- 20140802 TOKYO IDOL FESTIVAL
来年もTIFは開催されるだろうか。一時のブームと共に盛り上がったイベントではなく、フェスとして定着しただろうか。そういえば、TIFはアイドリング!!!あってこそのフェスなのに、アイドリング!!!を観ずに二日間を終えてしまっていた。
あれから一年、出演者138組(27組増)、来場者数4万1282人(8000人増)。かつてのメディア主導の異常なJリーグブームから、地元チームを応援するスタイルが徐々に定着していったように、アイドルブームも文化として定着しているのだろうか。基本カラオケで転換時間がほぼ不要という前提でも、持ち時間はたったの10分/15分(プラス物販時間)で100組以上が出演するフェスは他には無い、そんなフェスに4万人を動員できる特殊な状況が許容されているのだから、TIFは大規模な見本市とはまったく別個の空気がある、「外側」へのアピールにしては十分なエピソードだろう。
この巨大なフェスを成り立たせているのは、フジテレビの既存資産をできるだけ使いまわす徹底したコスト削減努力(と出演者の「無償」の努力)。今年は遂にメインステージもZepp Tokyo/Zepp DiverCityを借りずに、自前の「お台場新大陸」イベントステージに。ヴィーナスフォート内ステージもフジテレビ本社前仮設ステージへ振替。先日の事件を踏まえて物販と握手会も規律と監視によるコントロールが必要になり、場所を国際交流館からDiverCity南側駐車場へ移動させスペースを確保し、駐車場に入るには荷物検査及び金属探知機による身体検査。大きなイベントをやる手前、これ位はアピールとしてやっておくのが企業の仕事。もう規模が大きくなりすぎて、Sky Stageへの導線はどうしようもないし、湾岸スタジオは頻繁に入場規制、それでもTIFを続けるには何かを切り捨てていくしかない。RIJFが万人向けホスピタリティを優先させていく事を主眼に置いた結果様々な規制まみれになったように、何かを守るためには別の要素を犠牲にしていく、そういうものだ。何が楽しいのか、その本質的な所さえ失わなければ、多分この「快適な」フェスは続いていくだろう。
メインステージであるHOT STAGE「お台場新大陸」ステージはひたすら評判が悪かった、優先着席エリア、優先立ち見エリア、フリー立ち見エリアの3階層がそれぞれ別入口で、リストバンドを付けていても行き来できず、着席エリアも狭くて完全に飽和状態、踊りたいなら絶対に行くなというアドバイスを受けて、結局一度も足を踏み入れなかった。まあそうでなくとも毎回HOT STAGEで何かを見る事は殆ど無いのだけれど。「居酒屋えぐざいるPARK」と混在するような状況、規模を拡大していけば一般層との敷居が無くなり楽園が失われていく、もうそれは誰かがコントロールできるものではない。これは都市型フェスであり、そしてステージの選択肢は観客に委ねられている。自分で全てを選択すればいい。
スマイレージ : Smile Garden
9:30開演。既に灼熱のSmile Gardenに、中野サンプラザのハロコン当日、スマイレージが「急遽」オープニングアクトとして登場。とにかく魅力的なステージほど暑さが厳しいこのTIFで、考え得る最高の選曲「ドットビキニ」でフェスが幕を開け、そしてこの日Berryz工房の無期限活動休止のニュースを知らないままにTIFを選んだハロオタは踊り続ける。
「ドットビキニ」「ショートカット」を押さえたにもかかわらず、この野外フェスの特殊性を考えれば、いくら新曲とはいえ「嗚呼すすきの」「地球は今日も愛を育む」をセットリストに入れたのはちょっと外し過ぎた。武道館公演を終えてスマイレージが次のフェーズに入ったことをアピールしたいのかもしれないが、まああの場ではとにかく爽やかな曲を聴きたい、つまり板垣祐介か平田祥一郎編曲に差し替えたかった。「スキちゃん」でいいんだよ。
- ドットビキニ
- ショートカット
- 地球は今日も愛を育む
- 嗚呼すすきの
- 夢見る15歳
スマイレージ 『ドットビキニ』 (MV)
リンダ3世 : Smile Garden
東京デビュー戦が昨年のTIFメインステージという政治力を見せ付けたリンダ3世、今年はダントツに面白いアルバムをリリースして勝手に期待を高めるがSmile Gardenで「Mas Que Nada」「Brazilian Rhyme」をやらないというセットリスト、しかしブロステップとEDMとトライバルハウスとサンバが乱れ飛ぶステージは最高なのでフジロックのついでにBasement Jaxxの公演打って前座に出してほしい。Doll Factoryでのステージでは親族の人達がブラジルのフラッグを持って大騒ぎだったらしくそちらも観たかった。
- トベヨマイラ
- 未来世紀eZ zoo
- I'm a Happy Girl.
リンダ3世「ブラジリアン・ライム」(ワールドカップ2014 非公式テーマソング)
GALETTe* : Sky Stage
Sky StageこそがTIF、そう言っても過言ではないこの場所だが、エレベーターと屋上に上がれる人数制限のボトルネックはどうしようもなく、この時間に一度上がって終わりにする。この青空しか見えないステージ、四人のバラバラだけれど猪突猛進にこの瞬間を楽しむオーラ、それを遮るものは何もなく、爽快ディスコには重苦しすぎる黒のワンピース衣装が暑苦しいと思ったら、背中に大きくスリットが入っててなかなかにセクシー。
- Brand-New Style
- じゃじゃ馬と呼ばないで
- ダンスフロア☆フィーバー
GALETTe* − アイドル横丁夏祭り2014
Peach sugar snow : Enjoy Studium
一旦湾岸スタジオ内へ。オールドスクールなエレクトロファンクだけど安西史孝風味という凄まじいトラックに、ウイスパーヴォイスのラップとPerfume的なパキッとしたコレオグラフが乗るというとんでもないOverture初披露。後日これがライムベリー主催イベントに出演した際に小林清美先生がインスピレーションを得て作られたものだと知って更に衝撃を受ける。DDディスソング「ラムのラブソング」では「好きよ好きよ」を他人を押しのけてアピールするあの振付がファム・ファタール過ぎる、床に横たわって始まる「人魚」といい、小林先生のイマジネーションが暴走する今一番どサイケなステージ。
- Peach Sugar Snowのテーマ曲
- ラムのラブソング
- じゅもん
- 人魚 〜泡になって消えても〜
peach sugar snowのテーマ曲
Dancing Dolls : Smile Garden
この場所でこの曲をやらない訳が無い「湾岸ワンダーダーリン」。もっとド派手EDMにもできそうな曲なのに、基本的に抑え目な作りで、サビの裏のパッドの地味な音色とコード展開がたまらない。
Dancing Dolls『湾岸ワンダーダーリン Music Video MAIN Ver.』
OS☆U : Doll Factory
今更だけれどこのステージのネーミングセンスはヤバい。土着祭りのテンション。
Especia : Doll Factory
EspeciaがTIFでまともなフェス選曲で来る訳がない。遊び倒してこそのEspecia。Negiccoの出番前で一気に観客が増える中、バラードとミドルテンポチューン固め、「ステレオ・ハイウェイ」のポリトニックに対して明らかに不快そうな声があちらこちらから漏れるのをこの運営は楽しんでいるに違いない。
- GUSTO Intro
- Bay Blues
- ステレオ・ハイウェイ
- 嘘つきなアネラ
Prizmmy☆ : Enjoy Studium
15時後半から19時のクッション前のTPDまで、Enjoy Studiumはダンストラックを鳴らすユニットがラインナップされた。
ダンスユニットとしてのPrizmmy☆のかっこよさ。義務教育化されたダンスには、キッズダンスの憧れの存在が必要だ。プリズム☆メイツをバックにPrism☆Box仕様で登場。いつものように上手スピーカー前で踊っていると、横にダンスの先生っぽい女性に連れられてプリズム研究生みたいなちびっ子が沢山入ってくる、みな憧れの目でステージを観ている。クラブカルチャーとダンスカルチャーがイコールだとは思わないけれど、それでもこの子たちの存在に勝手に希望を見ずにはいられない。
- BOY MEETS GIRL
- ワンダ!!!!
- Jumpin'! Dancin'!
Prizmmy☆ / 「Jumpin'! Dancin'!」MV
Prism☆Box "RainBow × RainBow" MV
Cupitron : Enjoy Studium
シルバーの古典SFテイストの衣装から、早くも白を基調に赤青緑のメンバーカラーを入れた衣装を導入。このシルエットといい配色といい、あえてSF的な物で言えばZガンダムっぽい。ロボットレストランでMVを撮影した新曲「ユニコーンパレード」は分かり易いアイドルポップさが強調され、いわゆる「よっしゃいける曲」になった。早くもこっちを選んでしまったか。相変わらず緊張し過ぎのMCで、自己紹介まで通しで入念に何度も何度も練習してきたのだろう、焦りが走って自分の番なのに他人の自己紹介を言ってしまい、そのまま3人ともしどろもどろに。「言ってはいけない年齢を言ってしまった」かのようなおどおど感がまだ抜けない、コンセプチャルなユニットとは真逆のなんとも言えないこの間。Perfume大本さんが自己紹介で自分を「あ〜ちゃんです」と言ってしまったあれを随分久し振りに思い出した。
Cupitron『ユニコーンパレード』MV Full ver.
amihime : Enjoy Studium
http://www.girlsnews.tv/unit/170264
「2.5次元アイドル」を自称するLinQ姫崎愛未ソロ。今年の2月に活動開始が公表されてから初めて観る。ねじ式Pやtilt-sixPなどのボカロP曲、「メランコリック」カバー、パスピエやふぇのたす以降に一気にメジャーになりつつある「J-POPを基礎とするポップロックバンド」テイストを基礎としつつ、トラックはEDM的なあれか思いきやブロステップやジャズまで飛び出す意欲的変形ポップスもあり。松井寛ソロアルバムの「BlueFilm」も面白かったし、いずこねこの様に特殊な存在になるのかもしれない。ならないかもしれない。全然分からない。レコーディングは3月頃にやっていたはず、そのうちT-Paletteから出るのだろう。
サンミニッツ : Enjoy Studium
やっと観れたプラチナムのダンス系ユニット。他のユニットの性格から見てもっとガツガツしたものをイメージしていたが、印象的だった「パノラマワールド」は6月に解散した大阪のSKETCHのような青春ハウス歌謡色だった。
サンミニッツ(3min)_パノラマワールド
C・M・T : Enjoy Studium
名古屋のブレーキオイルやカーメンテナンス用品メーカーがスポンサーのCCI磨き隊ことC・M・T。昨今にしては年齢高めで今時無い感じの髪形メイク、ド派手な衣装とぎらぎらしたアッパーハウス歌謡が「野生のpredia」感。
名古屋モーターショー C・M・T「Get Wild」
lyrical school : Enjoy Studium
未南加入一周年。今年のリリスクは貫禄あったなあ。浮かれたパーティ感の中で小松ひなのリアルルードなラップスタイルがここまでいいバランスを生むとは。
- リボンをきゅっと〜PARADE〜プチャヘンザ
- S.T.A.G.E
- そりゃ夏だ!
- Photograph
- FRESH!!!
ライムベリー : Enjoy Studium
http://www.girlsnews.tv/unit/170237
この日のEnjoy Studiumのラインナップの並びはどう見てもダンストラックを解っている人が組んだのだろう、リリスクの次にライムベリーを置いてくれたのなら、今勢いに乗るヘッズを確実にロックするステージで答えるしかない。上手スピーカー前で踊っている限りは、いつもよりも大きなステージを入場規制にして、普段彼女達のパフォーマンスやステージマナーを全く知らない人達を前にしてよくぞここまでやったと思うし、現場にいる人間しか耳にしていないあの破壊的な「R.O.D.(HARD)」をラストに持ってきて、リリスクとの方向性ベクトルの違いを明確にアピールできたはずだ。まあ正直音のバランスは悪いしマイクの音は大して出ていなかった、ダンスパーティーというよりもどんなものかを推し計るようなフロアの空気、メンバーはあれに対して全くの不完全燃焼という感想しか抱いていなかった。その反動が、あの夜のSmile Gardenの最初からネジが飛んだような爆発的なパフォーマンスに繋がるのだ。
ライムベリー - IDOL ILLMATIC(Live 140622)
クルミクロニクル : Enjoy Studium
可愛らしいポップな曲をショートメドレーでふわふわ的愛らしさを一見さんにアピールしつつ、いきなり最後にふわふわ可愛いままにつんのめりドラムンベースでタオルを回し、サウンドとキャラクターのギャップに場を混乱させた後、「ご清聴ありがとうございました」とステージを降りていく。
- CANDY TRIP
- Seventeen
- クルリクル
- 輝け空色少女
- FLIGHT
るの☆あ〜る : Enjoy Studium
9人のシルエット写真以外に一切事前の情報が無かったユニット、NegiccoとEspeciaによる「るの☆あ〜る」はこのステージでデビューし、このステージで解散。NegiccoとEspeciaのコラボは「Negipecia」としてこの夏限定で活動を継続。「Girl's Life」「水着・浴衣・花火・背伸び」どちらも作曲を後藤次利に依頼。T-Paletteそんなに無茶な投資と贅沢な遊びばかり続けていて大丈夫なのか。大丈夫じゃないからNegiccoもアプガもオリコン週間10位という具体的な目標をアピールしだしたのだろうけれど。
- Girl's Life
- 水着・浴衣・花火・背伸び (Especia Ver.)
- 水着・浴衣・花火・背伸び (Negicco Ver.)
Negipecia「Girl’s Life」
BELLRING少女ハート : Smile Garden
ろくに飯も食わずにあの猛暑の中を歩き回って体力的な限界へ。18時台は食事を取ったり物販を回ったりに費やし、プラニメを見逃す。ベルハーは鹿鳴館での「オタちゃん」を含めて構築されるアングラ小劇場感が好きで、吉祥寺バウスシアター最後の爆音映画祭にワールドプレミアを観に行った「BELLRING少女ハートの6次元ギャラクシー」の閉じた世界観こそがベルハーらしいと思う、それを多種多様な人間がいるオープンスペースに持ち出すことで何が起こるのかに興味があった。去年の後藤まりこよろしく朝倉みずほがステージサイドの櫓に上ったり、いつもの小劇場的なレベルでのやりたい放題、柳沢あやのの客の中へのダイブは運営から音を止めて怒られたり。選曲がそれほどガツガツしていないのもあって、結果オーディエンス全体の空気としては、フェス的な盛り上がりよりも「何だこいつら」という呆れ半分の混乱といった感じに見えた。その「何だこいつらは」が入り口だ。
- BedHead
- yOUらり
- World World World
- the Edge of Goodbye
- ボクらのWednesday
『BELLRING少女ハートの6次元ギャラクシー』映画予告編
しず風&絆 : Smile Garden
元BiS、ベルハー、しず風&絆をこの時間に並べておいて、ダイブするな、観客スペースに入るなというのも、今年の状況があるとはいえアレな話だ。客の上を歩かないしず風。
THE BLUE HEARTS「キスしてほしい」/Hi-STANDARD「My First Kiss」/JUN SKY WALKER(S)「歩いていこう」/LAUGHIN' NOSE「GET THE GLORY」という誰でも知っている曲のメロコア/パンクカバー主体、オリジナル曲無しと完全に割り切った外向きフェス選曲。モッシュと圧縮が起き、優先スペースがヤバくなってくると、いいタイミングで「一旦しゃがんでみんなでジャンプ」「隣の人と肩を組んで前後にヘドバン」的なアクションを観客に要求してくる。やってみると分かるのだけれど、それぞれのアクションはかなりスペースを要求するので、「場を盛り下げずに」観客が自然に後ろに下がって過度な圧縮を回避するような動きになる。これにはもう感心して涙が出てきた。長年の経験とはこういうものか。
ライムベリー : Smile Garden
http://ameblo.jp/sakurai-miri/entry-11903861808.html
http://ameblo.jp/himemari5141225/entry-11903876729.html
http://ameblo.jp/nobuokahikaru/entry-11903917168.html
タイムテーブル的にワンクッション置いた19:50からのSmile Garden、そのラストブロックを務めるのは、ライムベリー/Negicco/Dorothy Little Happy。この位置にライムベリー。この日のタイムテーブルは現状の彼女達の立ち位置では考えられないほどにライムベリーに期待をかけてくれた。夜のSmile Gardenは見渡す限りどこまでも人人人の人だかり。「夜のSmile Gardenがアイドルシーンの中心」であることに間違いはない、そしてネギオタとドロシーオタは2013年のドロシーの伝説をもう一度観たいと最高のテンションだ、この最高の時間、最高の場所で、昼の不完全燃焼のあげく中途半場に焼け残ったテンションにもう一度ガソリンをかけてこの場でもう一度爆発させる。もう最前は普段のライブでは起きないモッシュと圧縮で訳が分からない、ネギオタが潰されて悲鳴を上げる、2MC 1DJ体制での復活からたった3ヶ月でこのソリッドさ、15分枠でフェス選曲「HEY!BROTHER」はショートに、ハードコアなパーティラップ「IDOL ILLMATIC」、そしてやってくる「R.O.D.(HARD)」BPM200のガバキック。Smile Gardenであのハーコーガバキックを鳴らした最高のアイドルとして観客の記憶に残っただろうか。
140802RBSONSMLGRDN
ライムベリー - R.O.D.(HARD)(Live 140608)
Negicco : Smile Garden
「圧倒的なスタイル」を外してもこのセットリスト。「ネガティブ・ガールズ」から最後に「ときめきのヘッドライナー」でストーリーまで作り込み、この日の「約束の草原」は暑くそして爽やかな風が吹いた。
- ネガティブ・ガールズ
- アイドルばかり聴かないで
- トリプル! WONDERLAND
- フェスティバルで会いましょう
- ときめきのヘッドライナー
Negicco「ときめきのヘッドライナー」MV
Dorothy Little Happy : Smile Garden
このセットリストは2013年の伝説となったドロシーではなく2014年のドロシーのもので、それは覚悟と自信に満ちたものだった。「最後はみんなで一緒にあの曲を歌いましょう」で締めたのは、もうこの曲はドロシーだけのものではない、この曲がTIFそのものだからだ。
- 恋は走り出した
- 恋の花火
- STARTING OVER
- デモサヨナラ
Dorothy Little Happy - 恋は走りだした
TIF2014 SMILE GARDENの「デモサヨナラ」(2014.8.2)