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中田ヤスタカ楽曲大賞、対象楽曲数はこの企画が始まって以来最も少ないものとなった。
- 07年/64曲
- 08年/73曲
- 09年/34曲
- 10年/59曲
- 11年/31曲
- 12年/51曲
- 13年/46曲
- 14年/26曲
中田ヤスタカは「CAPS LOCK」を作る過程で一度自分自身の中の奈落を見てしまったのではないか、そんな気分にもなる。2014年にリリースされたPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの楽曲は、エッジの鋭さや泣きたいくらいのキュートなポップネスとも距離を置いたものばかりで、そうだ、珍しく仮定の読者層向けに面倒臭さをむき出しで敢えて言うと、解散を前提にして穏やかにフラットに作られたYMO「Service」のようだ。CAPSULEが「STEREO WORXXX」をリリースし、Perfumeに「LEVEL3」を提供した2013年の10月まで、ここ数年のヤスタカは攻撃的なポップサウンドを鳴らし続けてきた。それを「SSS」や「増殖」当時の先端的なニューウェーヴやスカ期とするなら、その前のめりな「LEVEL3」直後にリリースされた「CAPS LOCK」は「BGM」「TECHNODELIC」、と言いたいところだが、寧ろYENの方が相応しい。そしてこの2014年の穏やかさ。時代と戦い、メディアと戦い、世間と戦い、そしてメンバー同士でも強烈にぶつかり合った人達が、ソロ作品の寄せ集めの様に、まるで他人事のようにリラックスした音を鳴らした「Service」。時代が回ってAORがアーバンシティポップ文脈で再評価される中、この一枚も再評価の列に加わった。そういう話ならば今のヤスタカはもっとシリアスかもしれない。世界がきゃりーぱみゅぱみゅに求めているサウンドはこれではない、そんなことは百も承知でリリースされたアルバム「ピカピカふぁんたじん」はあまりにも私的だ。capsule「do do pi do」の再録が更にその私的な感覚を強めている。
2011年にLFMAO「Party Rock Anthem」とDavid Guetta「NOTHING BUT THE BEAT」がリリースされて、ダンスカルチャーは一変してしまった。鋭角エレクトロポップからEDMへ乗り換えてそのまま波に乗り続けることもできた、それでもヤスタカは一旦舵を切り直した。手掛けた作品数の少なさ、少なさと言ってもそれは彼のこれまでと比較しての話だが、それは彼の気分をそのまま表してもいるのだろう。牙の見えない今年の音に退屈さすら感じたとしても不思議ではないし、EDMに浮かれる世間に向けて、あえて期待される像とはかけ離れたこれらの楽曲を作り続けていたこと自体が、ヤスタカの職人と自我が共存するが故の姿でもある。自分の楽曲を他人に触らせないスタンスを貫き、tofubeats最初のメジャーリリース「University Of Remix」への収録も断ったヤスタカ。しかし皮肉にもワールドツアーでアメリカに上陸したPerfumeは、Dimitri Vegas & Like Mikeのリミックスを携えていった。2014年の巨大なダンスフロアではどこでも常にEDMが鳴り響いていた。そして彼はずっとそこに居た。もうすぐリリースされる次の作品「WAVE RUNNER」は、どちらを向いているのだろうか。
楽曲部門 (持ち点10pts、上限3pts、最大6曲)
ピックアップに困るほどの良作揃いだった2013年とは違ってキャッチーな曲が無い分、点数による明示化が難しい。
楽曲 | 配点 | |
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Perfume / いじわるなハロー |
2 |
この曲が好きかといわれてもそれほど好きじゃない、それでも「いじわるなハロー」「くじけないでボーイ」だけ聴いてそれが発売半年前に病を公表したつんくボーイへのメッセージである、位の読みをして勝手に泣くぐらいのことはする。
楽曲的に色々な意味で今年最大の動きであった「spending all my time Dimitri Vegas & Like Mike Remix」については、うーん、事前の想像よりは悪くないが好きでもない。これが鳴らされるべき本来の場所、幕張メッセクラスの巨大EDMパーティーで聴いてみたらガラッと印象が変わりそうではある。ダンスミュージックは基本的に機能音楽だから。
楽曲 | 配点 | |
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きゃりーぱみゅぱみゅ / ファミリーパーティー -album mix- |
ASIN:B00KEMZ8OC:image:small | 2 |
きゃりーぱみゅぱみゅ / エクスプローラー |
ASIN:B00KEMZ8OC:image:small | 1 |
気味が悪い程の毒々しい奇抜さとカラフルなポップさはどこかへ消えて、アルバム一枚ひたすら孤独の影ともの悲しさに満ち満ちている。ここにいるのは最早ファッションモンスターではない、このアルバムは「ぱみゅぱみゅレボリューション」「なんだこれくしょん」の躁を極めた超ポップさと共に世界的ポップアイコンとして祭り上げられた彼女の孤独な戦いを淡々と記録した日記のようなものだ。「ファミリーパーティー」で「僕の宝物も守ってくれてるの みんなの笑顔が壊れないように」「この夢がずっと先もバラバラにならないよう手を繋いでいて」、孤独な戦いを支えるその存在が歌われることが寧ろ救いであるほどに、悲壮感の中でひたすら前を向く、このアルバムは地味であるけれども美しい。
楽曲 | 配点 | |
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Kylie Minogue / Into The Blue -Yasutaka Nakata(CAPSULE)Remix- |
ASIN:B00I2KR0M6:image:small | 1 |
「Get Outta My Way」に続いてカイリー姐さんのリミックス。ダブステップのお約束ビートが単調に続くも4分過ぎからトランスっぽく変化する小ネタ的な面白さ。原曲の方が遥かにスケールがでかいので、もうぐしゃっと壊しに行ってほしかったが、そうはならないのが2014年のヤスタカモード。配点しようか微妙な所だが、カイリー姐さんとの仕事に展開があればなあという期待込みで。
楽曲 | 配点 | |
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SMAP / Amazing Discovery |
3 |
2014年のヤスタカ作品で断トツにいい。Perfumeやきゃりーの楽曲でも顕著な、寂寥の中に希望を手探りで模索するような2014年のヤスタカサウンドの真骨頂。ヴォーカルエフェクトの馴染まなさと、4分という短さが惜しい。これは10分くらいのExtended Mixで聴きたい。
楽曲 | 配点 | |
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山下智久 / Back to the dance floor |
1 |
山下智久をネタにしたEDMコンセプトアルバム。コーラスまで含めてのテンプレEDMトラックの上に、山下智久を単なる声ネタとして扱うその態度に1点差し上げたい。以前彼に提供した甘すぎる「Baby Baby」は、山下自身のだらしないキャラクターと締まりのない声に絶妙な甘ったるい相性を見せた名曲だったので、またそういう曲も聴いてみたい。中田ヤスタカはエレクトロトラックメイカーというよりもまず稀代のメロディーメーカーなのだから。
※次点
楽曲 | 配点 | |
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m-flo loves BoA / the Love Bug -Yasutaka Nakata(CAPSULE)Remix- |
ASIN:B00I2CUCQ0:image:small |
m-floなりのEDMコンセプトアルバム、10年前の楽曲をヤスタカがリミックス。まあ確かに今の音だけれど刺激も無い、EDMのシーン自体が早くもギラギラしたビッグルームハウスやビルド&ドロップ&シンガロングの単調な繰り返しに飽きつつあるっぽいのでそんなものか。
ミュージックビデオ部門 (持ち点5pts、上限3pts、最大2曲)
配点は一曲のみ。
楽曲 | 配点 | |
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きゃりーぱみゅぱみゅ / ゆめのはじまりんりん |
ASIN:B00KEMZ8OC:image:small | 3 |
楽曲よりもMVの方が遥かにいい仕事。「夢の始まり」であるにもかかわらず、これまでの衣装全部出し、もう引退前提の最後のリリースの為に作られたかのようなこの切ない美しさ。
※次点
楽曲 | 配点 | |
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SMAP / Amazing Discovery |
SMAPならもっとすごい物を作れるはずだろうに、と思ったけれど、そもそもジャニーズのPVなんかYoutubeに無いから目にすることも無いし、普段どんなクオリティのものが作られているのかも分からなくて、ネットのバイラル効果できゃりーやBABYMETALが海外へ飛び出していったこの時代に、ジャニーズの徹底した姿勢は不気味ですらある。
※次点とノミネート外
楽曲 | 配点 | |
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OK Go/ I Won't Let You Down |
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Perfume/ Cling Cling |
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Perfume/ Hold Your Hand |
Perfume/関和亮監督のMVがOK Goの多数の傑作から影響を受けてきた一方で、じゃあ関監督とマルチコプタードローンを使ったらここまでのものができたという。やっぱり動きとアイディアをどう魅せるかという映像を観たいのだ。「Cling Cling」は種田陽平の世界観に全てを投資し、そこで燃え尽きてしまった。素晴らしいセットと衣装があるのに、PerfumeのMVにあったアナログ的な発想を全力で形にする面白アイディア見本市みたいなわくわく感はゼロだ。「スパイス」を撮った島田大介監督らしい、世界観を最重要視した結果でもある。個人的にはPerfumeの圧倒的な身体性を極限まで機能させたルーブ・ゴールドバーグ・マシンというかピタゴラ装置的なMVを観てみたい、ミシェル・ゴンドリーや関監督がPerfumeに一番フィットしていると再確認させられたようなシングルタイトル曲。
「Hold Your Hand」は多くの人達で成り立っているPerfumeプロジェクトの愛情の塊みたいなもので、「ぐるんぐるん」ツアーでは手のひらがファンの送った画像に置き換えられた。結局今のエンターテインメントは「一体感」を演出しなければ成り立たない、という所に帰結してしまった安易さを個人的にはどうにも受け入れがたい。代々木最終日のマスゲームも含めて。
OK Go - I Won't Let You Down - Official Video
[MV] Perfume 「Cling Cling」
[Lyric Video] Perfume 「Hold Your Hand」
※ノミネート外。
楽曲 | 配点 | |
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Perfume/ DISPLAY |
何故ゆえこれがノミネート外なのだろうか、確認し忘れたまま投票締切が。PerfumeのMVではなく広告だから?
このご時世において480pレベルの低画質、フレームレートが低すぎてカクカク動くようなけち臭い動画しか公式配信しないPerfumeが、4Kテレビの宣伝用としてこの鮮明な映像を公開したこと、その2週間前にEspeciaがライブ動画をSDに落として更にVHSの実機を使ってダウコンしたトラッキングノイズだらけのディープ90sテイストのVHS画質動画をフルHDで公開していた事。同時代に生きるアイドル同士が、メジャーインディーズ関係なく、それぞれ両極端な形でクリエイティヴな鍔迫り合いを繰り広げるシンクロニシティ的な瞬間が楽しかった。このPerfumeの4K動画が公開された2日後にEspeciaのライブがあって、そこでVJホンマカズキ氏がスクリーンにでかでかと「YOU ARE WATCHING A LASER DISC」やら「4K」のロゴやらを飛ばした、その身軽なユーモアも含めて、この4K動画公開はとても面白い出来事だった。
Perfume DISPLAY (Supported by Panasonic 4K UHD TV AX800)
Especia「海辺のサティ」VHS Edit(「Especia va Bien en Tokyo」@代官山UNIT)
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※追記
「DISPLAY」はノミネート漏れとの事で、01/22まで再投票を呼びかけております。という訳で改めて以下に配点。
楽曲 | 配点 | |
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Perfume/ DISPLAY |
2 |