Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 The Black Dog@代官山UNIT

http://www.unit-tokyo.com/schedule/2009/10/02/091002_club_museum.php



90年代初頭、ハードコアへ向かっていったテクノシーンへのアンチテーゼとして、「インテリジェント・テクノ」(後にIDMと呼ばれる)を打ち立てたWarp Recordsの「Artificial Intelligence」シリーズ。その最重要作「Bytes」をリリースしたThe Black Dogが、遂に来日。


Black Dog Productionは当初Ken Downie、Ed Handley、Andy Turnerの3人によるプロジェクトだったのだが、Kenの極端な秘密主義やらネット上に限定した活動方針に対して他の二人が反発、プロジェクトは分裂し、EdとAndyはPlaid名義で活動。一方残ったKenは、ハッカー仲間のMartin Dust、Richard Dustの二人とThe Black Dogを継続中。
そんな経緯があるので、ライブはしない、写真にも絶対顔を出さないKenが、The Black Dogとしてライブをするということ自体がとてもレアであり、16年も飽きずに彼らの音源を聴いている身としては絶対逃せないと、足を運んだ。



今時わざわざThe Black Dogを聴きにくるのは、自分のような気合の入ったガチテクノオタの30代、メタモの人種と被ってるだろうと思ったが、UNITは妙に若い、しかもちゃらい人種が目立つ。若い人も聴くのか、それは嬉しいなと思いながらフロアへ降りる。
アーティストの意向で今日はフロアが禁煙とのこと。嫌煙家としては非常にありがたい。


27時、ライブスタート。ステージにはMartin Dust、Richard Dustが二台のノートPCを前に並んでいる。えええええ?二人?そう、まあちょっと考えれば分かる事だったんだが、Ken Downieはやっぱり人前に姿を現さなかった。常に顔を隠し人前に出ることを拒み続け、ネットの世界に深く潜る事を選んだ人間がそう簡単に出てくるはず無いよな・・・。
それから90分間、ステージ上の二人が出した音は、まさかの全編四つ打ちの古臭いハードテクノ。「インテリジェント・テクノ」と呼ばれた、あの偏執的なまでに純粋培養された美しい世界は皆無。WARP時代の曲も、GPRの曲も演奏せず。まあ踊るには踊ったけども、期待外れもいいところだ。


帰宅してから、2007年のライブ動画*1を見つけたが、まさにKen抜きの二人で、音は今回の方がもっとハード寄り。あえて情報を入れないようにしていたけれど、まさかThe Black Dogの看板を掲げてこんなライブをやっているとは、残念にもほどがある。好きな音が聴きたければPlaidのライブに行けということか。「The Art of Intelligence」と銘打たれたイベントだっただけに、どうにも納得がいかなかった。




まあそれよりも残念でならなかったのはちゃらい客層だ。こういう人たちもThe Black Dogのリスナーなのかと思いきや、ステージ最前でずっと大声で騒ぎまくり、「あたしエレクトロが好きだからこういうのつまんないー」「変態だよ変態なんだよこういうの聴いてる奴はよ」みたいなのが何故か大量にいて、調子に乗って暴れて酒をフロアにこぼすわ、女の子はベタベタと見知らぬ男に抱きつきまくり、男は女の子に声掛けまくって肩を抱いてベタベタしたり。
死ぬほどウザい。お前ら何しに来たんだよ、そういうのがやりたいならナンパクラブ行けよ、よりによってThe Black Dogでこんな客層って。本当に愚痴も言いたくなるよ。純粋に音を楽しむクラブと、ナンパクラブは完全に棲み分けてくれよ・・・。せめて後ろのラウンジでやってくれ・・・。
ライブ中もずっと大声で話してたので嫌でも耳に入ったのだが、どうやらちゃらいのは全員DJのゲストで遊びに来たらしい。DJのプレイ中には15人くらいがDJブースにかぶりつき。なんでDJの取り巻きってどのジャンルでもあんなにうざいんだろうな。


あのフロアには、かつてのAIシリーズを愛した人たちはほとんどいなかったんじゃ無いかと思える酷さだった。そもそもああいう音は過去のものになってしまったし、テクノにはロックのような「70sナイト」「パンクナイト」的なオールドスクール限定のイベントも無い。もうあの音をフロアで聴く事が出来ないのかと思うと、とても寂しい気分にならざるを得なかった。