Aerodynamik - 航空力学

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観劇記録 「ハロウィンII」(HALLOWEEN II)アメリカ 2009年公開 R18+



ホラーマニアに付き添って、シアターN渋谷、最前中央にて鑑賞。


現在8作が作られているスプラッターホラーシリーズの金字塔「ハロウィン」。オリジナルはJohn Carpenter監督の1979年作品。それを2007年にRob Zombie監督がリメイク。そして今作は、1981年版「ハロウィン2」の、再びRob Zombieの手によるリメイク作品だ。


前半立て続けにやってくるあまりの恐怖と残酷さに、何度も目を背けたくなる。ホラーに付き物のユーモアの欠片もなく、ひたすら容赦の無い殺戮が繰り返される。あまりにキツイ内容に、途中で見ることを断念しかけたが、観ているうちに、いつの間にか自分はRob Zombieの作り出す映像美に取り込まれてしまっていた。


スーパー16ミリフィルムを使って、意図的に色調を粗く低く抑えた暗い画。惨殺シーンは殆どシルエットだけ、代わりに効果音が重くそして生々しく鳴り響く。単に血が飛び出るような視覚の恐怖よりも遥かに想像力に訴える恐怖演出。そして、とにかく効果音、そしてBGMの使い方が印象的で、詩的にすら思える部分もある。
決して走らない殺人犯、しかし目が追いつかないくらいにスピーディーな殺戮シーン。オリジナルよりも遥かに巨漢の俳優を使う事で、殺人鬼は旧作より大きく存在感を増し、その重量感と殺戮時のスピード感とのバランスはより現代的。
アップと引きを多用し、その一つ一つの構図は完璧なまでに美しくスタイリッシュ、どのシーンを切り取ってもポスター画のようだ。妄想の中で佇む殺人鬼の家族はファンタジックですらある。クライマックスのシーン、その光と闇の絡みには、もはや神々しさまでが感じられた。


血がぴゅーぴゅー飛び出る安っぽいスプラッターとは異なり、あまりに容赦の無い残酷な描写は多いものの、美しいまでの重厚でスタイリッシュな画作りと、素晴らしい音楽/効果音で、古典を現在のセンスで更新するという目的は十二分に発揮されているといっていい。非常に怖かったが、とても充実した映画体験だった。