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Aerodynamik - 航空力学

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真鍋大度が語る、Perfume東京ドーム公演のインタラクティヴ演出@「映像作家100人 2011」

Perfume

http://www.bnn.co.jp/books/title_index/dtv/100_2011japanese_motion_graphi.html


東京ドーム公演におけるインタラクティヴ演出について、真鍋大度氏の初めてのインタビュー。ようやく本人が語ってくれて、初めて明かされる事実に興奮している。
当ブログでは、ドーム公演パンフレットのクレジットや断片的な証言を頼りに、ど素人の癖にあれこれとインタラクティヴ演出について触れてきた。それがPerfumeのライブの新たな次元への手掛かりと思ったからだ。


※過去の東京ドーム公演インタラクティヴ演出関連記事はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20101024/p1
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20110216/p1



ちなみにこのインタビューが掲載されている「映像作家100人 2011」は、その名の通り「映像の今を切り開く100人のクリエーター」が選ばれている。もちろん昨年文化庁メディア芸術祭で一気に時の人となった関和亮氏も選出、紹介ページには「VOICE」が。真鍋大度氏のページには「Perfumeの掟」、そして児玉裕一氏のページでは「ナチュラルに恋して」が。いつの間にか映像の今を切り開くクリエーター達に囲まれているPerfumeというプロダクトのなんと幸運なことか。



Perfume東京ドーム公演でメディアアートこの前代未聞の企画が決まった発端は、Perfumeデビュー当時から振付とライブの演出を手掛けるディレクター、MIKIKOからの提案


真鍋:僕は以前からPerfumeのような、「ポップだけどフラット」というクリエイター心をくすぐるアーティストと仕事がしたいとずっと思っていたので、念願の仕事でした。


−真鍋らが手掛けた「Perfumeの掟」と衣装チェンジ時の映像はドーム公演の為のオリジナルシーン。


真鍋:制御やパターンに関わるソフトを僕が手掛け、映像プログラミングを僕とザッカリー、デバイス制作に僕や石橋さんをはじめとする実験スペース4nchor5 la6(アンカーズラボ)のメンバーというチームで取り組みました。Perfumeのコンサート演出は長年手掛けてきたライブスタッフがいるので、僕らのような人間が関わるのは異例のこと。構想段階からプロトタイピングと実験を繰り返して、実現に向けてアイデアを絞っていきましたね。

この企画を最初に提案したのは、やはりMIKIKO先生。「true/本当のこと」公演でのMIKIKO先生との対談、その中で、「自分の作品にもこのような仕掛けを使ってみたい」という先生の希望がここに結実する。



ステージ上部に吊り下げられたLED風船について。

−ステージ後方部に8個設置された直径5メートルの巨大なLED内蔵風船。曲中に明滅する大規模なこの装置は、4nchor5 la6のメンバーが全制作を手掛けた。


真鍋:風船の中に内蔵したLED照明は制御回路の設計から実装までを行い、全てコンピューター制御で、曲とミリ秒単位で同期しながら明滅する仕掛け。実際の見え方を確認する為、大きな会場を探して巨大風船を実際に膨らませて光らせるなど、大掛かりな実験を重ねました。


−LEDを内蔵した風船は、もともとバンクーバーオリンピックなどで発表していたカナダのアーティスト、アレックス・ベイムが作品で使用していたものと同じ仕掛け。本人に直接コンタクトを取り、許諾とアドバイスを受けて制作を進めた。

LED風船は、Alex Beimの作品「Zygote Interactive Ball」と同様の仕組みのものをそのまま持ち込んだのかと思っていたが、これは彼に連絡を取り、同様の仕組みを4nchor5 la6のメンバーが構築したものだった。


−仕掛けはこれだけにとどまらない。曲の中盤、”あ〜ちゃん”がステージに登場し、右手に抱えた銃からレーザーが発射されると、ステージ上のマネキンが持つ風船が破裂!観客席からは、まるで実際にレーザーで風船を割っているかのように見える。


真鍋:あれは、環境によって精度が変わるというチャレンジングな仕掛けでした。実際は、ブースにあるホストマシンからDMXケーブル経由でデータを送信し、ニクロム線を過熱する装置をコントロールして風船が割れる仕組み。楽曲を再生している音響マシンのシーケンスに風船を割る600msec(0.6秒)前にMIDIノートを打ち込み、それをホストマシンに送信して破裂のタイミングを合わせています。600msecというのはニクロム線を加熱してから割れるまでを複数回試した結果の平均時間で、タイミングが合うかどうか本番中は祈るのみ。本番ではビックリするぐらいドンピシャで、思わずブース裏でハイタッチしてしまいました。(笑)

ドームDVDでは風船の割れる原理が分からなかったが、あれはニクロム線を加熱して風船を割っていたのか。そこだけ聞くと一見原始的な手法のようにも思えるが、その肝はやはり「レーザーで風船を割った」様に見えるように、レーザーの照射と割れるタイミングをジャストに合わせること。その為に、本番では割れた瞬間に爆発音のSEも重ねてある。ニクロム線の加熱から割れるまでには事前での実験では0.6秒。しかし東京ドームという環境における室温や湿度の影響、そして風船固体の差など、考えたら空恐ろしいほどに不確定な数字でもある。風船の割れるタイミングと爆発音が僅かでもずれてしまうと、なんとも微妙な印象を与えてしまう。「10人のかしゆか」のほんの僅かのズレですら、人間はそれを認識してしまうのだから。この無謀ともいえる挑戦は、幸い大成功に終わった。


ニクロム線を加熱し始めるトリガーは、楽曲に連動させたMIDIノート。これは恐らくバンマスこと飯塚啓介マニピュレーターの音出しPCから送信され、ホストマシン経由で加熱装置を叩いているのだろう。
真鍋氏の実験映像の中に、同じようにニクロム線加熱による風船割りをテストしている動画がある。この動画で用いられているトリガーは、彼の代表作「筋電センサー」。手を握る際に筋肉が発する微弱電気信号を筋電センサーで拾い、それをトリガーにしてレーザー照射とニクロム線加熱を行っている。




関和亮ディレクターの監修の下、真鍋とザッカリーがプログラミングを手掛けた特殊映像にも注目したい。ステージ上で踊る彼女達の姿と同期した本人映像は、事前に工業用3Dカメラで彼女達のダンスを撮影し、高度なプログラミング技術でジェネレートしたもの。全身の姿を360度回転させながら、3人の動きの軌跡を線画として描画したり、シルエットを作っていた粒子がばらばらに弾けるなどのエフェクトを加えて、印象的な視覚効果を与えている。

Zachary LiebermanのVimeoアカウントで公開され、そしてAmuse側からの公開差し止め依頼により一日でクローズされた、「Perfumeの掟」映像制作時の動画がある。それを見ると、この3Dカメラが捉えたものがどういうものかがよく分かる。360度から撮影されたPerfumeのダンス。それらの動きは3Dデータとしてキャプチャされ、PC上で自由にその3次元軸を操作することができる。前から、後ろから、上から、もちろん真下からも。真下からもだ。そしてそのデータに対して、openFrameworksのパッチによって、線画だったり粒子だったりと様々にPerfumeの姿にエフェクトがかけられた。この3Dデータ、欲しいよな・・・


最近MIKIKO先生も真鍋氏にKinectで3Dデータを作成してもらったらしく、「ワンルーム・ディスコ」決めポーズの3Dデータを元にした3Dプリンタの削り出しフィギュアに、何かまた面白いことを考えているようだ。


daitomanabe
@daitomanabe
出来たー。ディスコディスコ。 kinectでスキャンしてるから精度が甘いのは勘弁してください。 @mikiko_san http://twitpic.com/4s5wx6 link
mizu mikiko
@mikiko_san
3Dプリンタ凄い!スキャンした写真が立体になって出てきた!(◎_◎;)RT @daitomanabe 出来たー。ディスコディスコ。 kinectでスキャンしてるから精度が甘いのは勘弁してください。 @mikiko_san http://twitpic.com/4s5wx6 link
関和亮
@KazuakiSeki
@daitomanabe まだまだだな。 link
daitomanabe
@daitomanabe
@KazuakiSeki す、す、すみません!! kinectだとあの精度が限界であります m(_ _)m 近々精密スキャンしに行くので一緒に行きましょう m(_ _)m link
daitomanabe
@daitomanabe
@mikiko_san @KazuakiSeki @TakakoUchi 来週あたり精密スキャンで。。。研究室に小さいのがあるからまずはそれを試してみます。 link
関和亮
@KazuakiSeki
@daitomanabe 行きましょう! link
mizu mikiko
@mikiko_san
@KazuakiSeki @daitomanabe MIKIKOさんを連れて行きましょう! link
関和亮
@KazuakiSeki
は、はひ。“@mikiko_san: @KazuakiSeki @daitomanabe MIKIKOさんを連れて行きましょう!” link



真鍋:当初、筋電センサーや画像解析を使ったインタラクティブ演出があるのかとネット上で話題になっていました。僕と石橋さんのこれまでの活動からすると、動きに反応して映像や照明がコントロールされるようなリアルタイムな演出にフォーカスするところですが、MIKIO先生や関監督などとも相談した結果、練習によって完成された彼女達の動きを生かすためにも、事前にスタジオでデータをキャプチャすることにしました。よって、本番では事前にレンダリングした映像を再生しています。

「当初ネット上で話題になっていました」とあるとおり、事前の予想では、やはりリアルタイム演出、それもPerfumeはダンスを主な武器とするユニットであり、筋電センサーや画像解析で、彼女達のダンスの動作を拾ってそれをトリガーに何かするのだろう、そう想像した。
しかし、関・MIKIKO陣営との相談の結果、あれだけ広くて、しかも照明も派手にあるような場所で、そんな繊細なコントロールは無理だろうという結論に達したようで、事前にスタジオでダンスをキャプチャしたものを使って作った作品を、本番ではスクリーン上に再生するにとどまったようだ。*1


これは言われてみれば確かにとても難しいことだ、しかし「true/本当のこと」公演という一つの事前の成果がある以上、もっと先には、Perfumeのダンスをトリガーとしてあらゆる演出をコントロールする、そんな夢の妄想は捨てきれない。事前に作りこまれた完璧さもPerfumeのクオリティを支える大切な要素でもあるし、また、Perfumeというフォーマットを使ってこれまでの常識に囚われない新しいことに挑戦してきた、それもまたPerfumeの魅力でもある。



−このコンサート最大の特徴を尋ねると、「かつて無いリスクへの挑戦」と語る真鍋。


真鍋:通常、大きなコンサートの舞台ではリスクを避ける為、基本的なシステム動作は再生専用のハードウェアで行うことが多いと思います。一方、僕らはメインの楽曲を再生するマシンからホストコンピュータへメッセージを送信して、自作のソフトウェアで広大な会場全てのデバイスへ制御信号を送り、全て音楽と同期させました。東京ドームのような規模の会場では、ここまでテクニカルな実験はめったにできないことだと思いますね。

東京ドーム公演でのリスク回避といえばテクノ好きなら93年のYMO「再生」ドーム公演のエピソードを思い出す事だろう。あのライブでは、リアルタイムでGoh Hotoda(保土田剛)氏がマルチ卓から音をミックスして出していたが、卓や制御系が故障するリスクに備えて、テープ音源を同期させていたという。(もしテープも駄目になったら、最後は教授がシンセで適当にアンビエントでもやって場を繋ぐ、という話もあった)


Perfumeのライブでのリスク回避としては、まだ飯塚啓介氏がマニピュレーターに付くような大きなライブを経験する前の頃、ライブでのトラック音源は、媒体にCDやCD-Rを使用せず、その信頼性・安定性の高さから、MDが使用されていたことを思い出す。


今回のドーム公演で、音源の送出がどういう形で行われていたかは分からないが、昨年の直角二等辺三角形ツアーでは、飯塚啓介氏がMacbook Proから直接音出ししていたと思われる。信頼性を考えれば、ソフトウェア処理など問題外で、専用のハードウェア機器を使うのが当たり前、こんな不安定な事をしているなんて俄かには信じられないのだが、ドーム公演でも、楽曲再生マシンからMIDI信号をホストマシン経由でLED風船照明などのデバイスに飛ばしていたというのだから、全くもって背筋が凍るような話だ。リスクを取らなければ、面白いこと、新しいことに挑戦することもできないということなのだ。



−およそ10分の間に様々な演出が盛り込まれたこのステージ。アイデアから実装に至るまでのプロセスを尋ねた。


真鍋:全てはMIKIKO先生の提案からスタート。「僕達にできないことは無いので無理難題をガンガン出してください」とだけ伝え、技術的な問題を気にせず自由に考えてもらえるよう心がけました。結果、飛行船を飛ばしてレーザーを当てる、会場中を上下する風船で埋め尽くすなど、10案以上出たアイデアから全てプロトタイプを作っていきました。アイデアの時点で実際に動きや見栄えをチェックできるものを作ってしまえるのは4nchor5 la6の強みですね。実際の方法を探りながら、最終的にはコストやスケジュール、会場設備との兼ね合いでできる形が決まってきました。没になったプランも、今後チャンスがあればぜひやりたいところです。

東京ドーム公演が終わったあとも、関監督、MIKIKO先生、真鍋氏の交流はかなり親密なレベルで続いていることが、それぞれのTwitterなどでのやり取りでも窺える。
Zachary LiebermanのFlickrには、こんな写真も掲載されている。
http://www.flickr.com/photos/zachlieberman/5675723341/in/set-72157626497426955/
http://www.flickr.com/photos/zachlieberman/5676284846/in/set-72157626497426955/


「没になったプランも、今後チャンスがあればぜひやりたい」、その言葉を信じて待っています。




映像作家100人  2011  JAPANESE MOTION GRAPHIC CREATORS 2011

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