Aerodynamik - 航空力学

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Perfume楽曲制作における、中田ヤスタカ中央集権体制への回帰@音楽と人 2010年12月号

http://ongakutohito.jp/ongakutohito/


「Fake It」についての語り。「Fake It」は「Edge」のような曲、としきりにインタビュアー、インタビュイー共に話しているが、単調な四つ打ちと抑揚の少ないメロディーを基調とする「Edge」と、捻くれたフレンチエレクトロをベースに癖のあるポップなメロディーを乗せた「Fake It」はまるでベクトルが異なる。「Perfumeの中ではバキバキ」という意味においては似ているのかもしれない。音楽的な面白さで言ったら断然「Fake It」だ。

−あのタイミングで「Edge」を出したからこそ面白かったというか。


あ:そう。で、その後ああいうアプローチをしてる人も沢山いたけど、それ以降、そういうのを(Perfumeは)出してないのが、また先に進んでる感じがするし。バキバキがやりたいって言うよりは、中田さんが考えてくれた『Perfumeが今これをやったら面白いんじゃない?』って楽曲を、そのイメージ通り、完璧にパフォーマンスするのが私達のやるべきことだし、そこに一番力を入れるべきだと思う。だから(「Fake It」は)ライブで強く個性を出すような曲になるけど、これがPerfumeだ!って曲ではないんじゃないかな。

「VOICE」録音前に、Perfumeの三人やスタッフ達は、自分達の要望を中田ヤスタカに伝えるミーティングを初めて開き、彼にあれこれと作って欲しい曲の希望を出していたし、それはとても画期的なことだと言って喜んでいたはずだったが、*1 結局は、中田ヤスタカの完璧な出力機関に徹する事こそに一番力を入れるべきだという方向性に回帰したようだ。夏フェスで映える曲を、というPerfumeの気持ちはよく分かるが、徳間ジャパンスタッフ側に、今のサウンド、これからのサウンドを見る目のあるスタッフがいないのであれば、この回帰は正解なのだろう。少なくとも、今のヤスタカのその辺りの差し引きのセンスは信用できるし、徳間ジャパンのお偉方の意向によってそれが左右されるようなものであってはならないとも思う。



の:やっぱり中田さんがどうか、をより考えますね。自分、っていうのを考えることも前より多くなってきたけど、やっぱりそこが重要で。今回、カップリングを取るためにレコーディングした時、一回、他の曲でレコーディングしたんですよ。でも中田さんが『やっぱもうちょっと明るい曲にしよう』って「Fake It」が出てきた。だから凄く明確なイメージがあったと思うんです。

ここでは「他の曲」が明かされてはいないが、少なくとも「歌入れまでしてある没曲が発生した」ということは分かる。これまで、様々な都合でCDという形でのリリースに至らなかった曲*2はあっても、そもそも没になる曲というものがあったという発言は無かったと思う。録音作業はヤスタカ自前のスタジオのため、没曲のためにスタジオレンタル費用がかさむことは無いが、少なくともヤスタカの稼動とPerfume三人の貴重な稼動時間を浪費することになる。管理する側から見れば、没曲は作らないのがベストだ。しかし、ここで恐らく「初めて」没曲が発生した。「中田さんがどうか、をより考える」という発言とあわせてみると、ここで見えるのは、「中田ヤスタカの発言権の強大化」である。


の:レコーディングの最初はあ〜ちゃんからだったんですけど、凄いんですよ。もっとここはスタッカートで!とか、そこで強く切って!音程はそれじゃ駄目!って。


−厳しかったんだ?


の:今迄で一番厳しかったと思う。ね?


あ:うん。一番厳しかった。大変っていうか、中田さんの注文が凄く多くて、それに応えられなかったんです。できない自分が悔しくて。いつもはちょっと間違ってても、「ここが違うんだな」って自分で気付くまでその曲のオケを流すんですけど、余りに違うから中田さんが唄ってくれたんです、生歌を。


の:ヘッドフォンから聴いたんだ。(笑)


あ:自分がショックでした。もうこの耳元で生歌を聞かされちゃうくらい出来ないってことで・・・。とても申し訳なかったです。


か:私はあ〜ちゃんの歌入れを聴きながら、次に唄うプレッシャーが凄かった。震えとったよ。(笑)

「Fake It」はヤスタカの中に明確なビジョンがあり、「ナチュラルに恋して」のようにメンバーの自主性を尊重するやり方から、ヤスタカの徹底した指示に従わせる形となった。


その方式に対しての三者三様の捉え方。

あ:でも自主性なんだけど自主性じゃないんですよね・・・何て言うのかな・・・自由に歌いすぎると声が使われないから自由には唄わないし、かといって、感情込めないでスーッと唄いすぎちゃうとそれも使われないから、ちょっと癖っぽく私だと分かるような喋り方とか唄い方の発言の仕方を入れる。規制されてる中でどう見せるかが大事だし、逆にこうしてって言われるほうが、それに応えたいって気持ちになるから、私はその方がいいかな

の:やっぱり自由に唄うときは自分なりに『あ、この曲はこんな風に唄おう』とか決める癖が付いてて。ちょっと前は、どんな風に唄ったらいいですかね?って分かんないままやってました。で、今回の「Fake It」は『あ、こういう感じの曲にしたいのか』っていうのが分かって、確かにやりやすかったです

か:私はどっちでもいいと思うんです。(笑) 声がPerfumeであればどういう唄い方で唄おうとPerfumeらしさは出るし、そこで中田さんのイメージに近づけて唄うことだってPerfumeの良さだし。で、自分達に任せられて、そこに中田さんが新しい発見をするのもPerfumeだから出来ることだと思うので。

どちらにしても結果は「Perfume」に違いは無いのだが、普段から「何も考えていない」と自称する大本さんは、少し位管理下に置かれた方がいいタイプなのかもしれない。




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*1:http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20100728/p1

*2:「イミテーション」「カウンター」「ジューシーフレグランス」