http://www.oricon.co.jp/news/music/2016820/
http://www.perfume-web.jp/cam/WORLD/
10月末より、Perfume初のアジアツアー、中台韓星を回る「Perfume WORLD TOUR 1st」が始まる。ライブ会場のキャパは1000〜2000人、恵比須リキッドルーム〜渋谷AX程度の箱を回るようだ。
これに先駆け、Perfumeは9/13から二泊三日で香港現地プロモーションを敢行した。何故このタイミングになったのか、Amuse/ユニバーサル現地法人が現地の動向を掴んだうえでこれを強行したのか、正直不信感を抱かざるを得ない状況であったのは確かだ。中国にとっての9/18は柳条湖事件の日であり、中国では「国恥日」と呼ばれ、最も反日感情の高まる時期であり、さらに重ねて尖閣諸島国有化に反対するデモ/暴動が吹き荒れ、1972年の日中国交正常化、その40周年の記念の年は、過去40年間で最悪の状況となった。連日のように報道されたあの暴動の中で、Perfumeは無事に帰ってこれるのか、KARAのようにインタビューで政治的発言を拒否したことが問題にならないか、あれこれと肝を冷やしながら、その無事を祈りつつ、現地報道を追う事になった。
やはり事情を勘案してか、公開記者会見は中止になり、ホテル缶詰でひたすら各媒体の個別インタビューを受けることになったようで、現地報道では、「反日感情を喚起することを恐れるPerfume(蘋果日報)」「荒れ狂う反日潮流に口を噤むPerfume(爽報)」という見出しが飛び交い、「昨今の尖閣問題による日中関係の悪化に対して記者会見を取り止め、メディアのインタビュー時に日中の敏感な話題に言及しないようきつく伝えられた(明報)」「記者会見取り消し、インタビュー時に日中問題について問う事は禁止、甚だしい事には、仲の良いKARAや少女時代との関係や、K-POPに関する話題も禁忌とされた(明報)」という緊迫した状況が伝えられた。その一方で、(緊迫した状況に対してあまりに無配慮だったとは思うが)警備も付けずにチーフマネ山本氏を含む事務所スタッフ4人と共に空港に降り立ったPerfumeの三人を、現地ファン50人が出迎え、Perfumeはメディアの質問に対しては一切を拒否したものの、笑顔でファンの求める握手やサイン、写真撮影に応じ、誕生日&中秋節ということでプレゼントされた月餅を持って笑顔で現地ファンと写真に納まる大本さんの姿も報道され、「友好的」と評されている。(蘋果日報)また、この空港でのPerfumeの行動が「緊張した日中関係を緩和する」「反日感情を薄めた」と報じた記事もあった。(東方日報)
明報より。
Perfume踏出日本,最困難及擔心的是語言問題,尤其她們以在演唱會上談話時間長如清淡節目而聞名,更有超過清談一小時的紀錄,西脇笑說:「雖然都會學廣東話及英語,但仍很擔心,演唱會時怎辦呢?不過昨晚我們食飯時,雖然跟店東言語不通,但以身體語言及手勢也成功溝通,原來這樣也行得通。」
ライブのMCが非常に長い事を「清談節目」と表現しているが、これは慣用句なのだろうか。魏の時代、竹林の七賢が俗世から超越して老荘思想の談論に明け暮れたというエピソードを「清談」と呼ぶが、それを指す言葉なら、随分としゃれた表現だ。
Perfumeのライブの大きな魅力であり、海外公演において最大の障壁になるであろう言語問題については、この記事の西脇さんのコメントによると、「広東語と英語を学んでも、ライブの時は心配、でも昨晩食事をした時に、店では言葉は通じなかったが、身振り手振りで意思疎通に成功したので、ライブでもこの手で通用します」とある。一応通じなくとも広東語を学んでいるようなので、少なくとも挨拶程度は行けるのだろう。後は身振り手振りか…。ユニバーサル加藤氏の発言にあった「即時翻訳のようなテクノロジー」は導入されるのだろうか。 *1
ウェブ版オリコン「Oricon Style」に、ユニバーサルスタッフによる海外進出に対する戦略が掲載されている。
ユニバーサルミュージック Pプロジェクト チームリーダー 高瀬一将氏
高瀬:もともとPerfumeは、原宿アストロホール、代官山UNIT などのライブハウスからスタートしています。海外でも同じように、小規模の会場から始めて、少しずつステップアップできればいいな、と。ライブの内容も、基本的には日本と同じ。“いまやっていることをそのまま海外の人に見てもらいたい”というのは、メンバーの意思でもあります。
高瀬:「“Global Compilation”は徳間ジャパンさんからのリリースですが、海外での展開に関しては当社が担当します。現在、まずはツアーで回る台湾、香港、韓国、シンガポールはもちろん、約10ヶ国程度でリリースできるように準備しています。
まず、華々しく海外で大きな事を仕掛けて見せるよりも、日本での経緯と同様に、小規模ライブハウスからステップアップさせてゆくこと。ライブ内容は日本と同じ。「Global Compilation」は中台韓星だけでなく10か国でリリース予定。
ユニバーサルミュージック Pプロジェクト プロダクトマネジメント担当 岡勇介氏
岡:近い距離でライブを見てもらう。Perfumeの魅力を伝え、コア・ファンを作るには、それが最も効果的だと思います。
岡:プロモーションに関しても、各国と連携を進めています。大切なのは、現地のプロモーター自身がPerfumeを理解し、積極的に自国メディアやディーラーに売り込んでもらえる体制を各国ごとに築いていくことです。そのために、こちらからも情報を発信し、ソーシャルメディアなどを通してユーザー間のバイラルを作っていきたいと考えています。
各国での現地プロモーションの有り方、そしてソーシャルメディアによるバイラル効果。
ユニバーサルミュージック Pプロジェクト A&R担当 猪田彰司氏
猪田:楽曲、アートワーク、MV などを含め、クリエイティビティの高さを総合的に押し出していきたいと思っています。世界向けのHP(『Perfume official global website』)で音源、モーションキャプチャを無料配信したのも、そのひとつです。
「クリエイティビティの高さを総合的に押し出す」。グローバルサイトの試みは画期的だったし、とても面白いものを見せてくれたと思うが、あれで海外のファンに「クリエイティビティの高さ」がアピールできたかというと、その試みの面白さと比較してプロモーション効果はいまいち実感できていない。ちょっと敷居が高すぎたのかもしれないとも思う。
「クリエイティビティの高さ」といえば、7/31に行われた氷結SUMMER NIGHT *2 で、世界初のホログラフィックライブ生中継が行われた。テレビメディアでは前半部「Spring of life」の「ホログラフィックの3人と現実の3人による6人の共演」ばかりが取り上げられていたが、それよりも、後半「Hurly Burly」で使われた、手の動きを追尾してリアルタイムにCGを描画するシステムの描く世界は、まるで魔法のようだった。
スクリーンに投射された映像は、Youtubeで公開された映像を見ると薄くぼやけているが、現地でははっきりと鮮やかに映っていたらしい。
ステージはStudio TEDのEyelinerで構築されているようだ。*3 3人が人差し指にはめている指輪(Retroreflection Ring 再帰反射リング)というか再帰性反射テープを指に巻いたものの動きをトラッキング、それをトリガーにして、リアルタイムに映像を描写。指の動きでエフェクトをかけたり拡大縮小したりしている。この手の「繊細」な技術を、アートの展示などではなく、エンターテインメントのライブで、それも世界生中継で動かすのは相当な技術力以上に「度胸」が必要だ。開発は勿論最近のPerfumeのあらゆる演出を一歩先に進めている立役者、Rhizomatiks真鍋大度+石橋素氏。これらの演出は、グローバルサイトの試みよりも、より直観的にそれを観た人に訴える力があるだろう。ライブこそがPerfumeの音楽とダンスという魅力の重要な要素を伝える場なら、よりライブ演出の場でこれらの技術を活用していくことが、その「クリエイティビティの高さ」を強烈にアピールできることに繋がるはずだ。
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