http://www.nhk.or.jp/ml/archive/201105.html#m20110517
Capsuleの新アルバム「World of Fantasy」が全曲BPM128(BPM、beat per minute、一分間に128拍)であることについて、その縛りの理由。
−BPMってあれですか、全部128で。
中田:全部128で。これ別になんか初めからそう思っていたわけじゃなくて。なんか、作っているうちに、だんだん揃えたくなってきて。先になんか、先行で出ているものとか無くて、アルバム単位で全部の曲を作っているんで、そういう作り方ができるんですよね。途中で、「これはなんか全部テンポ128縛りにしよう」みたいな。自分ルールみたいな。
−無いですよねこんなアルバムなかなか。
中田:別に意味は無いんですけど、楽しくなってきて、それ位決めようと。あんまり決めないで作っていたんで。なんか、言葉にできないカラーはあるんですけど、統一感みたいな、なんか言葉にできるなんか分かりやすいのちょっとあったほうが楽しくない?と思って。128のBPMっていう。なんかあるじゃないですか。小学校の時に学校に行く時に絶対影踏まないとか。そういうやつです。
「別に意味は無い」。
鮎貝氏は「無いですよねこんなアルバムなかなか」というけれど、クラブミュージックのアルバムであれば、BPMが統一されているものなどそんなに珍しくも無い。とはいえ、それはもちろんDJユースを意識したもので、ヤスタカの今回のBPM統一にはそういう意図は無いようだ。もっとも、今はCDJやPCDJが当たり前になり、クリック一発でピッチ合わせが簡単にできてしまう時代なので、フロアユースのためにBPMを揃える事自体の意味も失われているのだが。
そして、BPMに128を選んだ理由。
−その128という数字は何かあったんですか?この数字の並びに拘りがあるとか?あるいはBPM的にこれが一番とかいう。
中田:これは曲作ってる人ならみんな分かる話なんですけど、128ってキリがいいんですよ。音楽を作ってる人的には、なんて言ったらいいのかな、2進数のあれで、128ってキリが良くて、コンピューターミュージックとかシンセサイザーとかの機材では、「0」が一番少ないパラメーターから「127」まで、128段階なんですよ。だから128って結構メジャーな数字で、多いんですよね、出てくることが。
−そうなんだ。
中田:そうなんですよ。左右の音を表す時に、右のスピーカーと左のスピーカーは、64ずつ振るんですよ、左右に。そういうパラメーターになってて。だから、音楽やってる人的にはノーマルなテンポっていう感じです。
−でも、あえてそういうノーマルなテンポで縛ったっていうのも面白いですね。
中田:そうですね。結構なんかやっぱり、折角コンピューターで音楽を作っているところの、「折角」って所かもしれないですよね。殆どの音楽は今コンピューター大体通ってると思うんですけど、何かしらのタイミングで。だから、僕の場合はその、折角一人でスタジオで使ってるんだから、「使ってる感」を出したくて。
「コンピューターで音楽を作っているので、折角だから128に」という、音楽性に根差さない発言は、さすがは週刊アスキー読者らしいところ。128、256、1,024、65,536などの2の累乗は、コンピューターを扱う人間にとってはキリのいい数字で、それはベースとなるものが2進数だからだ。
こういう電子機材縛りでBPM128を選ぶ他に、BPM133.3というダンスミュージックの定番の数字があるのだが、これも最近は意味が薄くなっている。BPM133.333・・・で曲を作ってアナログレコードに33回転(33rmp、rotation per minute)でプレスすると、楽曲の一小節と、レコードの一回転が等しくなるのだが、今はアナログレコードを使うDJ自体が殆どいなくなってしまった。どちらにしても、人間の心拍数は60〜70なので、BPM130位の速さが丁度いい、とはよく言われることである。
ちなみに、このアルバムに限らず、ヤスタカはBPM128を好んで使っている。Perfume「チョコレイト・ディスコ」から次の「ポリリズム」とそのカップリング「SEVENTH HEAVEN」、その次の「Baby cruising Love」までBPM128を使い続けた時期もある。参考までに、現時点でのPerfume楽曲の最速は「スウィートドーナッツ」のBPM200、最も遅いものは「願い」「23:30」で、BPMは80だ。