかの「フラグ」を見つけた。


INMUSIC:今後の活動にも期待してます!来年、2012年はどんな年にしたいですか?


Aira:2011年より幸せになりたいですね。世の中的にも色々な事が良い方向に向かうことを願っています。


Saori:色々な事を完結できる年にしたいなって思っています。


Aira Mitsuki×Saori@destiny 「×〜PARK OF THE SAFARI」インタビュー
http://www.inmusic.jp/ano/interview/post_385.php

コラボあいらちゃんとできてよかった


みなさん、そしてあいらちゃんファンのみなさん本当にありがとうございました


この五年間のいい思い出ができました


Saori@destiny Official Blog Powered by Ameba
http://ameblo.jp/saoridestiny/entry-11118870200.html


しかし、本当に、はっきりとした声明は、一切なされなかった。「その日」がいつになるのか、分からないままに一月が過ぎていく。1/23に更新されたブログが、恐らく「その日」を指しているのだろう、しかし、本当のことは誰も分からないままだった。

4月1日 ワンマンライブ


ぜひ きてください。


毎回そうだけど…


1日、悔いのないようにたのしみたい!


楽しみましょう


http://ameblo.jp/saoridestiny/entry-11144333015.html


4/1のワンマンライブは、いつも通りに「Live in Glad」という何の工夫もないタイトルで行われた。結局この日がラストライブだとは、事務所もSaoriも一言も言っていないし、何の発表もしていない、そんな状況のままにこの日を迎えてしまった。これが最後の公演になることに気が付かなかったファンもいるだろう。いや、事務所も本人も何の言及もないのだから、むしろこれがラストライブという事自体がファンの妄想なんじゃないか、そうとも言える。込み入った状況のまま、当日を迎えた。


多くのファンが集まった。もう現場では見なくなった、初期の古参達も再び顔を揃えた。

  1. Discovery
  2. Collage
  3. Baby Tell Me
  4. ステンレス・スターライト
    • MC
  5. プリズム
  6. Lonely Lonely Lonely
  7. シンパ
  8. ファニー・パレード
    • MC
  9. Play
  10. Shangri-La
  11. パーフェクト・ワンダーガール
  12. Sakura
    • MC
  13. My Way
  14. Wow War Techno
  15. Gamba Japan
  16. エスニック・プラネット・サバイバル
  17. Ez Do Dance
  18. I can't
    • EN
  19. ヒカリ・シンドローム
  20. サヨナラリヴァイバル
  21. My Boy
    • EN2
  22. LAST SONG
  23. I can't


完全に、ラストライブとしての内容だった。5年間積み上げてきたもの、そして2年前の「WORLD WILD 2010」リリースパーティー@渋谷DESEOから始まったキーボード二人体制と楽曲のエディットによる革命的なまでのフロアオリエンテッドなライブの集大成が披露された。
アンコールで、唐突にインディーズデビュー曲「My Boy」。秋葉原の石丸ソフト1で初めて彼女を見た時のことを思い出した。あの時から、5年間彼女を見続けて来た。一度に大量の思いが込み上げてきて、そこから馬鹿みたいに流れ始めた涙は、結局最後までずっと止まらなかった。


Saoriは、懇意にしてくれたGladの鈴木店長へ感謝の言葉を伝え、店長をステージに呼んで「これからもGladをよろしくお願いします」と伝えた。しかし、それでも彼女は、とうとうライブの最後まで活動休止を明言しなかった。「LAST SONG」と、みんなと盛り上がれる大切な曲だと言って、二度目の「I can't」を披露して、ライブは終わった。恐らく、ファンの誰もが、Saori本人の口から、「その一言」をはっきりと伝えて欲しかった。だから、何も言わずにステージを去った彼女に対して、その言葉が聞きたくて、観客は再びアンコールを求めた。「本日の公演は終了しました」「この後はロビーで物販を行います」、デートピアスタッフの影ナレが3回聞こえたが、それでも観客はコールと拍手を止めなかった。「もうロビーでSaoriが物販を始めている」という状況がフロアに伝わってきても、それでも観客はロビーに聞こえるように、必死に声を枯らして叫び、手を叩き続けた。アンコールを求める拍手は20分も続いた。遂に、ロビーに続く階段から、Saoriが再びフロアに姿を現した。「今度こそ、最後の一言を言ってくれるはず」、そう誰もが息を飲んだ。しかし、Saoriは何も言おうとはしない。いや、何かを言おうとしたのかもしれない。観客の一人が叫んだ。「言うべき事があるだろう!」。フロアは静まり返った。しかし、彼女は隣にいたスタッフと二言三言言葉を交わした後、恐らくスタッフに促されたまま「あとは物販で」と言って、再びロビーに戻っていった。
みな、Saoriの言葉が欲しかったはずだ。一言、彼女の口から言ってほしかった。彼女は今回の件について、「言いたくない」のでは無く、「言いたくても言えない」状況なのだと、分かっていたとしても。





最後のライブが終わった。


結局、ラストライブだというのに、いつものようにライブ後に物販が行われていた。3500円買うと彼女と話ができるのだが、商品は3000円のものしか置いていなかった。相変わらずの事務所だ。
いつ終わるのかも分からない物販の長い列を眺めながら、デートピアのスタッフと1時間近く話した。Saoriの面倒を最初から見ていたそのスタッフは、「この件」については話せないと言った。双方に込み入った事情があるのだろう。だから、自分にはそれ以上踏み込むことはできなかった。ただ、以下の二点についてだけ、彼の口から確認を取ることはできた。



@Saoridestiny
Saori@destiny
おはよう♪昨日とはちがう朝。なにがちがうかいまだに実感できなくてぽかーんって感じ。昨日はありがとうございました! link
@Saoridestiny
Saori@destiny
最後にいただいたアルバム!!やばい!!みんなのメッセージ読みながら涙が止まらないよ。写真付き嬉しい!!なんかこれ読んでたら寂しさがこみあげてきた。ありがとう http://pic.twitter.com/sxsTQlkC link
@Saoridestiny
Saori@destiny
昨日握手のときみなさんがかけてくれたことば何回もぐっときちゃいました。曲のこと誉めてくださったり、こんなライブできる人他にいないよとか。他の人とひとくくりにされるのが好きじゃないからそうゆう言葉、素直に嬉しいです。 link
@Saoridestiny
Saori@destiny
ないものねだりっていうのはなんなんだろうね。めんどくさい感情だよね(笑) link
@Saoridestiny
Saori@destiny
寂しいなぁ。やっぱり。 link
@Saoridestiny
Saori@destiny
涙が止まらないよ。 link


そして、タイトルに「Saori@destiny」と冠されたエントリが投稿された。
http://ameblo.jp/saoridestiny/entry-11211140388.html

みなさん本当に本当にありがとうございました!


最後まで悔しい思いがあったし、どう伝えれば伝わるのか難しかった。


いつも通りにって言われても難しかった。


だけどみなさんの気持ちが本当に嬉しかったです

みんなも本当にお疲れさま。


出会ってくれてありがとう!


saori@destinyを作り出してくれたプロデューサー、スタッフ、すべてのみなさんありがとう!


この記事を読んでくれたみなさんが幸せでいられますように…☆


結局、ブログでも最後まで活動休止を「明言」しなかった。でも、もう十分だ。現場では、直接言葉で聞きたかったけれど、すべて終わってしまった今となっては、本人の言いたいことが「LAST SONG」という作品として残っている事に救いすら覚える。


自分にとって、デビューから活動休止まで、その過程をずっと見続けて来た初めてのアーティスト/アイドルがSaori@destinyだった。4枚のアルバムはどれも素晴らしい作品で、Perfumeのフォロアーから始まった活動は、いつしか他に類を見ない唯一無二のものになっていた。そのライブは、試行錯誤を繰り返しながら、当初からは予想も出来ないほどの極端な進化を遂げ、アイドルとクラブサウンドの融合において、極北に達していた。声質の尊重から生み出された独特の滑らかな歌唱法、徐々に開花していった作詞の才。そのプロダクトを作り上げた素晴らしさと、それをまともにプロモーションできなかったデートピアへの恨み言をも含めた愛憎、全部まとめて楽しい思い出として心に仕舞いたい。ありがとう、お疲れ様でした。











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