Aerodynamik - 航空力学

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観覧記録 Cluster@代官山UNIT

http://www.unit-tokyo.com/schedule/2010/07/03/100703_unit_6th_anniversary.php



1968年から活動する、電子音楽の祖、テクノの原型とも言うべきドイツの生ける伝説、Cluster。自身の音源はもちろん、初期Kraftwerk、そしてNEU!のメンバーであるMichael Rother、Guru GuruのMani NeumeierTangerine DreamConrad Schnitzler、そしてBrian Enoなどとの共作で、テクノやアンビエントに多大な影響を与えたオリジネーター


Clusterとしての初来日は1996年。Roedeliusソロが1999年、同年にMoebius×Michael Rother、2002年にMoebius×Mani Neumeierとして、それなりに来日はしているのだが、さすがにもう70過ぎの高齢のため、Clusterとしての来日はこれが最後かもしれないと、足を運んだ。


24時頃に会場入りすると、どういう趣向か瀧見憲司がプレイ中。ジャーマンサイケロックからスピリチュアルハウス、エクスペリメンタルなアンビエントやバレアリックディスコなど、テーマに合わせた選曲だが、客はほとんど踊っていない。むしろステージ前に固まってじっと無人のステージを見つめている。Clusterのライブ待ちの転換DJのようだ。事前に感じていたのだが、Clusterのガチオタはダンスミュージックに興味が無いので、やはりこうなってしまうのだろう。


25:30、小柄なDieter Moebius、巨漢のHans-Joachim Roedeliusがステージに現れる。「Good morning Tokyo, Happy Birthday UNIT!」とサービス精神を見せ、演奏が始まる。
Roedeliusが二台のPioneer CDJでベースとなる音を出し、Moebiusがキーボードなどで不安定な電子音を出すスタイル。
絡み合うホワイトノイズとチープな電子音。たまに鳴らされる単調なリズム。囁き声すら聴こえるような静かな時もあれば、地響きのような轟音ノイズの時も。アンビエントともノイズともつかない、ノンストップでゆったりと繊細な音の点描画絵巻が淡々と続いてゆく。Moebiusの奏でる、無機質で無感情な電子音響、その裏に時折流れる優しく叙情的なローデリウスの調べ。40年経っても、二人の音楽性は変わらない。
音は、時にMonolakeやビートレスのAutechre、ハウスを通過していないThe Orbを感じさせる瞬間があり、今現在でも色濃く影響を残すオリジネーターの重みを感じる。


スクリーンには、固定カメラで撮影された、森に囲まれた赤いレンガ造りの田舎の民家の映像がずっと流れている。静止画のようだが、時折メンバーと思しき人影が家の前を通り過ぎる。


1時間と、アンコール20分の演奏が終わり、二人は肩を組んで礼をしてステージを降りた。




しかし、UNITでのオールナイトイベントという事で事前に嫌な予感がしていたのだが、やはりそれは的中した。熱心なジャーマンエクスペリメンタルのファンは観客の半分くらいで、後の客は、週末の夜に騒ぎに来ただけの、Clusterなど名前も知らず、その音に興味もなく、電子音楽のルーツである事に敬意も払う事もできない、どうしようもないパーティー馬鹿の若者だった。それも、箱のスタッフや他のDJのゲストで入ってくるような、遊び人面した馬鹿ばかりだ。繊細極まりない音響空間でも、ステージ前に集団で割り込んできて、酒を溢しながら派手に騒いだり雑談したりと、酷い有様だった。Clusterファンが彼らに注意してもなかなか言うことを聞かず、あちこちで喧嘩寸前の睨み合いが起きていた。演奏の音が小さくなると、Clusterに飽きて後ろのラウンジで騒いでいる馬鹿の騒ぎ声のほうが大きくなってしまう始末。
一応、UNITはSALOONとUNICEを開けて、Clusterの裏ではL?K?Oやタカラダミチノブがパーティーセットを流すなどして、Clusterファンとパーティー馬鹿の分離を図っていたようだが、それでも馬鹿の醜態は目に付いた。
やはりこれはイベントとしては得策ではない。いくらClusterが電子音楽のルーツであるといっても、ダンスミュージックではない。熱心な電子音響ファンとパーティー馬鹿を一緒にするようなイベントは打つべきではなかった。Clusterを聴きに来たファンも、週末の夜を踊りに来た若者も、互いに不幸になるだけだ。普通に昼にライブをやってくれれば良かったのだ。あるいは、Metamorphoseのような、オリジネイターと現在の子供達が共存して、それらを共に楽しむ民度の高い観客が集まる特別な場所という選択肢か。




再び瀧見憲司が回した後、evalaのライブ。高品位、高解像度、細分解、高音圧のグリッチエレクトロニカ。即興のようなインスタレーションが延々と続く。ビートが欲しいのだが、ただの四つ打ちはくれない。16/32ビートのキック連打や不規則なキックだけのブレイクビーツ。Clusterから40年、電子音そのものの渦に耽溺する快楽は今も変わらない。


最後に田中フミヤ、ファンキーでパンピンなハウスを中心にプレイ、非常にかっこいよかったのだが、体力の限界を感じて早めに切り上げ帰宅。







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