Perfume あ〜ちゃんの自己表現の解放のきっかけとなるもの@音楽と人 09年8月号
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−レコーディングへの取り組みは変わった?
あ:あ、私今まで、レコーディングしてて楽しいって思った事がなかったんですよ。でも20歳になって、いろんな人と合う機会が増えて。そこでレコーディングの話とか、曲を作る過程の話を聞いたりすると、Perfumeのレコーディングの仕方はすごく変わってるんだな、って気がついたんです。レコーディングがあまり楽しくないって話もしました。そしたら、周りの人も、もっと自由に歌っていいんじゃない?って言ってくれて。じゃあやってみようと思って、「Zero Gravity」の時かな?・・・・・・えっと「NIGHT FLIGHT」「I still love U」「Zero Gravity」次なんだったっけ・・・
か:「The best thing」「Kiss and Music」「Speed of Sound」「Take Off」かな
あ:うん、その順番でとったんですけど、「Zero Gravity」くらいから、もういいんだと思ったから、自由に唄いました。
−自由に唄ってて止められなかった?
あ:何も言われなかった。で、自由に唄ってたら、いろいろ中田さんが言ってくれて。「ここは切って」「もっと強く」「もっと地声で」とか。言われた方が答えられるよう努力ができるから、言ってもらえて嬉しいです。
アルバム新曲の録音順、そして「⊿」レコーディング中における、西脇さんの自己表現の「転換点」がここから分かる。
また、既に語られているように、「レコーディングがあまり楽しくない」状態から「自由に歌」うことへと変化した今回のレコーディングだが*1、ここではさらに、西脇さんが自己表現に向かうのきっかけが、「レコーディングの話とか、曲を作る過程の話」をする、つまりミュージシャンとの交流の中で生まれてきたということも明らかになった。
Perfumeの3人がミュージシャンという表現者と交流し、刺激を受けていることについては、別インタビューの樫野さんのこの言葉からも分かる。
Rockin'on JAPAN 09年7月号
か:今、いろんなアーティストの方を知って、ミュージシャンの人とも関わるようになって、かっこいいって思う事がたくさん増えてきて、新しい事に挑戦したいと思う事も増えてきてるから、(以下略)
フラットな発声でワンコーラス分を録り、後で変調やコーラス付けをソフトウェア上で行う、中田ヤスタカ流レコーディングが「特殊」であることに、表現者との交流を通して西脇さんは初めて気付く。そして、表現者の「もっと自由に歌っていいんじゃない」というアドバイスを受け、音源として使われなくてもいい*2というスタンスで自己表現を始める。
西脇さん達の自我を解放したのは、ミュージシャン、もっと言ってしまえば彼女達のプライベートを取り巻くロキノン系ミュージシャン達だ。彼らが西脇さんに表現する事、成長する事を教えたのだ。写真週刊誌の記事に一喜一憂していた自分が情けなく思える。
西脇さんの解放された表現は、当然これまでのヤスタカと信頼関係に基づいて積み上げてきたやり方とは異なるし、それが作品として良い方向に向かうかどうかは別の問題だ。しかし、ヤスタカはその変化を止めなかった。むしろさらに指示を入れることでその精度を高めていこうとした。
「自己表現の転換点」以降の歌もの楽曲である「Zero Gravity」「The best thing」「Kiss and Music」、この3曲は、それまで無かったはずの西脇さんの自己表現の発露と、それを昇華しようとするヤスタカの最初の格闘の試みとして後世に記録される。あなたの耳には、どう聴こえているだろうか。