Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 「Perfume WORLD TOUR 2nd」ロンドン公演ライブ・ビューイング ディレイ中継

http://natalie.mu/music/news/94482



「Magic of Love」リリース時に、「固定ファン以外の『普通の人』達を巻き込むインパクトを失っているように見える。『先進性』と『斬新さ』が世間に届く様な仕掛け施策自体が欠けてしまっている。この歯痒さは何だ」と書いたりしたのだけれど、*1 その一週間後位にアルバム&ドームツアー発表、「カンヌライオンズ」での「Perfume GLOBAL SITE」プレゼンの中継決定、Youtube公式で過去曲フル配信、「日本を含む」116ヵ国のiTunesで過去曲配信開始、ライブDVDのBD化、一気に動きがあって、そういう見えやすい投資と施策は全部「WORLD TOUR 2nd」に標準を合わせていたというあれな感じで。


60周年を迎えた「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(旧 カンヌ広告祭)」での電通セミナー「Happy Hacking: Redefining the Co-creation Frontier(ハッピー・ハッキング:共創の最前線を再定義する)」*2 はストリーミング中継を見ていたのだけれど、電通USAエグゼクティブ・プランニング・ディレクターとアメリカの電通関連企業のCEOクラスの人が出演しているにもかかわらず、セミナー自体は手探りで話しているのかと言う位につまらない事しか発言しないし、この人達はこのセミナーの趣旨を理解しないままに引っ張り出されて話をさせられているのかなあという悲しい気分にさせられつつ、セミナー後半にようやくビデオプレゼンテーションという形で「Perfume Global site」プロジェクトが登場。
よくあるTwitter参加型口コミ宣伝から、PerfumeダンスのモーションキャプチャーBVHデータや3Dスキャンのオブジェクトデータの提供という革新的な取り組みによりファン参加型の広告の形を更に高次元へ進めたという話と、そのファン参加型広告の最終系としてPerfumeのゲストパフォーマンスがあり、そこにはファンが「perfume global site project #003」で描いたテクスチャが反映されるという大団円が。
で、そのPerfume自身にテクスチャが乗るという、Nosaj Thing「Eclipse/Blue」やelevenplayの山口YCAM版でRhizomatiksが手掛けてきた、ダンサー自体を対象にしたプロジェクションマッピングというインパクトの物凄さがようやくアートからエンターテインメントに昇華する瞬間の感動たるや。そして、ストリーミング中継終了直後からキャプチャ動画が一斉にYoutubeにアップされ話題になり、ネットニュースで多くの人の目に触れ、少し遅れてテレビの情報バラエティー番組が取り上げるという一連の流れは、かつてのPerfumeファンによるMAD動画やリミックスなどによるボトムアップ宣伝と、Perfume側のクリエイティヴィティが理想的にかみ合った素晴らしいプロモーションだった。「今のPerfumeはなんか凄いことしてる」という世間に向けたインパクト、これ、これこそを待っていたんだ。



Nosaj Thing - Eclipse/Blue


dance + projection mapping 1 (MIKIKO + elevenplay + Rhizomatiks)


DENTSU: Happy Hacking: Redefining the Co-Creation Frontier

セミナーの1080pアーカイブ公式動画、「Perfume Global site」プレゼンは31:46、Perfumeパフォーマンスは40:20から。 削除済


Perfume Global site」プレゼンとPerfumeパフォーマンスのファンサブ、日本語字幕動画。Perfumeパフォーマンスは8:20から。




「カンヌライオンズ」は世界最大の広告祭だけあって3万5000以上という凄まじい数のエントリーがあったが、「CYBER LIONS」部門ではグランプリ2作、金賞17作、銀賞25作、銅賞49作を選出、その中で「PERFUME GLOBAL SITE PROJECT」は銀賞を獲得。*3 
ちなみにRhizomatiks関連出品、「氷結 SUMMER NIGHT」*4アバターライブ*5、「未来のミュージアム」コミックジェネレータ*6AU 4G LTEプロジェクションマッピングシリーズ*7はアワードならず。日本ではプロジェクションマッピングとは何ぞやという時に、東京駅とAU 4G LTEシリーズのDaftPunk「One More Time」のやつ*8きゃりーぱみゅぱみゅ増上寺*9 が大抵引き合いに出される位に世間へのインパクトは絶大だったんだけれど。



面白かった物を幾つか貼っておく。


PR部門グランプリ/Direct部門グランプリ/ラジオ部門グランプリ/フィルムクラフト部門グランプリ/インテグレーティッド部門グランプリ
メルボルンメトロ「Dumbs Ways to Die」

フィルムクラフト部門グランプリ
Channel 4 Paralympics - Meet the Superhumans

PR部門金賞/プロモ部門金賞
URA.RU CITY「Make the politicians work」

フィルム部門銀賞
梅花五福丸 野手篇

モバイル部門銅賞
neurowear vol.1 "necomimi" concept movie (脳波で動く猫耳




で、ロンドン公演ライブビューイング。Perfumeのライブ会場は大きくなりすぎて、Perfumeのライブの最大の個性たるダンスも観られなくなって、ライブDVDを家で見る方が面白くなるなんて悪夢だと数年前まで思っていたけれど、その中間地点のライブビューイングは面白い。非常に面白い。Perfumeのライブの三要素、爆音/ダンス/MCを二つ満たす事ができるというだけでもう満足せざるを得ない事に悲しくなる様な感情も当然あるけれど、ライブ会場でもあそこまで巨大なサイズでPerfumeのダンスを観尽くせるということもまた有りえない。出音に対する不満を解消できる手段さえあれば…。LVの音の小ささは「沢山の会場で均質なサービス」を目指す以上諦めるとして、もうStudio Coastリキッドルームでもやればいいのに、開始時間までのDJプレイ付きで。サッカーの国際試合LVなどではそういった実績もあるのだし。


品プリLV会場は半分位着席。前の方で立って踊っていると後ろの視線を感じる。かと言って指定席を離れて通路や座席最後尾のスペースに移動する訳にもいかず。座ってじっくり観たい派の気持ちも分かる。好き放題騒いでいい特区会場が欲しくなった。それこそ上のStudio Coastリキッドルーム辺りで。


「カンヌライオンズ」で披露したプロジェクションマッピング+「Spending all my time Extended Mix」を冒頭に置いた以外は、初回ワールドツアーと大きく変化はなかったか。アンコールも含めて14曲、MCも最小限で2時間程度のシンプルさ。着替え曲となった「Handy Man」のPerfume曼荼羅映像は飛び抜けてサイケデリックで、Perfumeの存在がダンストラックネイティヴである事を強く強調するいい映像だった。
最大の障壁たる言語も、前回と同様に会場から通訳を調達。英語ならもう少し何とかなるかと思ったが、「Amazing!」「brilliant!」を繰り返すばかりで、卒論を英語で書いた人達なのに会話力となると殆どの日本人はこんな所が関の山という日本の英語教育問題を噴出させつつも、感情的な距離においてコミュニケーションはそれなりに取れてしまうのがステージの場数と度胸と経験値のなせる業。
Perfumeのダンスは、体力や年齢を意識したものか、随分と柔らかさが前面に出るようになった。最近の「未来のミュージアム」「Magic of Love」といったオーセンティックなシンセポップ回帰曲を聴きながら、そういえばイギリスはクラブ/ダンスカルチャーの中心地である以前に、エレポップ/ニューロマンティクスの国なんだなあという事を思い出した。


いつまでPerfumeはPTAコーナーのスタイルを変えないのだろうかという懸念は悪い形で今回も露見していた。「はみがきじょうずかな」/trf「survival dAnce」/B'z「ultra soul」の一節の引用は、あの僅かな一節を聴いただけで日本中の誰もが分かるコールアンドレスポンスが成立するからこそ、Perfumeと観客の一体感を高めるコーナーでやる意味がある。逆にこれを原曲など知る由もないドイツやイギリス、韓国公演でもそうだったが、そこでやった時の会場の戸惑いと白けた空気、絶望的な内輪受け感をどうするつもりなのだろう。勿論Perfumeもその空気を感じていて、「ultra soul」をやった後に「We love J-POP!」などというフォローを入れていたが、それならやらない方がいいのは誰の目にも明らかだ。90年代当時、聖飢魔IIの海外公演では、現地で流行しているCMソングをネタとして演奏していた。「なぜ極東アジア人がこんな曲を知ってるの?」という驚きも含めて鉄板の盛り上げ手法になっていた。海外でPTAコーナーを成立させるなら、現地人の誰もが歌える現地定番曲、或いは世界中に通用するグローバルヒット曲でなれけば意味が無い。ロンドン公演を現地なりLVなりで観ていた人達なら、「ultra soul」で会場が冷え切った直後に、イギリス人にとっての第二国歌と言っても過言ではないQueenWe Will Rock You」で爆発的な盛り上がりとなったところで、全てを十二分に理解できたはずだ。パリ公演で「Les Champs-Élysées」を歌うなど、現地のファンに選曲の意図が伝わる素敵な曲でPerfumeと観客の距離を一気に近づけることに成功したのだから、もう海外公演では前段の「はみがきじょうずかな」/trf「survival dAnce」/B'z「ultra soul」の引用はすっぱり止めていい。



Queen - We Will Rock You



Daniele Vidal - Les Champs-Élysées




欧州ツアーを観た現地ファンのブログレポートなどを探して読んでみたが、一番面白い評は、Perfumeに対する「Bizarre」の一言だった。


  1. Spending all my time Extended Mix
  2. Magic of Love
  3. レーザービーム
  4. ポリリズム
    • MC
  5. Spring of Life
  6. SEVENTH HEAVEN
  7. スパイス
    • Handy Man
  8. だいじょばない
  9. エレクトロ・ワールド
    • PTA
  10. FAKE IT
  11. Dream Fighter
  12. チョコレイト・ディスコ (2012-Mix)
  13. MY COLOR
    • EN
  14. GLITTER